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テンポラリー通信

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2012年 10月 05日

真っ赤な林檎ー蒼月・10月(4)

尾道から野上さんの作品が届いた。
掌に入る真っ赤な林檎の彫刻が一点。
ちょっと意外で吃驚する。
赤か、赤い林檎か・・・。
梱包された段ボールの下にお手紙があった。

 ・・・我家は親子三人忙しくも健やかに暮らしています。
 嫁と息子が寝付いてから、ほんの少しの時間を積み重ねて
 ようやく一つの形と成りました。
 今回の展示に合わせたワケでは全く無いのですが、何か
 呼ぶモノが有ったのでしょうね。
 数多くの友人たちが、僕の作品を持ち寄り展示をつくって
 くれたと知り、一言では言い表せない気持で一杯です。
 ・・・この目で見たいと・・願うのですが、行けないこの身の
 変わりにこの「星」を届けます。
 作品の名は「赤色矮星」

そうか、星だったのか・・。
真っ赤な林檎の小さな星。
モノクロームな鉛の作品、古民家の家の棧で創られた椅子
の彫刻、木の両掌といった作品の並ぶ中に真っ赤な星・林
檎が置かれると、空間に一瞬にして色彩が灯った。
みんなが持ち寄った野上さんの作品たちの思いが、この真っ
赤な星・林檎に凝縮して存在しているかのようである。
作家と作品、そしてその作品を通して交感される人と人の心
のエール、そんな交感の場が個展会場という場を創り深い
空間を形成したと今、感じている。

生活というものが、決して本来の”生き生き、活き活き”という
原義にはなく、むしろそうした生の条件をじわじわと締め付け
る辛い生活インフラの闘いに存する日常に有り、その渦中で
本来の生きるという”生き生き、活き活き”を奪取する行為とし
て一見無為な表現の営みが、正に<ほんの少しの時間を積
み重ねて>結晶するかのように、真っ赤な林檎となって届い
たような気がする。
この小さな赤い林檎の彫刻は、それを受け止める人との魂の
キャッチボールとして今会場空間に深く呼吸している。

幸せそうだぜ、野上さん、
君の真っ赤な星・林檎。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」-10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

 

by kakiten | 2012-10-05 12:56 | Comments(0)
2012年 10月 04日

500mたまり風ー蒼月・10月(3)

地下通路の500m美術館に出店依頼がある。
会期は来年2月から4月中旬までで、締め切りは今月8日
というから随分強引な話。
普段は美術家の展示が主体の筈だが、今回は「Hokkaido 
Art Map」とかいう事で、2014年7月の坂本龍一をゲスト
デイレクターとする札幌国際芸術祭開催の為の一環という。
道内のギヤラリーやアートプロジェクトを「アートと出会える
場所」として500mに集約し紹介するという事らしい。
出店お礼は無料で広報宣伝の一環と捉えて下さい、とある。
<札幌>国際芸術祭の為というのであれば、なにも<北海道>
アートマップと範囲を広げたタイトルを使う必要はあるまい。
札幌アートマップで充分ではないのか。
札幌の画廊といっても種々様々で色んな場所に点在して
それぞれが個性的である。
それは各ギヤラリーの個性もあるが、同時に在る場所の多様
性もある。
都心のビルの中や地下にある均質性とは違い、郊外には多く
の地域性がある。
それ自体をマップ化すれば、札幌の地形と風景が都心の均一
な空気も際立ってより有機的な札幌が見えてくる筈である。
そうした札幌という場の固有な魅力をベースに出店ブースを
出先として纏めて紹介すると言うのなら少しは意義もあるが、
大風呂敷で「札幌」国際芸術祭の為に「北海道」アートマップと
名付ける感覚にある種の事大権威主義的な視座を感じるのだ。
この感覚には、固有の石狩国・十勝国・網走国といった北海道
の多様な文化状況・地形・風土といった視座が欠落している。
地域の相違も見えない視座に、札幌のそれぞれの地域の豊か
さ、違いが見える筈もない。
画廊犬養の在る場の保つ川向こうの旧豊平村中洲ゾーンと、
画廊門馬のある旧円山村養狐場の在った山沢ゾーンとは同じ
札幌でも空間が違うのである。
同様の事は細かく見ていけば、他の郊外の画廊すべてにもいえ
る事だ。
都心の高層ビルに収納されている均質化した都市空間とは違う
要素が、マップにした場合に大きく顕れるのだ。
そうした基礎となる札幌への視座すら形成できず、あたかも政治
経済の産業構造的道都発想で、北海道アートマップと上から目
線で物を見るのは、如何かと思う。
文化とは足元の土壌を耕す事が基本である。
札幌自体をよりよく知りその魅力を発見すら出来ないで、どうして
他国の人にその魅力を語れるのか。
テナント誘致じゃあるまいし、人口の多さとか都市のインフラ整備
状況とかを売り物にするだけでは、美術や文化の固有性とは無縁
の広報でしかないのだ。
「Hokkaido Art Map」という題目で、ぞろぞろ物産展のように
通路の壁に店名を宣伝・広報掲示板のように全道の画廊店が
並ぶなら、元々地下通路の宣伝看板用の棚壁という本来の姿を
顕しただけの事のような気がする。
それならそれで無料などと言わず堂々とお金を取って展示を募集
すればいい。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」-10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-10-04 12:57 | Comments(0)
2012年 10月 03日

透んだ風ー蒼月・10月(2)

大阪の個展を終えた藤谷康晴さんが来る。
関西での反応や個展会場の模様を聞く。
中でもとりわけ一番の感激した事は、東京からわざわざ
駆けつけ8mmフイルムで5時間撮影してくれた鈴木余位
さんの来訪だったようだ。
この話をした時の藤谷さんの眼の輝きで、それを感じた。
この後鈴木さんは自分でフイルムの現像・編集をして
映像を完成させると聞く。
少し時間は懸かるけれど、このフイルム作品が完成す
れば、これももうひとつの藤谷展作品となる。
そんな展覧会の出会いもそう有るものではない。
そこへ釧路の実家から帰って来た瀬戸策謙君が来る。
釧路ジスイズのマスターが倒れたという情報が来て、先日
瀬戸君にも知らせたばかりである。
瀬戸君はこのジャズ喫茶に高校時代から出入りしていて、
そこでテンポラリースペース・村岸宏昭さんの遺作集を読み
ここへ来るようになったのである。
ジスイズのマスターと私は舞踏家大野一雄の縁がある。
今は一日も早い体調の回復を祈る者だ。
そんな話を奥でしていると、入口に人の気配がした。
ふと見ると美術評論家の加藤玖仁子さんがいた。
ここに姿を現わすのは随分久し振りの事である。
奥へ招き藤谷さん、瀬戸君を紹介する。
加藤さん手土産の細やかな食料をみんなで食べて、
小1時間以上加藤さんのお話を聞く。
中でもポーランドの美術家アバカノヴィッチとの出会いの
話は感動的だった。
話している内に話している当人が、思わずアバカノヴィッチ
と出会ったときの言葉を思い出して涙ぐんでいた程である。
初めて加藤さんと会った藤谷さん、瀬戸君も感激の面持ち
で話に聴き入っていた。
クリスト、ダニーキャラバンと世界的な巨匠と個人的にも親密
な加藤さんの話は、少女のように純粋で年齢を超越した情熱
に溢れていた。
こういう人が札幌の在住していて、最近の美術状況に深い懸
念を抱き、熱い気持でストレートに語る時間もそうそうあるもの
ではない。
ずっと私の仕事も見続けてくれ、特に今の場所に移転してから
はなにくれとなく励まして頂いている。
この日もふっと立ち寄ってくれたのだが、ちょうど居た若いふた
りとは初対面にもかかわらず、啓蒙に満ちた多くの話をして感
動を与えてくれた。
詳細については記さないけれど、私もまた多くの勇気を頂いだ
事は記しておく。
ここまでわざわざ訪ねて来てくれた気持となによりもご本人の
体調の回復と気力の充実の窺われた事は、今後の旺盛な執筆
活動を期待させるに充分な気がした。
札幌国際美術展等の情報が駆け巡る昨今。
こういう人がきりっと意見を表すようになれば、札幌の文化状況
ももう少し引き締っていく契機ともなると思うのである。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」ー10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-10-03 12:53 | Comments(0)
2012年 10月 02日

台風一過ー蒼月・10月(1)

黒い雲と急などしゃ降りの一日が過ぎて
休廊明けの今日、青空が広がる。
光が綺麗だなあ。
<今すぐ飛んで行きたい>、尾道の野上さんのコメントを今朝見る。
新作は今日発送という。
なんとこの日は彼の誕生日ではないか。
新たな誕生として作品を受け取りたい、と思う。
朝登くんという第一子誕生とともに、野上くん自身も今年作品という
分身を創った事になる。
彼のフイジカル、メタフイジカルな分身である。

一昨日M夫人、山内慶氏が来る。
山内氏もM夫人も二度目の来訪である。
作品はまだ?と急かす。
みんな楽しみにしているのだ。
山内氏がル・コルビュジェのフランス語の詩を額装して持参した。
裏に日本語の訳文が添付してある。
フランス語の入った額には大きな鳥の羽根が斜めに入って、
これも「鳥を放つ」ですよ、と山内氏が言う。
展示して欲しいという事だったが、展示は断わり資料のコーナーに
立て掛けて置く事にする。
詩を読み山内氏の気持が伝わったからである。

 水はしたたり
 太陽は照らす
 複雑さが織り出され
 流暢さが至る所に生まれる
 手に道具
 手の愛ぶ
 手の織り上げたもので
 人生は楽しい
 視覚もまた手の触覚に頼る
 私は、手いっぱいもらった
 私は、手いっぱいあげよう

      ル・コルビュジェ

山内氏も手の人である。
彼は野上さんの仕事に手を感じて、このコルビュジェの言葉を
額装し羽根をアレンジして持参したのだ。
その気持がこの訳文と額に収められた仏文と羽根の額装に感
じられたのである。
これも野上展へのエールである。
だから、このコルビュジュの額装は、野上裕之資料ファイルの
横にそっと置かれた。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」ー10月7日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-10-02 11:38 | Comments(0)