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テンポラリー通信

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2012年 02月 15日

初日の事故ー如月(12)

大勢の人が溢れ、初日の夜は賑やかだった。
歌が流れ合唱が続く。
後からもどんどん人が来て、酒が周る。
最後に遅れて来た3人組が誰のか知らぬがバースデイーケーキを
持参し、照明を消して蝋燭を灯す。
期せずしてハッピーバースデーの合唱が起こる。
そんな時に事故が起こる。
撮影をしようとカメラを構えた誰かが、後ずさりして背後のガラスと鉄の
作品をひっくり返した。
今回の象徴的な作品ふたりの合作作品のガラスが壊されてしまった。
奥にいた私はこの事故を知らなかった。
知っていたのは近くにいた少数の人である。
知ったのは二次会の居酒屋ゆかりに後で行き、後から来た酒井さんの
報告を聞いてからである。
それからすぐみんなで阿部さんも含めて会場に取って返し、現状を確認
した。
翌日朝早く福岡へ帰る阿部さんは、作品を処理し別の作品を台に置いた。
高臣さんは泥酔してすでに宿屋に帰っていたので、翌日さらなる処置を
お願いする事にする。
最後の最後に網走流氷・洞爺の制作と多くの収獲を得て快調に過ごして
きた阿部さんには、残念な出来事が起きた。
今朝高臣さんが来て、ボンドで作品を修復する。
同じ物にはならないが、何とか形にはなる。

作品を見に来るというよりも、宴会を楽しみに来る輩も中にはいる。
悪意はないにせよ、ふたりの作品展のコンセプトに関係ない宴会的
仲間意識で群れるのは困ったものである。
良い意味でも悪い意味でも、作家の普段の在り様がこうした時に
表れるものである。
この事故を除けば、酒井さんの唄とK氏と高臣さんの合唱Sくんの笛の
伴奏と今回の展示に関わった人たちには楽しい初日だった。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)」展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリスペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-15 12:26 | Comments(0)
2012年 02月 14日

鉄とガラスー如月(11)

阿部守さんの鉄の造形に、高臣大介さんの吹きガラスが巻きつく。
洞爺のガラス工房で創られた共作である。
初めての試みだが、爽やかな出来映えとなった。
鉄の保つ硬質な曲線とガラスの保つ透明で硬質な曲線が不思議な世界
を創りあげている。外光の時間差によって、その表情が変わる。
テンポラリースペースの高臣作品は、川の波頭のように見える。
中は空洞ではなく、無垢の透明なガラスで、寄せては返す一瞬の波が
固まって重なっているかのようだ。
清華亭庭の作品は樹の枝から水滴のようにぶら下がり、こちらは中が
空洞で雪が溜まり、凍り、溶けて水になるように創られている。
阿部さんの作品は、清華亭の主ハルニレの巨樹の傍に楠の造形物に
鉄の円盤が加わった、まるでハルニレの孫のようにも見える黒い作品
である。雪の中に巨樹と並んで何の違和感もなく並んでいる。
清華亭の外庭を望む廊下越しに見る事が出来る。
テンポラリースペースでの展示は、この泉池から発した川の流れの
ように波頭となって流れているかに思える。
さらにハルニレを意味するアイヌ語(チキサニ:われら・こする木)木片
から火をこすった神話から、窯のような黒い方形の鉄の作品が会場
中央に置かれている。
この中に高臣さんのガラスのキャンドルが炎をあげて燃えているのだ。
清華亭とテンポラリースペースを繋ぐハルニレ(エルム)の、コンセプト
がここに表象されている。
そしてこの黒い鉄の窯のような阿部さんの造形作品の上には、高臣さん
の波頭のようなガラス作品が束になって上からぶら下ってもいる。
火と水の対のような決して交わる事のない、緊張感のある距離がいい。
朝昼午後には外光が微妙に光の角度を変え入射し、夕方から夜には
黒い鉄の窯から炎の光が洩れてくる。
炎によって生成される鉄とガラスの火の記憶が、夜の時間に甦る。
火を産み出すハルニレの巨樹の傍らから始る今回の展示の一連の
流れが、この場で火を連想させる夜の展示でひとつの完結を見せる
のだ。
多分今回の展示は、一日の太陽の周期の時間差とともに呼吸して
見えない泉とそこから産まれた流れを、ハルニレに木と共に物語る
ようにあると思える。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-14 13:53 | Comments(0)
2012年 02月 12日

水と火ー如月(10)

網走の佐々木恒雄さんに電話する。
阿部守さんと出会った話を聞く。
今回が初対面なのに、そんな感じはしなかったという。
流氷も目の前に着岸して、阿部さんはとても喜んでいたという。
作品も見てもらい、阿部さんに褒められた、と嬉しそうだった。
阿部さんは、今朝9時の電車で札幌に向かったという。
これで佐々木さんの九州への道が開かれた、と思う。
九州・鉄の作家と網走・流氷の画家が心の交流をする。
この感じは今の季節の朝のようだ、とふと思った。
来週から月曜日の展示作業も含めてびっちりと休めないので、
昨日は左手首骨折の養生もあり休んだら、今朝は水道管凍結で
昼過ぎまで水が出なかった。
電気ポットの水を温め、灯油ストーブを点けて火とお湯の力で水の凍結
を解かす。
この水の凍結と火の燃える炎のふたつの間に、朝の時間が費やされて
いる。最近の寒波による恒例の朝である。
凍結という水の極地と燃やすという熱の極地という両極の間を過ごしている
と、なにか生きるという人間の環境が正にこの両極の間をこなしつつ、按配し
て生きている気持がするのである。
鉄という火によって生み出される素材と、氷結という水によって生み出される
素材が、正に水と火の両極の度合いによって存在しているからだ。
寒と暖の極に人は生きられないから、その度合いを調節する。
朝、水の凍結を溶かす為灯油に火を点ける毎日は、この水と火の極地を
往復しているようだ、とふと思ったのである.。
火の極地でも人間は生きられない。
水の極地でも人間は生きられない。
このふたつの極地の間を人間は行き来して生きて行く。
そう思うと、流氷の地と灼熱の鉄の作家同士が両極の間の磁場のように
出会っている事が極めて自然な事とも思えてきたのだ。

具象作家でありながら、この北の白を純粋に抽象化した色彩を獲得した
女流画家の長老八木伸子さんが、亡くなられたと新聞で知る。
今はもう数少ない私を・・・ちゃん、とちゃん付けで呼んでくれた事が懐かしい。
夫君の八木保次さんといつも一緒のおしどり画家夫婦で、妻に先立たれた
保次さんの事が心配である。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)展
 2月13日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-12 15:33 | Comments(0)
2012年 02月 10日

透明という普遍性-如月(9)

道立近代美術館の花田和治展を見た後画廊に戻り、阿部さんの
九州から届いた作品の梱包を解く。
4個口の内2個はすでに清華亭庭に運び込まれて、残りの2個が
ここでの展示用なのだ。
荷を解くと黒い大きな箱状の作品が姿を現した。
会場中央に設置する。
上部は黒く塗られているが、よく見るとこの部分は木である。
古い家具の板を使ったという。
焼きを入れ乾燥させ、木目を活かして黒い塗料が塗られている。
他の面は鉄板で構成され同じように黒の塗料が塗られている。
一方の側面には長方形に突き出た開口部があり、内側と通じている。
ここに孝臣さんのガラスのキャンドルが入ることを想定しているという。
これは、窯だなあ、と思った。
ここに灯かりが燈ると、火の光が洩れて窯の炎のようになる。
今回のふたり展の象徴のようである。
火を通して融合した鉄とガラス。
そして鉄のように固く締まった黒い木。
ガラスは水で阿部さんの叩き込んだ鉄の肌は、どこか土の質感を
漂わせている。そこに灯かりの火が点く。
水・火・土の根源的物質が、会場の風に揺れる。
そんなイメージが膨らんでくる。
雪の反射光に満たされた会場に、この窯のような作品が黒い泉の
ように沈んでいる。
今から月曜日の高臣さんの展示が待たれる。
他の小さめの作品も出して、この日の阿部さんの用意は終った。
明日から阿部さんは網走へ向かい、流氷を見る。
そこでふっと思い出して、宇田川さんから頂戴した十勝石・黒曜石
を阿部さんに見せると、手に取って目の色が変わった。
今回はこの黒曜石の産地訪問は無理だが、次回の楽しみにすると言う。
オホーツクの流氷と十勝の黒曜石。
この水と石のふたつの透明なるものに阿部さんの心は大きく揺れていた。
鉄とは何か、ガラスとは何か。
その存在が、水・土・火の根源的物質と有機的に関わる事を、
このふたつの透明な存在が語りかけるようにして在る。
凍りつく透明、燃えて凝縮する透明。
熱の両極がもたらす透んだ存在。
そこに物質の対極の現象が開く、透明という存在磁場がある。
作家とは、この透明という普遍性を創造行為によって実現しようと試みる
人間の精神的行為の実践者をいうのではないのか。
そして作品とは、その創造行為の結実・普遍という透明性に結晶したものと
思える。
自然は物質という形でその結晶をさり気なく見せてくれる。
地中の奥深くから湧く透明なもの、泉。
この存在もまた透明な普遍性なのだ。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)」展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1ー8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-10 13:32 | Comments(0)
2012年 02月 09日

FANTASY-如月(8)

午前中に阿部守さんと近代美術館で待ち合わせ、現在展示中の
花田和治展を見に行く。
1970年代から2010年までの画業が、三部に分けて展示されている。
初期の幾何学的な図形の造形性、そして自然の風景をその造型感覚
から再構成していく抽出の美、そして後期の心象と風景が昇華する
花田ワールドFANTASYの世界が広がる。
洗練され透徹した線と色彩が非常に心地良い、優れた個展だった。
会場に置かれた図録も、簡にして要を得た良い図録である。
2005年のテンポラリーでの20回目の節目の個展についても触れられ
いて、懐かしい気持がした。
前のスペース移転前年の個展である。
図録の表紙にも使われ、今回の展覧会のタイトルにもなっている
「映美のFANTASY」という作品に久し振りに再会し、嬉しかった。
また個人的にはこの時好きだった「母の列車」の、夜の海岸線の
削ぎ落とされた静謐な画面が、今回もあらためて心に沁みた。
非常に単純化された冬の夜の海岸線の内に、内的な孤高の人の
心象が塗り込められてもいる気がする。
この作品世界には当時の自分の置かれた情況も深く反映して、
あの時感じていたのかも知れない。
今見てそう思い当たるのである。
白と黒と暗い青だけの凍てついた海と岸辺の行方知れぬ曲線。
花田さんの透徹し突き詰めた描線が、人の心の深い襞に触れている。
同じ東京芸大の後輩でもあり、北海道現代作家展で1970年代から
の花田さんの友人でもある阿部守さんは、ゆっくりじっくりと鑑賞して
いた。彼の鉄の造形が保つ柔らかな線と強靭な懐の深さの質感は、
立体と平面の差異こそあれ、どこか共通する暖かさのようなものが
あると私は感じていた。
花田さんの保つ色彩の豊かさは、阿部さんの鉄の作品にはないけれ
ど、その代わりに阿部さんの鉄の作品の量感には、花田さんの色彩
に匹敵するものがある。
鉄の作品の肌の質感がそれである。
そして花田さんの描線の凛とした柔らかさは、高臣大介さんのガラス
の透明な流線とも呼応するのを私は感じていた。
もし叶うなら、いつの日かこの3人の展覧会を企画してみたいと思う。
多くの作品は要らない。一点ずつでも良い。
季節は雪のある季節が良い。
花田さん、どうですか・・。体調整えて下さいな。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム))」展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1ー8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-09 14:48 | Comments(0)
2012年 02月 08日

DM・作品・作家・到着ー如月(7)

昨夕酒井さんの印刷が仕上がった。
しばし見惚れる程、良い出来上がりである。
横一列の凹み、エンボス、nup-sam-memが格好良い。
縦文字は右に阿部さんの筆跡で<野傍の泉池>の文字と
左に高臣さんのカタカナ文字<ヌプサプメム>の文字が並び、
真中に酒井さんのてん刻3文字が置かれている。
てん刻は象形文字で、気と木、水原を意味するようだ。
そして今日阿部守さん、高臣大介さんと九州からの作品も
無事到着。
直ちにふたりは清華亭へ向かい外庭の設置にかかる。
一部展示を残してこの日の作業は終了し、夕方清華亭管理の
市役所へ展示の挨拶に行く。
いよいよ明日からこちらの展示、DMの発送等が始る。
阿部さんの清華亭展示はほぼ終わり、後は高臣さんの分が明日以降
の展示となる。
阿部さんは週末オホ-ツク流氷見学で、明後日から網走・佐々木恒雄
さん宅へ出かけ、日曜日に帰りここでの展示に備える。
ふたりの合作作品も洞爺の高臣さんの窯で火を通して出来上がり、
会心の出来という。
鉄もガラスも火を通して形成され、冷やして固まる。
その同じ窯の火のプロセスを共有して出来た作品は、どんなものであろう
か。今から見るのが楽しみである。
高臣さんの水のような透明な柔らかさを保つガラスと阿部さんの土か木の
ような暖かく柔らかな鋼が、野に湧く泉を表象して白い雪原と雪明りに映える
のが待ち遠しい。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)展「野傍の泉池(ヌプサムメム)」
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-08 16:31 | Comments(0)
2012年 02月 07日

石狩・ふたたびの声ー如月(6)

撮影を終え帰京の途に着く吉増剛造さんから電話がある。
昨日は一日天候も良く、無事取材を終えたようだ。
何度かテンポラリースペースの方に連絡したようだが、私は昨日
定休日で留守だった。
この日は石狩の中川潤さんに会っていると安心していたが、こちら
も連絡取れずA新聞社の人と石狩河口でひとり撮影を続けたという。
天気も良く、光も綺麗で撮影は上手くいったという。
これから一年かけて、長編詩を創るよ、と声が弾んでいる。
草稿をどんどん創って増やしてゆくという。
今年末のここでの個展を意識しての事と思える。
今回「石狩河口/座ル ふたたび」展の本当の意味での出発が、
映像と詩の制作宣言として発せられた気がする。
これからの一年間は、新たなRoad to Ishikari、石狩シーツ最終章
としての「石狩・みちゆき・吉増剛造」が始る。
この過程はある意味で集大成のような、厳しくも鮮烈ななラスト・ランに
なるのかも知れない。
吉増さんは吉増さんの、私には私の、ある意味二人三脚のような一年
となる気がするのである。
1989年「界川游行」の鬼窪邸。1991年「石狩・みちゆき・大野一雄」
の石狩河口来札の岸辺。1994年「石狩河口/座ル」の滞在制作、
「石狩シーツ」誕生。
これらの道程をさらに本質的に包含する昨年暮の緑の運河エルム
ゾーンの旅の行程と今回の石狩河口再訪。
こうした積年の経験の深部において、何かが生まれるのかも知れない。
少なくとも吉増剛造は、今回それを宣言したのだ。

夕方洞爺の高臣大介さんから電話来る。
阿部守さんと工房で制作していると言う。
安部さんは昨日九州から千歳経由で洞爺へ直行し、今日ふたりの共同
制作作品完成。
明日来廊。同時に九州・福岡から他の展示作品も到着予定という。
いよいよエルムゾーンを起点とするもうひとつの石狩への声の木霊が
始ってきた。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)展「野傍の泉池」展ー2月14日(火)-19日(日)
 am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-07 12:33 | Comments(0)
2012年 02月 05日

海と山からの眼ー如月(5)

画家花田和治さんの展覧会が、道立近代美術館で始まった。
昨日トークショーがあったと聞く。
私は行けなかったが、後で佐佐木方斎さんに電話で様子を聞いた。
百人近い人が集まり盛会だったという。
1977年の北海道現代作家展立上げの事など、佐佐木方斎さんの
会場での紹介などもあったという。
そう話す佐佐木方斎さんはとても嬉しそうだった。
道東の内陸で生まれ、数学を志した佐佐木さん。
道北の鰊御殿花田番屋に祖先をもつ花田さん。
全く対照的な出自をもつこのふたりが、ある時期現代美術を牽引し
作家活動を共にしていた親友同士なのだ。
作品の傾向はともに対象を削ぎ落とした抽象作品であるが、その内容は
例えば都市性と風景性と分ける事が出来るように対照的である。
佐佐木方斎さんは、数学科出身らしく対象を極度に分析し抽象化する。
「格子群」「余剰群」「自由群」の3部作は、そうした数値の分析の裏打ち
から純粋抽象の形象が表現されていた。
一方花田和治さんの表現は、風景を見詰め余分な物を削ぎ落とし抽象化
する。例えば山や海岸をデッサンし、そこから稜線や海岸線といった風景
の骨格となる構造線を抽出し、シンプルに描き出すのである。
この花田さんの視座は、広い視界の位相から発するもので、その意味で
は海からの目線に近いと私には感じられる。
佐佐木方斎さんの視座は海の視座というより、より内陸的な視座であり、
内向きなそれである。
同じように対象を単純化し抽象化する傾向はあっても、その対象素材の
視座は内陸的と海岸的といっていい程違うのである。
この相違はふたりの道東と道北の出自の違いから、先天的に生まれて
いるような気がしてならない。
しかしこうしたふたりの生来の表現の相違にもかかわらず、ともにふたりは
時代の最先端で美術運動をし、表現し続けてきた親友同志なのだ。
内陸の山村の視座と海岸の漁村の視座が、平坦な扇状地である札幌の
街で交錯し美術表現の第一線を創り続けてきた事実に、ふっと私は川の
連続性のようなものを今感じてもいるのである。
深山のミクロの抽象と大海のマクロの抽象のように、ふたりの作品が見える。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)展「野傍の泉池」-2月14日(火)-19日(日)
 am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-05 13:21 | Comments(0)
2012年 02月 04日

優しい訪問者ー如月(4)

友人の山内慶くんからメールが来て、これからそちらに行くという。
雪掻きをするので、雪は残しておくように、という伝言だった。
手首の骨折のお見舞いらしい。
やがて到着した山内くんは、外に雪があまり無い事にがっかりする。
この日寒気は鋭いが、雪はあまり積っていなかったのだ。
そこでトイレの給水管が凍り付いて、スムースにいかない事を話すと、
早速給水管の処置に取り掛かってくれた。
ただでさえ無器用なところに、手首の故障と不自由な私には
救いの神である。
そこへ阿部守×高臣大介展のDMの紙を持って酒井博史さんが来る。
今晩から3日間昼夜通して、DMの印刷に入ると言う。
ふたりの文字も決まり、中央のてん刻の文字も決まったようだ。
葉書の紙質もなかなか良い感じで、活字の圧力をしっかりと受け止め
てくれる感触である。
野傍の泉池は阿部さんが書き、カタカナ表記のアイヌ語ヌプサムメムを
高臣さんが書いた。このふたりの文字を左右に配し、その真ん中に
酒井さんのてん刻文字が入るのである。
てん刻の文字は漢字で大気・木・水を表す三文字という。
さらにこの縦文字3列の中央にアルファベットで浮き文字が真横に
浮き上がる。
前回の吉増剛造展DMに負けない造りとなる。
DM全体のレイアウトは、前回と同じく河田雅文さんが目を通したという。
来週8日の阿部さん来札までには、凸版印刷のこの案内葉書が出来上
がる。
普通より遅れたが、13日からの清華亭外庭展、14日からのここでの
展示には何とか間に合うだろう。
来週は吉増さんの石狩河口来訪、阿部さんの来廊とエルムゾーンと
石狩と魂の交感が濃くなる。
左手首のギブスと水道管の凍結がこの熱い交感で早く解けると良い
のだが。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)」展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)
 am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2012-02-04 14:33 | Comments(0)
2012年 02月 03日

ライブ録音「冬の鏡」-如月(3)

先月8日ここで行なわれた及川恒平さんのライブ「冬の鏡」。
そのライブ録音盤CDが送られて来た。
<お怪我の回復気になりますが・・。>と、お見舞いの文章が
添えられていた。
早速聞いてみる。
最初の「地下書店」そして「冬のロボット」と、哀愁を帯びた透明な
声が廊内を満たす。
一瞬あの日の寒気と夕暮れの青い空気を思い出す。
語りは少なく淡々と歌を繋いで、一気に数曲を唄い継いでいったのだ。
自らの唄う原点を確認するかのように、聴衆におもねることなく歌曲を
見詰めている、そんな姿勢が特に印象的なライブだった。
久し振りに聞きに来たMさんは、今までで一番良かったと、後で呟くよう
に語ってくれたのだ。
今までもう何十回もここで及川恒平のライブがあったが、CDに録音され
たのは最初の2005年3月と二度目の6月以来3度目である。
及川さん自身、今年初のこのライブが気に入っていたのかも知れない。
録音には歌人山田航さんの朗読も記録されている。

都心から離れたこの方形の街に珍しい斜め通りの片隅の小さなギヤラリー
に、片腕痛めた黒帽子の男がひとり居る。
その姿はまるでモグロフクゾーのようで、時々”ド~ン!”と指を振り下ろし
たりして、遊んでいる。
廊内には白い光が上からも下からも射し込んで、静謐である。
多分空間は、今この時にしかない美しさに満ちている。
寒気は鋭いが、この白い光は他の季節にはない独特の時間だ。
北の国に生きる多くの人たちが、ここ特有の美しさを見詰めず、囲い込まれ
たビル内の囲繞空間の電気照明だけの光の中に作品を置いて、満足して
いる。
同じ方向からのいつも同じ増幅した光に満足している。
光にも有機的な陰影のある事を忘れている。
冬には冬の光があり、夏には夏の光がある。
そしてそれは季節だけではなく、一日の午前午後夕暮れと同じ光は
二度とないのだ。
遠く離れてこの光を感じる人たちがいる。
それが及川さんであり、吉増さんでもあるのだろう。

来週から九州・福岡の阿部守さんが来る。
彼もまた年に一度ここを訪れる遠くの人である。
なにかに苛立つようにして、ふとまた指を振り上げ”・・にド~ン!”と
モグロフクゾーが顔を出す。
”フヤケタ光の増幅脂肪空間に、ド~ン!”

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉」展ー2月14日(火)ー19日(日)
 am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-03 13:08 | Comments(0)