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テンポラリー通信

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2020年 04月 30日

八木保次・伸子展始めるー荒地(22)

春の恒例として展示し続けている故八木保次・伸子展を今年も始めた。
2012年2月、3月と相次いで80歳代で亡くなられた。
あらためて亡くなられてふたりの遺されて作品を見ると、生前
保次さんの抽象、伸子さんの具象と単純に分けて見ていた愚かさを
感じる事が多々あった。
そこで毎年春の時期に、ふたりが死ぬまで追求し描こうとした
札幌の光と彩を製作年代に拘らず、ご遺族の高橋均氏、友人の
小杉山、平川君の協力を得て、テンポラリースペース所蔵の
2点を軸に毎年展示する事を開始した。
生前はその時々の個展、グループ展でしか見れなかった作品
たちが、持ち主の好みによって傾向が自ずから分けられ一堂に
会すると、革めてふたりが追求してきた世界が新鮮に輝いて
見えて来るのだった。
今年はご遺族の高橋均氏のご協力で、保次がまだ具象画を心掛
けていた1946年から50年頃の終盤と思われる作品「建物」
を展示した。
そしてこの後抽象に転化した最初の作品も同時に並べた、
伸子の作品は、私の希望で昨年初めて見た「大通風景」という
80歳代に描かれた彼女の札幌原風景と思える作品を、保次の
旧北海道拓殖銀行本店の移設された一部と思える「札幌軟石
建物」の作品と並べて展示した。
ふたりの制作年齢は、保次が20代、伸子が80代である。
ふたりの具象画が札幌都市風景を画題に並ぶ事で、ある時代の
札幌浪漫・近代モダニズム都市風景が甦るのだ。
明治ー大正に啓かれ、開花しかけた日本の近代モダニズム。
その原風景ともいえる建物と公園が、浪漫に満ちて20代の男性
と80代の女性のロマンとして溢れている。

我々が、現代が、遠く彼方に追いやった美しい近代が、ここに
は輝いている。
ふたりが生きてきた戦前・戦後という昭和の時代でしか実現しない、
喪われつつある正当な近代遺産として、時代の記憶に遺され続け
ねばならない。

*八木保次・伸子展「札幌浪漫風景」-4月28日~5月10日
 月曜定休・5月6日(水)・5月1日・8日(金)午後2時閉廊。

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2020-04-30 16:27 | Comments(0)
2020年 04月 23日

生命・経済の相克ー荒地(21)

最も微小な地球生物ウイルスの繁殖が人間社会を問うている。
人間社会の経済的生命と自然生命そのものを。
大都市では不要不急の外出が禁止され、ニューヨーク
では経済活動に支障が出て、禁止反対のデモが展開され
ているという。
命を守るか、経済活動という人間社会の生命を守るか。
微生物新型コロナは、今やそこまで人間に究極の問いを
発している。
人類という地球上の生物は、同じ地球上の生物たるウイルス
に生物生命を問われ、人間社会優位の経済生命との選択を
突きつけられている。
もしこの地上から昆虫すらが消えたなら、植物の連鎖が断た
れ人類は食物の不足によって生きていけないという。
そのように地球の生命体は相互に関わりながら生命を維持
している。
自然の恵み、という言葉はその実感から発している。
里山・里海とは、そうした人間社会と大自然の生恵みの源の事だ。
現代社会のグローバリズム、物流グローバル化は、自然生命
という相互関係を希薄化し、物流の相互関係性に肥大化させ、
自然生命としての人間を矮小化し、自然すら利便性のインフラ
装置に貶めてきた観がある。

大地震・大津波・地球温暖化・ミクロの微生物の来襲と、人間は
自然生命で在る事を等閑にしてきた現代を、その社会生命・経済
優先の選択を今、究極の<生命>という一点で問われているよう
に思える。

*追悼・八木保次・伸子展「喪われたサッポロ浪漫」-4月28日
 -5月10日
*鼓代弥生展ー5月中旬予定

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2020-04-23 17:07 | Comments(0)
2020年 04月 14日

タッチ・触れるー荒地(20)

新型コロナウイルスの曼延は、人が物や人に触れる危険の
喚起を促す機会を増やし続けている。
しかし正確には、タッチの危険性の喚起だ。
私たちの生活インフラの多くは、タッチが作動の開始
となる。
スマホ、リモコン、各種カード、エレヴェーターのボタン、
エスカレーターの手摺りと、街を移動する間どれほど多くの人
が多くのタッチを重ねているか・・・。
今その利便性が逆に新型コロナ消毒の大きな警告対象だ。
本来の日本語<触れる>とは、正反対のものとなって<タッ
チ>がある。
人が介在しない、指示し作動させる行為としてのタッチだ。
本来<触れる>事とは、人と人を繋ぎ、人と物を繋ぐ、世界
が開かれる行為の筈だ。
その回路を遮断し、利便性の開始行為に貶めてきた現在が
痛切に新型コロナウイルスによって問われている。
一昔前まで、街の雑貨屋、酒・米屋、煙草屋、靴屋、駄菓子屋
金物屋、家具屋等が町のインフラを支え、人と人が向き合い手
渡しで会話が交じらわされた時代があった。
その関係性に消毒性アルコールなどはなかった。
人間同士の会話があり、オーバーに言えば友情すら存した。
今はそれらがすべてタッチ・パネルが代行する。
購入・支払が一元化され、物流の効率回路が優先され会話
も友情も消えている。
その回路に新型コロナが曼延し押し寄せてくる。
利便性と効率性重視が招いた<触れるータツチ>の変質した
現在なのだ

何時か大手コンビニ店に変わったお店のオバちゃん。
何時の間にか客との会話は消え、手と顔は何時もレジに向いて
打ち込み・入金・カード確認に集中している。
客は順番待ちで会話はない。
オーナーとか呼ばれ、毎日の売り下げ維持ノルマに追われて
いるのだろう・・・。
あの人懐っこい笑顔は何処に行ったのかなあ・・・。

*追悼ー八木保次・伸子展ー4月下旬~5月初旬
*鼓代弥生展ー5月中旬以降予定。

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503




by kakiten | 2020-04-14 14:31 | Comments(0)
2020年 04月 09日

自然が詰め寄るー荒地(19)

連日新型コロナウイルスから始まるあらゆる分野のニュースに
曝されている。
微小な自然界のウイルスが、大地震・大津波のように
人間社会に押し寄せている。
異常気象・台風は序奏のように、現代社会のグローバルという
物流回路を通じて内側からミクロの自然生物が繁殖しているのだ。
南アジアでは、イナゴの大群が作物を食い荒らしているらしい。
内から外から地球自然野生が詰め寄ってきたのか・・。
自然との共生空間を摩滅してきた近・現代のひとつの回答という
気がしてならない。
 
 今私たちが生きている時代は、近代化を経た後のグローバリズムの中で
 自然を支配する社会です。実際そのことにより、様々な社会問題も起こ
 ります。例えば原発は資本主義において利潤を第一に考えています。
 コロナウイルスは社会主義の不都合な真実により、広がってしまいました。
 そこで、本来東アジアにある「自然と共生する」という思想を、次の時代
 に再び受け継いでいくことは非常に大事だと思います。

マカオの写真家S君から、こんな書き出しの文章が送られてきた。
<東アジア共通の自然観、宗教観、精神性を高め、先人の作品形態に
とどまらない時代を拓く新しい表現>を、と呼びかけた宣言文だった。
先週終えた秋元さなえさんの故里の風土を編んだ造形作品。
短歌・山田航さんの百数十回続く街角探訪の短歌作品とエッセイ。
高臣大介さんの氷柱とガラスの交叉・千本の「野傍の泉池」の挑戦。
斎藤周さんの父の記憶・木造二階建ての生家の絵画。
その他にも色んな作家たちが、それぞれの分野で自らの足元の<里>
を創り続けているのを私は感じている。
こうした個々の表現営為が、私には上記宣言文とどこかで呼応し
木魂(こだま)していた。
小さな源流の一滴が流れ、合流し、大河となって大海へ、世界へ
と脈打つ夢のように。
私はその土となり、土壌となる小さな場を続けていく。

*追悼・八木保次・伸子展ー4月下旬~5月初旬。
*鼓代弥生展ー5月中旬予定

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2020-04-09 18:12 | Comments(0)
2020年 04月 04日

10年の織りー荒地(18)

秋元さなえ展最終日。
今村しずかさんの唄声が響く。
最初はマイクを使用し、1階で。
後半はマイク無しで2階吹き抜けの椅子に座り・・。
階下では打楽器を有山睦さんが奏でる。
階上で今村さんが唄うのは初めてだ。
何かが彼女の内部で解けている・・・。

秋元さんと今村さんの出会いは10年前の2010年3月。
この時教育大の美術3人展で初めてこの会場で秋元さん
は鳥をイメージした作品を宙に浮かばせていた。
今個展では麦穂の織物が斜めに吹き抜けを流れている。
10年前今村さんは、秋元さんの鳥の下、階下で唄ったが、
今回は今村さんが上で唄い、秋元さんが階下で聞いている。

唄声は麦穂の織り秋元さんの麦畑を流れ、声を編んで
流れていく。
この時間、ふたりの10年も編まれていた。

難病で車椅子に呼吸器を装着し、定山渓の療養所に入院し
時に山の自然に触れ、「私もその自然の中の一部なのだ」と
実感し、遺著のタイトルにした今村さんのお姉さん。
その遺著を2011年3月11日の東日本大震災に触れた今村
しずかさんは、初の自作CD「この世界に」にこのタイトル
を詞として挿入し作品化している。
吹き抜けの宙を飛ぶ鳥を作品化した10年前の美術人。
3・11大震災・津波・原発事故に自然の脅威を見た音楽人。
ひとりは鳥から大地の麦畑の視座を風景として造形し、ひとり
は亡き姉を通して生の恵みの自然を詩曲にし唄った。
このふたりが今は天と地に近い空間に位置を変えて再会し、空間
を織っていた。

偶然だろうが、ふたりのこの10年の織り成す風が吹き、心の麦畑
もひろがるような、稀有の最終日だったと思う。

ありがとう・・・。

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
 *荒地(17)は当方の技術未熟で跳んで消えてしまいました。
  お詫びします・・・。




by kakiten | 2020-04-04 19:05 | Comments(0)