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2014年 07月 14日

三笠・川俣展へ行くー水系・文月(6)

今進行中の川俣正の三笠プロジェクトを見に行く。
ちょうどフランスから作家も帰国しているからと誘われた。
2年ほど前一時帰国した際ここを訪ねてくれ、「札幌緑の
運河エルムゾーンを守る会」の趣旨に深く共感してくれた
のだ。
彼とは1983年の円山北町テトラハウスプロジェクト
以来の付き合いで、今はパリに在住し世界的な美術家とも
なっている人だが、2年前から生まれ故郷の三笠でこつこつ
と今大規模な作品を制作しているのだ。
炭鉱が廃れ廃校となった学校の体育館にかって栄えた
故郷の風景を再現するインスタレーシヨンを創り続けて
いる。
会場に着くとすぐ川俣正がいた。
彼の案内で製作中の作品の中を歩く。
4年前の東京・目黒美術館で見た俯瞰する炭鉱街のインス
タレーシヨンがさらなる深化を見せている。
炭鉱を中心にした故郷の風景、その野山、谷、炭住が
段ボールやベニヤ板で再現され、正面奥のズリ山へと
道が続いている。
そのズリ山の内部には夜の炭鉱の風景か壁に浮かび、俯瞰
と同時に街の内側へも入っていくような複眼の構成になっ
ている。
全ては立体でありながら、その立体を構成する線の優しさ
美しさは川俣さんの故郷への想いから生まれた生理のよう
な触れる心の描線だ。
かってあった濃密な地域社会の回路を内側と外側の両方か
ら風景として再現し今は無い凝縮した故里を再現しようと
している。
このプロジェクトを支えているのは彼の小、中学校の同
級生たちであり、すべては手弁当のボランテイアが主力で
あるという。
2012年からこれらの人々の手で喪われた故郷の山野、
街が再現されていく。
川俣正が描く故郷への心の描線が立体となり、その立体の
中を見る者は歩く事で、あの街の心の風景を追体験するか
のように優しく柔らかな気持ちとなるのだ。

この廃校となった校舎もいずれ取り壊す予定という。
しかしこの建物はこの作品とともにモニュメントとして
遺されるべきものと感じる。
朽ちるなら建物とともに作品も朽ちるが良い。
地元の人の気持ちも含めてその思いとともに永らえれば
良いのだ。
東京や札幌のような都市化の一極集中が進む時代に、真の
故郷とは何かを問う稀有な美術作品としてこの作品は歴史に
位置づけられるべきである。

*谷口顕一郎展ー7月19日(土)-27日(日)am11時ー
 pm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2014-07-14 12:50 | Comments(0)
2014年 07月 10日

台風近づくー水系・文月(5)

山と海に近いふたつの護岸という回路に思いを寄せていたら、
土石流と高波の台風の映像が飛び込んでくる。
何十年に一度という大型の台風が襲来したのだ。
遠い南の海に発生した台風は、梅雨前線を押し上げ今晩
あたりから北海道にも雨風を及ぼすという、
地球という星に生きる生物を透明な綿のように包んでいる
水と空気という有機体。
その柔らかで透明な存在が凝縮して野生の牙を剥く。
荒ぶる自然の前に人はひたすら耐え忍んで通過を待つので
ある。
折しも「都市と自然」をテーマに札幌国際芸術祭が始まる。
時期も重なって、その主題の真価も問われているのだ。

今年は住宅街への熊の出没も多発し、自然という野生が
本性を顕している。
都市化という自然破壊が進行すると同時に、自然という野生
がどこかで人間社会へ逆襲する反動が何倍返しかで用意され
ているかに思える。
空を飛ぶ金斗雲や力を増幅する如意棒を得た孫悟空のように
人間という進化した猿の驕りは、所詮お釈迦様という自然の
掌の中である事を今感じなければいけない時なのかもしれな
い。

山の斜面に添って伸びる石段という護岸と、川の蛇行に沿っ
て延びる岡崎式単礁ブロックという護岸の自然への敬意ある
回路。
そこに、すぐ前の時代まで在した先人の自然への畏怖と敬愛
の形象を今も真摯に存在するものとして見るのである。
都市に特化した500m地下通路や箱空間には、この畏怖と
敬愛の祈りの回路が無いのだ。


*谷口顕一郎展ー7月19日(土)-27日(日)am11時
 -pm7時:月曜定休。
*斉藤周展「日々の形状」-8月1日(金)ー10日(日)
*小谷俊太郎展ー8月26日ー9月7日
*秋元さなえ展ー10月28日ー11月8日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fac011-737-5503、
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by kakiten | 2014-07-10 13:35 | Comments(0)
2014年 07月 08日

呼応する時ー水系・文月(4)

優れたキャリアウーマンであるYさんの希望で先日
1999年放映の岡崎文吉の一生をドキュメントした
札幌TV40周年記念番組の録画を見せた。
当時のコマーシヤルもそのまま録画されている。
それらが古過ぎもせず、妙に懐かしい映像なのだ。
Yさんが声を上げて喜んだので、早送りせずそのまま
上映して番組を見る。
石狩川河口、中国、そしてアメリカと岡崎文吉の足跡
を辿り番組が進んでとうとうアメリカのニューオルリンズ
へカメラが入った時、レポーターの背後の撮影スタッフ
がちらっと映っていた。
その人を見てYさんがあっと声を出して言う。
S君だ、同期のS君だ!
番組最後のテロップでも確認したが、この番組を制作した
ディレクターがYさんの大学の同期生だったのである。
番組の感動と思いもかけない同期生との遭遇にすっかり
興奮したYさんは思わず手をたたいて喜んでいた。
その時人の気配がして谷口顕一郎・彩子さんが来る。
伏見稲荷の石段の凹みのトレースを終えて、顔を出したのだ。
早速採りたての凹みを広げて壁に張り点検する。
4m程の強烈な傷痕である。
これを素材にして作品が創られるわけだが、それにしても
その登場のタイミングが岡崎文吉の映像と響きあうように
現れたのが不思議だった。
山の斜面を護岸するかのように、その自然の傾斜に沿って
組み上げられた石段。
川の蛇行に沿って敷き詰められる岡崎文吉の護岸工法。
この河口と源流域のふたつの近似する現場が一瞬重なって
この時呼応したかに思えたのだ。
先に石狩河口に遺された岡崎文吉のコンクリートマットレス
をトレースし、今回さらに谷口さんが伏見稲荷の石段をトレ
ースし、それを採取し見せに来た時Yさんへの上映会があっ
たからだ。
偶然といえばそれまでである。
しかしそれは偶然というより海と山を繋ぐふたつの回路のよう
に必然的な界(さかい)という世界を示唆して遭遇した時間の
ように思えるのである。

今日Yさんからのメールが届いていた。

 心震える至福の時間をありがとうございました。

*谷口顕一郎展ー7月19日(土)-27日(日)am11時ー
 pm7時;月曜定休。
*斉藤周展「日々の形状」-8月1日(金)ー10日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2014-07-08 12:44 | Comments(0)
2014年 07月 04日

凝縮し生まれる処ー水系・文月(3)

岡崎文吉の遺したコンクリートマットレスの護岸跡と
伏見稲荷の見捨てられた石段は、透明な水と空気の凝縮
する濃い空間に架けられた異界への回路のようにあると
感じている。
透明な空気は山という異界で凝縮し生まれている。
水という透明な有機体もその山に発し、川を通って河口
へ海へと凝縮して集まる。
このふたつの透明な有機体が凝縮し濃く存在する異界の
入り口に沿って回路のようにコンクリートマットレスの
護岸と祠への石段がある。
透明な見えない存在の向こうに人間の力の及ばない大い
なる異界の存在を古来人は感じていたのだ。
岡崎文吉の自然工法による川の護岸工事もまたその伝統に
則った水への参道のような境界への架橋行為であった気が
するのである。
空気の生まれる処。
水の凝縮する処。
そのふたつの異界を結んで、人間の住む都市がある。
異界への畏怖と敬意は人に文化という参道を与えてきたのだ。
その時代時代で固有の参道形式を生み出し、空気が恐ろしい
風となり、水が荒れ狂う洪水となる事を恐れ、宥める術を試
みてきたのである。
その異界への畏怖・敬意が喪われつつあるのが、現代である。
空気や水のような見えないものへの回路を如何に同時代として
再生できるか。
それが今きっと問われている。

*谷口顕一郎展^7月19日(土)-27日(日)am11時ーpm7時
 月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2014-07-04 13:41 | Comments(0)
2014年 07月 03日

繋ぐものー水系・文月(2)

しばらく振りにパソコンに向かいブログを打つ。
毎日記してハミガキブログと言われたのが、最近
は櫛の歯の抜けたようなクシノハブログである。
ふらふらと自転車に乗って画廊に着き、パソコン
に打ち込んでいると電話が鳴る。
東京の川戸君からで今札幌に来ていると言う。
冬の吉増剛造展以来で、これから来るという。
川戸卿史君は不思議な風の子のような人で、ふっと
どこにでも現れる人だ。
ロンドンの吉増展にも出かけ、便りを送ってくれた。
今回も不意の訪問で、このところ自宅療養で伏せていて
何日かぶりの出勤にピタリと現れたのだ。
そして帰京前の慌ただしい時間に旧交を暖めて今月末の
谷口展にまた来ると言って別れた。

川戸君の訪問で中断したブログをなんとか打ち込み、ひょろ
ひょろと帰宅する。
すると玄関のドアノブにビニールの袋がぶら下がっている。
中には野菜が数種類入っていた。
K氏からの差し入れで、留寿都の採りたて野菜だ。
先週明治の治水学者岡崎文吉の映像を見せたお礼だろうか、
男の仕事のあり方の孤独に痛く共感していた表情を思い出す。
孤高の岡崎文吉の生き方と自らの半生をどこか重ねて別れた
家族の事を思い出し話していたからである。
家族と別れ自らのしたい仕事に打ち込もうとする心の柔らかな
部分に岡崎文吉の生き方が重なりK氏は何かを伝えたかったに
違いない。
それがこの留寿都の野菜と手作りのイチゴジャムに篭められて
いるようだった。
K氏とは古い知人ではあるが、こんなにも心開いて物を頂いた
記憶は一度も無い。
岡崎文吉が繋いでくれた縁である。

川の蛇行だけが蛇行ではない。
人間もまた蛇行する存在である。
参道という回路を創り、山という土の斜面に沿って陸の蛇行を
整える。
岡崎文吉が石狩河口で試みたコンクリートマットレスの自然工法
は、川の岸辺の石段のような仕事である。
自然の斜面に沿って敷き詰められた石段の参道は、畏怖する自然
への界(さかい)という回路であるのだろう。
その境界の世界を直線的に切り捨て、分断し、ショートカットする
近現代の効率本位の価値観の範疇に時として身近な家族もまた拉致
されてこちらを冷たく見詰めるのである。
K氏が届けてくれた新鮮な野菜には、そんな想いの愛憎がいっぱい
詰まっているような気がした。

*谷口顕一郎展ー7月19日(土)-27日(日)am11時ーpm7時
 月曜定休。

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by kakiten | 2014-07-03 13:31 | Comments(0)
2014年 07月 02日

忘れられた石段ー水系・文月(1)

体調悪く伏せていたが、7月末まで滞在予定の谷口顕一郎
・彩子夫妻を案内して伏見稲荷の忘れられた石段に行く。

本来の山裾から幅10m程のU字形に湾曲した堂々たる
石段が中腹の朱の鳥居へと繋げている。
その鳥居と石段の間をかって冬季札幌オリンピック開催時
に大倉山ジャンプ場と真駒内アイススケート会場を結ぶ環
状線が造られ、石段と鳥居は分断され、この石段は今や忘れ
られたように濃い森の翳に沈んでいるのである。
谷口さんが石狩河口に残る岡崎文吉の自然工法の治水跡に
作品素材を見出し、界川ー琴似川水系の暗渠路面に今回受賞
の作品があった事から、今回の源流域に近い山の斜面に遺され
た石段の凹みに作品が繋がればひとつの流れが生まれると感じ
ていたのだ。
案内して現場に着きすぐ気に入った亀裂を発見してふたりの声
があがる。

新緑の濃い緑の被さる石段の左には深い森が幽かな水音を
立てている。
茂った山の斜面から微かな湧き水が流れ出している。
山の斜面に沿って護岸するかのように、石段を組み鳥居を
建て祠を造った。
これも山という自然の地形に逆らわず自然の脅威を宥める
自然工法ともいえる先人の知恵であるだろう。
明治の先達岡崎文吉の川の蛇行を基本とする自然工法の護岸
遺跡と見捨てられた源流域の石段とを結んで、琴似川水系が
ひとつの流れとして再生出来れば良いとこの時確信したのだ。

札幌生まれの顕と彩さんの新たな札幌マップがきっと生まれ
る事だろう。
先ずは今月の個展が楽しみである。

*谷口顕一郎展ー7月19日(土)ー27日(日)am11時ー
 pm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2014-07-02 15:29 | Comments(0)