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テンポラリー通信

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2011年 09月 03日

風が飛ぶードットの時代(12)

朝晴れていたが、次第に黒雲が空を覆い風が強くなる。
雨はまだない。
四国へ上陸したかどうかという台風だが、その影響はずんと
この北の地にまで及んでいる。
明日は日本海へ抜け、こちらは斜めの傘マーク、大荒れの予報だ。

A氏の竹本展来訪記が、ミクシイに載っていた。
私の2日前のA氏に触れたブログの文を照れながらも喜んでくれた。
また昨日のメカスに触れた文を、出張中で旅先の竹本さんが嬉しいと
メールをくれる。
昨日は美術家のMさんがじっくりと見て半日滞在した。
そしてその前雨が激しく降った時来た若い女性が、三角誌2号を購入して
くれ、その後真面目な顔で質問される。
こういうカラーコピーの写真展示を、ギヤラリーのオーナ‐としてどう思うか?
多分写真をしている人なのだろう。フイルム現像ではなく、カラーコピーで
展示する事に疑問を抱いたと思う。
今回の個展タイトル「意識の素粒子」の意味を私なりに解析し、その意味で
コピーもありとの見解を述べた。
もし写真専門の画廊というのがあれば、この展示は邪道であるのだろう。
しかしここは現代美術の画廊である。
古典的な現代美術の展示例をあげれば、美術館に便器を展示した有名な
例がある。この時美術館の学芸員にこの素材をどう思うと聞いたら、なんと
答えたのだろう。
答えは素材としての便器にはなく、便器の置かれた関係性を主題に答えるだろう。
今回もカラーコピーという素材が問題なのではなく、展示の関係性が主題となる。
タイトルにある<素粒子>とは、一枚一枚の作品の完成度を見せるものではない
今回の展示の意志を示唆している。
泥に汚れ水に濡れた災害地の写真の修復のように、自らの撮影<画素>を一度
洗い直し天日に晒すように行為する過程の展示が主眼なのだ。
だから一枚一枚の完成度を額に入れて展示する写真展示とは異なるのである。
今回の展示はインスタレーシヨンのようにある。
従って純粋写真画廊的な見方で考えれば、疑問符が付くのは止むを得ないのだ。
こういう時はなかなか話が伝わりそうで伝わらないようなもどかしさを感じる。
相手が真面目な人であればあるほどそうである。
作家本人が説明した方が良いのだが、私如きの解釈で納得できたかどうかは、
おおいに疑問である。

今は海の漁師さんたちでさえ、山に植林を試みる時代でもある。
写真だけが写真の領域で完結する事はない。
一度その領域を出て、撮る行為自体を捉え直す事も必要な時代である。
誰もが手軽にそれなりの写真が撮れる優れた光学機械が出回っている。
それだけに尚の事、表現としての写真を根っ子から問う表現者の視座が
問われるのだ。

*竹本英樹写真展「意識の素粒子」-9月8日(木)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*藤谷康晴展「覚醒庵~ドローイング伽藍~」
 9月13日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-09-03 13:42 | Comments(0)
2011年 09月 02日

雨風強くードットの時代(11)

昼から一気に風雨が強くなる。
まだ本体の台風は遠くだが、すでにその前触れが届いている。
斜めに降る雨、叩きつける雨音。
人も車も揺れる風景だ。
この風・雨風景を見ていると、ふっとジョナス・メカスの映像を思い出す。
竹本英樹の会場に居ると、一層の事である。
故国リトアニアからアメリカへと亡命したメカスが、言葉の通じないアメリカで
日々の生活を日記のように撮り始める
その16ミリカメラの映像は揺れに揺れて、当時の観客からは次のような
質問が飛んだという。

 Why your imge is shaky?(お前の映像は何故そんなに揺れるのだ?)

メカスはそれに次のように応えたという。
 
 Because My life is shaky (私の人生が揺れているからです)

この挿話は詩人の吉増剛造さんから聞いた話である。
亡命後27年ぶりに故国リトアニアを再訪した映像「リトアニアへの旅の記憶」
は、アメリカ・インデイペンデント映画の古典として、今も新鮮な映像である。
この揺れる16ミリの画面の奥には、彼自身のナチスから追われ故郷を後にし
た揺れる人生がある。
この難民・亡命の心象は、そのまま映像の揺れとなって、叙事詩のように
映像メタファを創り出している。
詩人の言葉の陰喩のように、映像が喩となって揺れる。
故郷の27年ぶりの再訪というドキュメントが、心の揺れとなって映像に
メタファを生む。
Because my life is shaky とは正にその事実を指すのであろう。

現在の日本では、故国喪失という難民状況は直接は無い。
しかし心の難民は、ケイタイ片手に都会を漂流している現状がある。
国家の位相ではなく、個の位相で故郷喪失は生まれている。
特に今回の大震災・大津波・原発事故による状況は、そうした故郷喪失を
地域的に日常現実として現出させてきた。
そして外国に向かう近代帝国主義の様相ではなく、内なる都市の地方への
帝国主義として、東京電力の福島原発があり、地方への都市的差別構造
として内なる植民地構造も露呈してきたのである。
メカスの映像が現在少しも古く感じられないのは、そうした潜在的難民構造
が、現代の都市生活者に精神的に根付いているからとも思える。

竹本英樹の揺れる画像が、その事と何処まで関わっているかは分からない。
ただ言えることは、この画素ともいえる「意識の素粒子」展は、そうした揺れる
イメージをもう一度ランダムに晒す事で、自らの撮影する根拠を真摯に探求し
見詰め直す機会となっている事だけは確かなのだ。
敢えてフイルム作品ではなく、カラーコピーに印刷し壁を埋め尽くす行為に
その<晒す>意志を感じるのである。
きっと竹本自身もまた自らに問うて応えようとしているのかもしれない。

 Becouse my life is shaky?

*竹本英樹写真展「意識の素粒子」-9月8日(木)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2011-09-02 13:24 | Comments(0)
2011年 09月 01日

台風・南風ードットの時代(10)

台風の影響か、南風吹く。
気温が一気に上がる。

竹本英樹展もあと一週間。
昨日はA氏が、椅子を正面に置きじっくりと見ていた。
10日ほど入院後仕事に復帰して、職場のリズムに疲れたという。
退院してすぐ父上と一緒に来た時は、晴れ晴れとした表情だった。
充電したなあ、とその時は言っていたが・・。
北壁左の画素群が気になるという。
ジャズドラマーのA氏には、これらの画素群が音譜のようにも見える
のかもしれない。
不鮮明なぶれた画像が、178枚。
一瞬の風景の瞬間をカットする画素の伽藍。
しかし一枚一枚の構図は実に構成的である。
表面はぶれているが、構図は少しもぶれていない。
A氏には、この画像のひとつひとつが自らのドラムの撥捌きのように
見えているのかもしれない。
時としてステイックを擦るように打ち、時として震わす。
打刻の最後の瞬間、手が微妙にドラムに触れる。
その時のビブラート、音の強弱。
壁一面の画素群から、じっと打刻と旋律の繋がりを探し、見つめている。
そんな気がした。
2階の「海に沿って」の主題を持つ展示には、すでにあるメロデイーがある。
同じように不鮮明な揺れた画像だが、ここには主題となる旋律がある。
しかし、1階の178枚の画素群には主題という主題は無い。
「意識の素粒子」というタイトル通り、画素そのままの178枚である。
見る者がこれらを繋いで、旋律を作るしかないのだ。
それをA氏は試みていた。
入院という非日常と生活という日常のギヤップの挾間で、疲労した感性が
画素を音に紡いでいた。

うん、疲れが取れたなあ~と言って、ちょうど来ていたBさんに来月の
ライブの予定を語り出した。
目に来た時と違う力が宿っている。
作品にはいろんなアプローチがある。そしてそれが良い。
先日感じたさっぽろへの視座と同じである。
海岸部からの視座、丘陵地からの視座、山部からの視座、扇状地からの
視座。どれもがさっぽろへのアプローチへの視座である。
そうした複合的で有機的な視座から、固有の世界を取り戻す。
決してドット的な点を繋ぐ直線で世界は構成されていない。
内に取り込まれた快適さは、内面の植民地化であり、外界への帝国主義化
でもある。
月寒丘陵に異様に聳え立つ札幌ドームも、内部に入れば快適な空間かも
しれないのだ。同じように聳え立つタワー系マンシヨンも同じである。
しかし世界との有機的な風景の関係からみると、八紘学園の建物群と
比し、これはみな風景への帝国主義的侵略物である。
月寒丘陵の保つ風景のトニカ(基調低音)を壊しているからだ。
これら都市の内なる帝国主義と植民地化に対峙する為には、風景の本来保つ
トニカを取り戻す闘いをしなければならない。

竹本英樹写真展は、その意味で自らの撮影画素を再構成し再生を意図した
画素の基調低音を復活させる為の試みとも言える展覧会である。
その試みに、非日常と日常の挾間に疲れたひとりのミュージシアンが、真摯に
向き合い、見えない演奏を試みていたと思える時間だった。

*竹本英樹写真展「意識の素粒子」-9月8日(木)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*藤谷康晴展「覚醒庵~ドローイング伽藍~」-9月13日(火)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax-11-737-5503

by kakiten | 2011-09-01 14:22 | Comments(0)