人気ブログランキング |

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ

<   2016年 10月 ( 21 )   > この月の画像一覧


2016年 10月 16日

やんちゃ&姫ー土曜の夜の夢(7)

昼前会場で子供の声がした。
大久保さん母子だった。
2,3歳の男の子とブルーのロングドレスの緑ちゃん
が一緒だ。
5年程前尾道の野上裕之展の時、梁から吊した鳥の彫刻
の下ですやすやと眠っていた女の子が、もうすっかり
お洒落してレデイである。
梯子も奥の階段も活発に上下し、弟のアキラ君を従えている。
身体思考が主導する子供たちは、本当にこの吹き抜けー梯子
の空間が好きである。
ロングドレスも何んのその梯子を登り、2階回廊を駆け回る。
やんちゃな男の子も直ぐに刺激され、負けずによじ登る。
その内下の正面に飾られたワイングラスとキャンドルの下で
闘っているサムライの絵に興味を持ち指差している。
さすが男の子だ。
段々エンジン全開で色んな物に興味を示し触り出す。
2階長椅子の下に置いてあった木の断片を下に投げたり、
吊ってあるガラス作品にも手を出したりする。
一方ロングドレスの姫は、梯子の途中でポーズを取っている。
それがちょうど左横に展示してある青いブーケと狐の嫁入り
の絵画にぴったりだった。
早速大久保さんがスマホで撮影してFBに投稿した。
描かれた青いブーケは、橘内さんの嫁さんなつさんが造った
ものを絵にしたと聞く。
この展覧会の基調低音、ふたりのお披露目の主題でもある
絵なのだ。
そこに偶然小さな姫が同じ色のロングドレスで現れ、ツー
ショットとなった。
弟君は途中から手を挟めたり、やんちゃが激しくなったので、
抱き上げて気を逸らす。
するとお尻にある感触が・・・。
あっ、オムツだ。
それから”オムツゴロー”と呼ぶ。
チガウ、チガウ・・と抗議しつつ顔は笑顔全開だ。

弟君はここは2度目位だが、もう梯子探検と階段走りで、
記憶は体で憶えている。
子供時代の身体エネルギーは五体五感全身で吸収され
発散されるが、大人になると電気機械エネルギーに代換え
が進み、小手先の指先操作に身体エネルギーが縮小していく。
それを文明という名の進歩と名付け依存するようになる。
先日の送電器具ひとつの不具合で東京都心部が停電状態と
なり大騒ぎとなっていたが、電気力抜きに都市生活すべてが
成立しなくなるエネルギー依存は、相当に危機的な現実である。
将棋のプロまでが、電子頭脳利用の疑いで試合出場停止の
世の中だ。
電気機械の小手先操作に走り、脳まで電気エネルギーに吸収
される時代が来るのだろうか。

子供時代同じようにここを走り回っていたYちゃんが、高校
1年生となる今年は、石狩で裸馬に乗る合宿をしたという。
五体五感、きっと全開だろうなあ。
彼女は小学校卒業アルバムに将来の夢を「小さな美術館」と
題し書いていた。
小さな美術館で再び会えるのを待っているよ。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel・fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-16 13:49 | Comments(0)
2016年 10月 15日

京都の朝食・夕食ー土曜の夜の夢(6)

橘内光則の絵画に描かれている食卓の日常で印象的なのは、
朝のトースト、夜のワイン、そして午後のショートケーキ。
そしてこれらの傍らには、必ず浮世絵から忍び出たような
和服の人物が寄り添っている構成だ。
京都は朝パン食が多いと聞いている。
日本の古都では洋食文化も深く根付いているようだ。
そんな京都の生活の影響もあるのだろうか、和と洋の不思議
なコラボが、画面にクスリと笑えるように共存している。
最も完成度の高い作品は、キャンドルに寄り添うように、
蓮の花の燭台の和蝋燭を高く掲げる和服の奇人である。
ぼろぼろの着物がまるで蝋燭の溶けた蝋のようであるが、炎
という灯りの共通性・共有性をキャンドルの炎と誇らしげ
に唱和しているのだ。
74歳の舞踏家大野一雄が欧州で公演した時は、きっと
こんな光景が生まれていた気がする。
命の灯を掲げるように、大野さんは踊ったに違いない。
そしてその灯の輝きが、風俗・伝統を超え人の心を撃ったのだ。

もうひとつ非売品としている横長の大きな作品2点がある。
それは、キャンドルとワイングラスの下で闘うふたりのサムライ
の絵である。
一枚は離れて闘い、もう一枚は接近し闘う構図だ。
そして接近して闘う画面では、ひとつのワイングラスが倒立し
倒れている。
和と洋の唱和だけではなく、サムライの闘いの中で洋の日常は
時に打ち倒されても行く事を暗示している。
そのようにこれらの画面を俯瞰して見れば、トースト・目玉焼き
・ソーセージ等の朝食文化は戦後米国近代化を暗示し、ワイン・
ワイングラス・キャンドルの夕餉は欧州近代化をイメージさせる。
二つの近代化の下に必ず顕れる浮世絵風人物は、それ以前の日本
そのものと思われる。
尊皇攘夷・千年の都、京都で感受した橘内光則の日常のリアリテ
イがそこに反映している。

13年前、札幌を出ます、東京に行くつもりです、と話した彼に
何故東京なのか、と聞くと別に東京に目標はなく、道外という
意味と解った。
そこで京都にいる友人の事を思いだし、京都を勧めた。
それが今結果的には良かったと思える。
何故なら、東京とは改名した街江戸であり、皇居とは江戸城の
改名であり、日本の近代化の国家的衣装チェンジ・コスプレの
中心だからだ。
それは開国と同時に鹿鳴館衣装のように文明開化の起点とも
なっていく。
新奇を好む好奇心や憧れから日常に寄り添ってゆく近代では
なく、ハードな国家的強力な体制化という近代化とは、本質的に
一線を画するものがある。
京都でワインと、東京でトーストでは、近代の染まり方、取り入
れ方が違うのである。
個から国家単位に位相が移動する。
都は帝都となり、近代化とは東京化・大都市化帝都主義として
地方を吸収してゆく今に繋がっている。
そんな東京で橘内光則の絵画に浮世絵の人物が、嬉しそうに活き
活きと躍る事はきっと無かったかも知れない。

新幹線だ、オリンピックだ、国際芸術祭だと様々な領域で空洞
を露呈しつつ大都市主体の構造化が進んでいる。
もう東京は東京だけの問題ではなく、構造的な大都市中軸の
都市帝都主義となって顕れているかに思える。
物理学の基礎研究の空洞化、築地市場移転地の空洞問題、高層
マンションの杭打ち偽装の空洞化、高級食材の産地偽装の空洞化
そんなあらゆる分野の空洞には、決して浮世絵の人物達は喜々
として躍りながら顕れる事はないだろう。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-15 14:44 | Comments(0)
2016年 10月 14日

寒中暖ありー土曜の夜の夢(5)

青空が広がっても風は冷たい。
まだ夏の下着のままでいたが、ゾクゾクっと寒気がした。
くしゃみが出て、咳き込む。
灯油を入れなきゃとストーブを見ていた。
ふっと橘内さん搬入時来てくれたY君を思い出す。
写真家の彼の目線と橘内さんの人物への目線のどこか
共通する暖かさを感じていたからだ。
そうだ、展示後の橘内展に誘ってみよう、と電話する。
その前にメールで橘内展示前の開梱に素敵な笑顔の橘内
さんが撮られたスマホの写真が送られてきていたのだ。
Y君も風邪気味らしく、翌日の地方出張を前に自宅で
ゆっくり静養したいらしく、こちらに出るのは億劫らしい。
自分も風邪気味と話し、灯油の事も話すと、じゃあ行くか、
と車で来てくれる事になった。
展示された橘内作品に大いに共感し、写真との相違も語る
Y君は本当に橘内作品が気に入ったようだった。

そして石油スタンドへ。
ポリタンに石油を入れ支払いをして走り出した車中で急に
吐き気がして3回ほど嘔吐する。
一部ドアーを開け車外に出したがほとんど上着からズボン
に吐く。
昼間食べたジャーマンポテト・パンが胃に凭れたのだろうか、
風邪の所為か、石油の臭いと車の移動の所為か・・。
車中を汚し、スタンドの床面も汚したが、Y君がスタンドの
路面を清掃してくれた。
私はまた動くと吐きそうだったので、車内と上着をテイシュ
とハンケチで拭うのが精一杯だった。
戻って感謝とお詫びをY君に伝えると、いやあ~どうせ汚い
車ですから、気にしないで・・と言う。
身体の内外の寒気中、友情の暖を感じた。
寒中暖あり。
これも橘内光則作品の暖かさの波及かも知れない・・。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2016-10-14 12:39 | Comments(0)
2016年 10月 12日

奇想の系譜ー土曜の夜の夢(4)

舞踏家の大野一雄が曽我簫白に深い興味を抱いて
いたという。
「奇想の系譜」を著した辻惟雄が大野一雄追悼で
記している。
ダンスではなく舞踏という概念を世界に広めた
大野先生らしいなあと感じていた。
橘内光則の今回の展示作品には、この曽我簫白の
描く浮世絵の人物が多々挿入されている。
背景は朝の風景を象徴するトーストと牛乳、目玉
焼きの朝食セット、あるいはワインとワイングラス
の欧州風ディナーセットだが、そこに何故か和服の
サムライや布袋さんのような人物が飄々と顕れる。
見ていて、クスリ、ニャッと笑いがこみ上げる。
背景の洋風化とのギャップが違和感でなく笑いとな
って見つめれるのは不思議といえば不思議だ。
トースト風景は戦後定着したアメリカ式朝食
ワインとワイングラスは欧州風デイナー。
つまりは鎖国を解いた明治の近代化と戦後の米国
型近代化様式と見る事も出来る。
そこにふたつの近代化を超えたそれ以前の日本人
が剽軽に顕れる。
それがどこかで納得して違和感ではなくクスリと
させる要因なのだろう。

大野一雄に戻れば、70歳を過ぎて欧州でデビュー
をし、西洋のダンスの年齢常識を打破した点で、大野
一雄もまた奇想の人であり、西洋ダンスの背景とは異質
の舞踏を見せた人である。
そしてかつ大野一雄は深い感動を見る者に与えたのだ。
その結果舞踏は国際語として認知された。
橘内光則の絵画にも、日本の風俗としての近代が、書き
割りのように背景に存在し、近代以前の簫白の人物が
存在感を保って顕れる。
それはわずか百年に満たない西洋風俗が、日常風景の
一部となって主導している現在を、鼻先でクスリと笑い
飛ばすリアリテイを保っているからと思う。
痩せた東洋の老人が若い女性に扮し、かつ感動を呼ぶ。
その奇想の舞踏に西洋人は何故感動したのか。
そこには風俗・慣習を超え人間として受け止めた感動
が、身体の踊りを通して感じられたからに違いない。

その意味では橘内光則の描く曽我簫白、北斎漫画の人物
は、大野一雄の奇想のダンス、舞踏のように、日常の
表層・書き割りの日常風景を突き抜けたリアリテイ
を獲得しているのかも知れない。
この小さな笑いがこの先どこまで深化するか、
彼の描く日常風景の徹底したリアリズム描写とともに、
見守りたい今後の精進である。

*橘内光則「土曜の夜の夢」ー10月30日(日)まで。
 am11時^pm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-12 15:26 | Comments(0)
2016年 10月 11日

一夜明けー土曜の夜の夢(3)

橘内光則展初日、懐かしい人の消息が集まる。
途絶えていた人の消息を知る。
書道家の島田無響さんの逝去を知る。
木工の屋中秋谷氏が伝えてくれた。
別の人から 自閉的だったAさんが結婚した事も
聴き、吃驚しながら嬉しかった。
橘内さんとは世代も違うのだが、世代を超えて色ん
な人が集ったオープニングだった。
そしてベルリンの谷口顕一郎さんから電話が来た。
橘内さんと谷口さんは大学時代の親友でもあり、奥
さんのなつさんは、大阪での谷口個展時キューレ
ーターであった女性である。
キッツ&ナッツの縁結びは、谷口顕一郎でもあるのだ。
色んな縁が渦巻いて、嬉しいニュースや寂しいニュー
スが届いた。
関西で仕事に追われる毎日、橘内光則が諦めず続けて
きた絵画の13年の成果が初日のこうした渦にも実っ
ていると感じられた。
個展タイトル「土曜の夜の夢」は、週末休みの時に時間
を見つけ描き続けた彼自身の夢を顕すものという。
職人気質の内向きな彼を励まし、推進力となったナッツ
さんの強さもあって今回前へと踏み出したと思う。
谷口さんたちの<ケン&アヤ>、橘内さんたちの<キッツ
&ナッツ>。
この草の根のようなペアーの在り方は、大上段に振り翳した
男女均等よりも、より本質的な人間としての在り方と思う。
今回個展の為に作られた作品図録を頂き、そこにふたりの
サインをお願いして私はそう感じていた。

<キッツ&ナッツ>
ふたりと新たな作品創造の出立つ。
その見事な披露だなあ。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-11 13:48 | Comments(0)
2016年 10月 09日

橘内光則展初日ー土曜の夜の夢(2)

見事な展示である。
やはり展示もまた大切な作品行為だなあ、と思う。
アトリエと展示空間とは、作品に場を介した転位
がある。
<×1>という転位だ。
作品が佇む佇まい、あるいはコンセプト、が場での
作品構成を導いてゆく。
その場の媒介・実体過程が作品をひとつの構成として
アトリエには無い響きを生む。
個展の場合1×1=1だが、3っの<1>は違う実体
を保つ<1>なのだ。
作品という内なる個の<1>は、場という<1>を経る
事で、新たな光を纏う<1>となる。
それが複数の場合でも基本構造は変わらない。
10×1=10でも場というコンセプト・媒介性を無視
すれば、<×>を経る<=>の新たな10は生まれない。
ただ人数を増やせば良いという物ではないのだ。
数量を基本基準とする産業経済政治とは違う文化芸術の
基軸・本質である。

多分作家は作品を制作する時と同じ位精神エネルギーを
使い、展示作業に集中したと私は思う。
その成果が朝の光の中で美しく明瞭に浮かんでいる。
壁上部鴨居の位置に10点ぐるりと並んでいる動画のような
女性の動きの瞬間を連続して描いた作品群は、会場全体の
柔らかな微笑みのような空気感を見事に象徴し、2階吹き
抜け回廊部の作品とも、1階の曽我簫白の人物が躍る日常
風景の微笑みとも唱和して会場全体が微笑のような統一感
に充たされている。
今回この場は、微笑みの空間となった。
近代も現代も簫白の時代も一緒に微笑んで、躍るぜ。
それが今を生きる、今だ、我々の真の日常だ!

そんな作者の声が聞こえてくるような、初日の風景である。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-09 13:09 | Comments(0)
2016年 10月 08日

日常の皺ー土曜日の夜の夢(1)

京都から橘内光則さんが来た。
13年前札幌を出てから初の札幌展。
生で見るしばらくぶりの作品群に感慨が深くなる。
2階回廊部分には主に旧作、1階部分は新作が並ぶ。
目を惹くのは新作に顕れる曽我簫白の人物だ。
自在に画面にこの剽軽な浮世絵風の人物が躍っている。
テーブルのキャンドルの灯りの下、ワイングラスの横
写実的なきっちりと描かれた日常風景の中に、近代以前
を思わせる人物が跳んでいる。
トーストに目玉焼き、ワインにキャンドル・・。
これら私たちの欧米化を象徴する日常風景の中で
浮世絵の人が遊んでいる。
ワインもトースト風景も現代の浮き世=日常。
何故か何の違和感もなく、クスリと笑って見ている。
鹿鳴館風俗などと国家上げて近代化のコスプレなど誇示
するよりも、なんと健全で逞しい精神ではないのか。

札幌を出た橘内さんの確かな近代以前の日本へ向かう踵の
視座を感じていた。
特に展示途中の開梱ー作品出現ー展示の過程がこの13
年間の彼の心の梱包ー開梱に立ち会うようで、興味深く
かった。
写真とも動画とも見紛う絵画に歴史の縦軸が、日常という
横軸主体の世界にある深化を見せている。
気取らず、振り翳さず、日常のリズムで時間が跳び、
曽我簫白の浮世絵時代が同じ日常の笑いで降臨している。

最終の展示が楽しみだ。
明日初日。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-08 15:55 | Comments(0)
2016年 10月 07日

口中の海ー撓む指(37)

固い飴を噛んで、右上の奥歯が欠けた。
虫歯で被せていた歯なのでいつも行く歯医者さんに行く。
先生は網走の網元が生家で、アメリカでも資格を取った
腕の良い歯医者さんである。
円山に奥さん共々歯科医を開業している。

被せた歯は内部が虫歯となっていたようで、新たに差し歯
を作るといって歯形を取る。
その間水を口中に流し、歯を削る作業が続く。
私は口を開け目を閉じたまま口内を流れる水と歯を削る
ドリル音の中に居る。
そして何故か昨日収納した佐々木恒雄の絵を思い浮かべていた。
先生は船頭だなあ、と口中の水を感じながら思っていた。
満月と黒く浮かぶ一艘の小舟と人影、そして船尾の船外エンジン。
その前方に煌めく無数の波頭。
口中の水とドリルの音が、目を瞑っている所為かあの絵の
中にいるような感覚となっていた。
波頭は歯頭だ。
治療が終わり治療台から身を起こす。
そうだ、この目の前の壁に佐々木さんの絵が在ると良い。
先生も治療しながら目を送る事が出来る。
小さいけれど口中の海と故郷の海をそれぞれが感じる。
帰って佐々木さんの了解を貰い次第、この絵を歯医者さんに
見せたいと思っていた。

先生は腕の良い船乗りのようでしたよ、波頭は歯頭でした。
海を感じていました、と帰りに話す。
先生は、何の事かと笑っていた。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-07 15:21 | Comments(0)
2016年 10月 04日

間(あいだ)の時ー撓む指(36)

展示作品取り下げる日、会場全体の写真を撮る事になった。
その為撮影者を待ち、ひとり会場にいる。
それぞれの作品がそれぞれの居場所に戻ってゆく束の間。
九つの木漏れ日が瞼を閉じてゆくようだ。
山田航の「水に沈む羊」を開き読んでみる。
心に残った一首。

 投げ置きしヘッドフォンより漏れいづる音の小ささ、ではなく遠さ

それは作品が生まれた個々の日常・内懐へ還って行く小ささ・遠さにも思えた。
耳を澄まして、また会える時もあるさ。

撤収前の独り言・・・。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-04 15:30 | Comments(0)
2016年 10月 03日

「水に沈む羊」展終了ー撓む指(36)

「それぞれの山田航<水に沈む羊>展」終了。
最終日山田航、野崎翼、酒井博史、成清祐太集まる。
昨日より禁酒・禁煙を解禁した成清君がはしゃいでいる。
みんなで乾杯。
道立文学館「宮沢賢治」展で来札中の吉増剛造さんの
来廊も期待されたが、アメリカより帰国後すぐ札幌と時間
とれなく無理のようだった。
今日は定休日で、昼から歯の治療そして透析治療まで少し
時間があり、テンポラリーへ寄る。
着いて直ぐ電話が鳴っている。
取ると吉増さんからで、今空港。
寄れずにご免、と話す。
でも電話が通じたのも、偶然という縁である。
11月もう一度札幌へ来るという。

吉増さんにも見て頂きたかったが、今回の展示は中身濃く、
9人の作家の深い日常が、山田航一首の歌によって作品と
して立ちあがる記憶に残る展覧会だったと思う。
どの作品にも、山田作品への阿りや摺り合わせはなく、
きりっとした個々の飾らない真実が立ちあがっていた。
真のリアルとは、個人的な理由(わけ)の日常に塗(まみ)れ、
埋もれているものなのだ。
決して最初から大上段に構えて在るものではない。
主婦・出産・浪人・職場・移住・反抗期・・・。
その日常の奥から立ちあがるリアルなコア。
それら原石がそれぞれの作家の技量によって珠(タマ)として
輝いていた。
ひとつとして、混ぜ物はない。
その個々の保つリアルが、その真実が、9人×1人の交響を
奏でる事を可能にしていた。
日常的にはバラバラながら、作品の保つ響きは同時代の
<con>を流露していたのである。

愛しい作品たちよ、
テンポラリーの裾野からコンテンポラリーの現在を
みんなそれぞれに頂上石を積んでいたね・・・。

ありがとう、感謝です・・・。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 あm11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-03 14:58 | Comments(0)