テンポラリー通信

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2019年 01月 15日

佐々木恒雄展始まるー時代というランド(9)

五年ぶりのテンポラリースペース個展。
父上の稼業を継ぐと決意して、故郷網走へ。
その時の初々しい朝の番屋風景、朝日浴びる出漁の絵は今も鮮明に思い出す。
今回は働く仲間や船上の風景ではなく、仕事を取り巻く海を見詰めている
絵が印象的である。
波の無心な動きと光の交叉が丹念に描かれているからだ。
同時に札幌時代のラップ仲間、22歳で夭折した友人村岸宏昭の自転車姿等の
佐々木の青春時代、都会で交流した都市感覚の絵も同時に出品されている。
海を職場とする漁師の自然環境、青春時代を送った都会の時代環境。
このふたつの大きな人間を取り巻く状況が、ここには素直に表現されていて、
普段我々都会人が忘れがちな自然という、社会環境を超えた目線が同時に
共存して絵画化されている。
都市化が進めば進む程日常から離れていく自然。
佐々木恒雄には、職業としてそれは日常に分かち難く存在している。
海の波を丹念に描いた青や赤の作品には、彼の日常の呼気吸気が息づいている。

私はこれらの絵を見ながら、ふっと沖縄に生きる豊平ヨシオの画業を思い出す。
沖縄の社会的環境も自然環境もより凝縮されて、あの青と亀裂の絵画があった。
基地と観光という社会的与件と自然。
サンゴ礁に囲まれさらに遠く広がる青と藍色の海。
そして日本全体の7割を占める米軍基地。
社会環境の基地と美しく時として荒々しい海という自然が間近に併存している
南の島。
北の海と南の海を取り巻く社会と自然。
そのふたつの海を、何時の間にか問う自分がいたのだ。
そして日常生活を社会的インフラに囲い込まれ、異常気象の天災時にしか自然
を意識化しないで日常を過ごしている多くの我々。
オホーツクの荒々しい海に生きる佐々木恒雄と沖縄の厳しい社会環境に生きる
豊平ヨシオの保つふたりの海に、私たちが日々喪いつつある自然と時代・社会
に囲繞された人間の海の在り場所を問い、ふたりの画業を見続けていきたいと思う。

*佐々木恒雄展「sign」-1月20日まで。
 AM11時ーPM7時
*‘高臣大介ガラス展ー2月12日ー24日
*豊平ヨシオ展ー3月17日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503 


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by kakiten | 2019-01-15 15:47 | Comments(0)
2019年 01月 09日

尾道から網走へー時代というランド(8)

偶然とはいえ、仕事の性格上、正月に休暇の続く網走の漁師
佐々木恒雄の絵画展が、船大工野上裕之さんに続き来週から始まる。
生活者として直接海に関連する仕事に従事するふたりが、逞しく
彫刻と絵画の制作を続けている事にある敬意を覚えている。

佐々木恒雄展は2014年1月以来だが、その後2016年9月
山田航第二歌集「水に沈む羊」から各ジャンルの表現者が一首選び
自分の作品で再表現した夜のオホーツクの海の一点が今も記憶に
残っている。
この作品は、私が長年主治医としている佐々木と同じ網走出身の
S歯科医の治療台の真ん前に、佐々木が選んだ山田航の一首と共に
今も飾られている。
治療台で仰向けになり目を瞑り、S医師の繊細な手捌きが続き、
注がれる水とともに治療を終える。
台が起き、目を開け前を見ると、そこに佐々木の描くオホーツク
月夜の海と一艘の舟が絵が目に飛び込んで来る。
S先生と佐々木恒雄の故郷、月夜のオホーツクブルー。
口腔の治療の海と生活の漁をする海が、この絵を介してふたりの
故郷を繋いでいる。
一度、佐々木恒雄もこの歯科治療台に腰を掛けた事がある。
その時の照れるような弾けるような笑顔を私は忘れない。
S医師もまた佐々木が網走で漁師を始めて初めての2014年の
個展で懐かしい網走の海の絵画に感動してくれたのだ。

生活の場こそ違え、ふたりが見詰めるオホーツクブルーの色は
今年も鮮やかにふたりの心を満たすだろう。
その出会いも楽しみだ。

*佐々木恒雄展「SIgN」-1月15日ー20日
*高臣大介ガラス展ー2月12日ー24日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

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by kakiten | 2019-01-09 13:38 | Comments(0)
2019年 01月 08日

野上裕之彫刻展「雲間」終わるー時代というランド(7)

ここ十年余の野上作品の雲間を縫うように孕んでくる新作。
新たな人生の転換を予感させる。
札幌から尾道へ移住・船大工の生業。
彼は生きる事においても、フイジカルな彫刻家だ。
不惑の年齢を前に、彫刻の道はより深化し、より俯瞰する。
その視座は孕みつつ風のように年末・年始を駆け抜けて行った。
戸籍上の成人ではなく、彫刻の道を選んだ自らの人生20年が、
そこには見て取れる。
2,3年中に北海道への帰還も考えている、と呟くように
語っていた野上裕之。
自然と風土そして人間について見詰める彼の顔が彫刻にも見え
てきた気がする。
第二の成人を自ら祝い報告した、宣言のような爽やかな40歳
直前の個展だった気がする。

生きる事もまた、生きるという人生の彫刻なのだ。
好漢野上裕之、彫刻とともに真っ直ぐ歩め!

*佐々木恒雄展「sign」-1月15日(火)-20日(日)
 am11時―pⅯ7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503




























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by kakiten | 2019-01-08 15:25 | Comments(0)