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テンポラリー通信

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2011年 11月 03日

作品の磁場力ー秋冷秋水(16)

秋晴れが続く。
昨日午後ひょっこりと森本さんが、手押し旅行鞄を押しながら現れる。
最終便で東京へ行くという。
半年勤務して初の有給休暇とって、横浜ビエンナーレへ。
ここでの制作も完成させ、さらに見聞を広めに旅立つ。
そんな爽やかな顔だった。
卒業ー就職ー制作個展ー旅と何かが動いてこの半年が経過している。
住いも岩見沢の寮から実家の恵庭へ、そして札幌都心の勤務地へ通勤
と再びの故里にいる。
小さな範囲の移動のようだが、この時期の変化は大きなものがある。
生きてゆく拠り所の模索なのだ。
そうした時にエ・エン・イワとして故里・恵庭を見詰めた意味は大きい。
自ら再生した故里をこの場に置いて、旅立つ。
短い休暇だが大きな旅と思う。
今回制作された南窓に吊るされた死火山のような荒涼とした作品。
その作品を二度見に来て、来年予定した北欧への旅を止めると
言った人がいる。
この風景を見に行きたかった。でもこれを見たらもう行くのは止める。
そして自分の個展をする。そう、言った。
本当の旅とは、時間の長さでも距離の長さでもない。
凝縮したものは、深く遠い場合もある。
そういう内的凝縮した時間こそが、固い精神の幹の年輪となる。
旅とは、時として一番近い自らの内なる風景を確かめに行く事なのだ。
もし本当に北欧に行く事を断念し、自らの個展の実現が本当になるなら、
それは今回の森本さんの作品が開いた、内なる濃いひとつの極が放電
した作品磁場と思える。
その意味では、これら今回の作品たちの存在が作家を旅立たせ、他者に
は旅を断念させる、強い磁場を生んでいるのだ。
エ・エン・イワ、恐るべし。

一本の樹が梢を広げ天地四方の世界に触れるように、人間の感性の梢も
またグローバリズムとは無縁の、垂直軸から発する精神の解放があると
思える。
それは外側の開放ではなく、内から解き放つ、解放である。
作品とはそうした解放の放たれた種子のように、綿毛のように、
世界へと触れ飛び続けていく。

*森本めぐみ展「ものもつ子のこと」-11月8日(火)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

# by kakiten | 2011-11-03 13:03 | Comments(0)
2011年 11月 02日

iwaという<山>ー秋冷秋水(15)

晴天が続き、紅葉した葉も反ってきた。
枯葉が道を埋め、音を立てている。
森の梢も葉が落ちて、路の上の空も明るくなった。
時折り風が通り過ぎて、枯葉が視界を斜めに横切っていく。
競馬場の長い壁も、枯れた蔦の赤茶色の緞帳。
二匹の蜻蛉が繋がって飛んでいた日、雪虫を初めて見た日。
今は乾いた落葉の音が道を埋めている。
やがて道は白くなり、自転車も駐輪場の片隅に眠る時が来る。

エルムゾーンの資料を整え東京・吉増剛造氏に送る。
さらに明年2月の阿部守×高臣大介展の為某所使用申請書を整える。
ともに札幌・石狩の地に根ざす回路を保つ仕事・志事。
私は私の志の流儀で、この場に触れ続けてゆく。
流儀とは生き方であり、世界と関わる回路であり、歩き深める道である。
その深まる行程に内から解き放つ心の種子がある。
そう信じて、一点深く樹のように生きる。
飛んだ心の種子が奥多摩の森に触れ、福岡の鉄に触れる。
トランス・ペアレント、そうだ、大介さんのガラスのように
光を溜めて透明になる。

iwaーイわ 岩山:山。-この語は今はただ山の意に用いるが、もとは祖先の
    祭場のある神聖な山を指したらしい。語源はkamuiーiwakーi(神・住む
    ・所)の省略形か。         (知里真志保「地名アイヌ語小辞典」)

山も生物であったと知里真志保は解く。
nupuriの(山)とkimの(里山)、そして神聖なiwaの(山)。
生きる事にもいろんな山があるけれど、今はiwaのような何かが凝縮する
濃い山の時期かも知れない。

鎮魂・エルムの森。
石狩河口/坐ル ふたたび・・。

この年末年始に向かう。

森本さん、恵庭(e・en・iwa)も、神の山(iwa)ですね。

*森本めぐみ展「ものもつ子のこと」-11月8日(火)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011ー737-5503
    

# by kakiten | 2011-11-02 13:14 | Comments(0)
2011年 11月 01日

エ・エン・イワの卑弥呼ー秋冷秋水(14)

eーenーiwa(エ・エン・イワ:頭が・尖っている・山)というアイヌ語に
由来する恵庭市。
そこに生まれ住む森本めぐみさんの、密かな故里放浪の触手のよ
うな絵画群と思える。
小さな楕円の作品も含めて、15点。
今、卒業後の再びの故里を、意識の父母の布団からもう一度目覚めて。
幻想の地形を放浪する夢の指先、足先。

恵庭岳と風不死岳。その麓に広がる恵庭市。
hupーush-nupuri(フプシ・ヌプリ:トドマツ・群生する・山)とエ・エン・イワ
(頭が・尖っている山)の間に広がる大きな窪み。
そこにかってあったという支笏火山。
その幻の火山とその後に出来た窪み・湖。
そうした幻の火と水のエ・エン・イワ(恵庭)の記憶を、今はなんの変哲も無い
一地方衛星都市である恵庭市のフイジカルな固有の身体性として、自らの
故里を確かめ触れていくかのように、足指、目指が世界をなぞってゆく。
火の記憶、水の記憶、大噴火後の死の窪み。
小さな楕円の作品も、大きな死火山のような作品も、火の湖に溜まる青い水
のような鮮烈な赤の作品にも、すべてが始原への帰巣を見詰めようとする
指先のタッチから生まれている。
何故恵庭であるのか、何故恵庭に自分は生きているのか。
その他処との相違は、自らのアイデンテイーたり得るのか。
一度出た故郷を再度故里として見詰める。
そんな真摯な感性の指先が、必死にもがいて故里を再構築しようと
再生の陣痛を至る所で、作品の大小に関わらず血を流している。
この身体的とも思えるフイジカルな肉感性は、女性ならではの真摯な表現
の出産と私には思える。
身体性の奥の疼きから、土地の保つフイジカルな疼きを重ねて、真に女性的
なエ・エン・イワの卑弥呼の子たちのように、今回の作品は完成したと思う。
物流のグローバリズム都市帝国主義に対峙する、固有の地域・固有の個。
その小さな足場の故里から、作家は自らのエ・エン・イワ(恵庭)の突端にいる。

*森本めぐみ展「ものもつ子たちのこと」-11月8日(火)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

# by kakiten | 2011-11-01 12:29 | Comments(0)
2011年 10月 29日

森本めぐみ展完成ー秋冷秋水(13)

朝から森本さん最後の仕上げにかかる。
M邸画廊を終えた伽井丹弥さん一行もみえ、有山睦さん、河田雅文さん、
斎藤周さんも見える。
あと飯塚優子さんが久し振りに見え、山田航さん、今村しずかさんも見える。
あといろんな人が来て、最後に製作中のビニールの薄い仕切りが取り払われ
展示に入る。
明日から定休日を挟み、一週間完成展示をする予定。
前回から見ている人たちの評判も上々で、一点購入も決まる。
良く頑張ったね、森本さん!

*森本めぐみ展「ものもと子のこと」-10月30日(日)-11月8日(火)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16除西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

# by kakiten | 2011-10-29 18:50 | Comments(0)
2011年 10月 28日

光り澄むー秋冷秋水(12)

紅葉も深く紅を増し、空気も光りも澄む。
秋が最後の輝きを見せている。
今朝は久し振りに朝から燦々と陽射しが射している。
木霊水魂・黙霊垂魂。
樹と水の心になって朝の光を受けている。

森本さん、今日明日と最後の仕上げにかかる。
小さな作品もいくつか出来かけていて、これらを含めて十点近くが
完成するだろう。
昨晩も仕事を終えて午後10時近くに制作に来たそうだ。
恵庭の終電に間に合わせて、日々時間を割り出しながら制作を
続けて来た。
今週で滞在制作は終え、来週には完成した作品を一週間ほど
展示をしたい。
その後12月の吉増剛造展のプレとして「1994年石狩河口/坐ルー
<石狩シーツ誕生>」を展示。
そして12月からの<「石狩河口/坐ル」 ふたたび・・>を展開したい
と思っている。
この間来廊する吉増剛造を囲み、午後7時の対話を一日。
さらのその日対話予定者と共に、緑の運河エルムゾーンを経て石狩河口
へと逍遥して頂く予定である。
対話者は若い詩人の文月悠光さんと歌人山田航さんのふたりにお願い
してある。
木霊水魂の石狩の海への回路を経て、1994年界川の道からエルムの道
へと<ふたたび・・>の道程を深めたく思うのだ。
故若林奮氏の遺された4m78の長尺銅版4巻をあたかも川の流れのように
会場全体に伏流させ、いかに会場を構成していくか。
そしてその中でいかに3人の優れた詩人歌人が輝くか。
年齢差を超えて、真に同時代人としてコンテンポラリーな時空を表出し得るか。
今から会場創りに、心が躍るのである。

*森本めぐみ滞在制作展「ものもつ子のこと」-10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時・月曜定休。
*森本めぐみ展「ものもつ子のこと」ー11月1日(火)-6日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

# by kakiten | 2011-10-28 13:02 | Comments(0)