人気ブログランキング |

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ

<   2011年 06月 ( 21 )   > この月の画像一覧


2011年 06月 15日

赤い封筒・お握りー夏日幻想(6)

朝、真っ赤な角封筒が届く。
うん?と思う。
差出人を見ると、東京の石田尚志さんからだ。
中には東京都現代美術館の案内が入っている。
特集展示/石田尚志とある。
近年の代表作が展示されるという。
それにしても赤い角封筒とは、インパクトがあるなあ。
中の招待券とフライヤーを見ていると、電話が鳴る。
Mさんからで、今車でFMを聞いていたら、写真家のFさんの誕生日メッセージ
が流れていたと言う。
一緒にいつか石狩河口を歩いた時を思い出したという。
そんな話をしていたら、のそりと人が来た。
縄文生活実践者とでもいうべき中川潤さんだった。
久し振りである。
石狩で自耕自給生活をしている。
もう蜻蛉が飛んだという。
今年は寒さが早い。収獲も早いかも知れない。
そんな話をした。
札幌の姉の所へ寄った途中という。
昼食は?と聞くと、お握りがある。姉が作ってくれたという。
一個あげると言って、大きなお握りが出て来た。
遠慮なく戴く事にした。
食べながら、高臣大介さんのおばあちゃんのお握りを思い出した。
梅干と海苔のごく普通の、しかしとても懐かしい感じのする握りだった。
まだ暖かく、美味かった。
最近姉は母親みたいになって・・と話す。
自耕自給の生活でも、このお握りにはやはり家族の味がするのだろう。
なにか大切な物を横から貰ったような気がした。
スーパーやコンビニのお握りとは、何故こうも味が違うのか。
握る掌に家族の温もりが、沁み込んでいる。
相手を思って握る掌の微妙な圧力の差なのだろうか。
珍しく一個のお握りだけで、中川さんと寛いで話が進んだ。
ふっ、あれはお握りではなく、固形のお酒だったのかも知れない。

*「これから下りていこう/斎藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2011-06-15 13:53 | Comments(0)
2011年 06月 14日

肌寒い日ー夏日幻想(5)

休廊日の昨日、久し振りに不動の滝を見に行く。
夏草が繁って木が倒れて、道が隠れている。
雨上がりで、虫が飛ぶ。
祠の不動明王を拝み、神社を抜け、旭山に出て界川筋を降りた。
伏見稲荷の朱の鳥居をくぐり、本殿を拝み下って、分断する自動車道を
渡り、古い石段を山裾へと下りる。
そこから水の道を辿って界川遊歩道まで戻る。
少し汗ばんで、脚力の衰えを知る。
自転車の脚と歩行の脚は違う。
やはり歩くのが良い。
これが本格的な登山だったら、きっともっとバテていただろう。
帰り道三角山の麓近くにある、Mの家に顔を出す。
玄関を開け、”M!”と声をかけると、吃驚して満面の笑顔でMが出て来た。
手を握りわあーつと話が続く。
6年ぶりだ。すっかり頬もふっくらして、自宅を改装した針灸院も順調のようだ。
よく昔彼の親友のOと3人で山へ登った。
不動の滝へも最初の頃一緒に行った記憶がある。
残雪がまだ残る春だった。
その時撮った写真に、雪と岩の陰影の加減で崖の一部が人の顔のように
浮かんでいた。
高貴で哀しげな女性の顔のようだった。
また、残雪の残る寒い山頂でMが美味しい珈琲を淹れると言って、
お湯を沸かし、一滴一滴ドリップし、珈琲を淹れた事がある。
珈琲を落としている間に、肝心の珈琲は寒気でぬるくなっていた。
こんな時はインスタント珈琲の方が余程早く、熱く、美味い。

一昨日帰り際電話が鳴り、岡部ですと声がした。
若い友人の東京の岡部健司くんだった。
今沖縄で一緒だったサントリーに入社したAと一緒だと言う。
沖縄で偶然ふたりと出会って以来のAである。
Aと電話が代わって近況を話す。
サントリーなら、洞爺のガラス「燃える男はロック」という素晴らしいグラスが
ある、と教える。洞爺湖サミットでも世界の首相・大統領が使ったぜと言うと
吃驚した声をあげていた。
営業で大変そうだったので、少し気合を入れておいたのだ。
Aとは2年前に一回だけ出会い、その後岡部くんは昨年札幌に来た際、
同じ千葉出身という事で洞爺のガラス作家高臣大介さんとも親しくなった。
沖縄の美術家豊平ヨシオさんの作品がとりもった友情である。

昨日一昨日と、しばらく振りの若い友人に声をかけたり、声が届いたり。
体力は落ちていたが、心は懐かしくリフレッシュして、気が満ちる。

*「これから下りていこう/斎藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax-11-737-5503

by kakiten | 2011-06-14 13:43 | Comments(0)
2011年 06月 12日

初日の風景ー夏日幻想(4)

午後大久保さんが2歳のお子さんを連れて見えるまで、空は曇っていた。
その後陽光が射し、会場は光に満たされる。
今年1月来た時は、野上裕之さんの「鳥」の作品に手を伸ばし戯れていた
碧ちゃんは、もうヨチヨチ歩きできるまでに成長している。
作品の中に子供がいると、一気に作品世界がディテールを持つ。
作品を背景に幼児の動きが空間に溶け込むように感じられる。
作品世界と相対して向き合うのではなく、無邪気な幼児の動きが作品世界と
こちら側の世界を同調させるからだ。
2階に上る梯子の最初の一段をやっと登れるようになり、しばしそこから
周りを見ている。
幼児にとってはとても大きな一歩である。
世界が広がる不思議。
その様子が今回の齋藤周さんの作品世界と馴染み、点景として違和感がない。
絵画の中の小さな駆ける人物と響き合っているかのようだった。
2,3時間も遊んでいただろうか。
小さな手を振ってバイ、バイと帰って夕刻、宴会の準備をする。
常連の山田航さん、久し振りの森本めぐみさんが揃ってビールを飲む。
齋藤さんは前夜徹夜の展示制作の疲れがあるのか、眠そうである。
やがて奥さんも来て、さらにほっとしたのか、もうダウン寸前。
場所を奥の談話室から、展示会場に移動し、床にごろりとする。
正面のS百号の後姿の人物が、奥さんにそっくりと気付く。
その話をすると、そう?と、いなされた。
DM裏に使われた緑の固まりは、この作品の人物の頭部であるという。
その図柄決定は、奥さんの提案という。
この日着ていた服も、作品の中の人物と同じような服だった。
夫唱婦随が、齋藤家では逆であるようだ。

肝心の主役が疲れ気味なのだ、早々に初日の宴会は終える。
帰り支度をしていると、背の高い青年がふらりと来た。
瀬戸くんである。
岩見沢から出て来たという。
何かやっぱり気になって、と言う。
一昨日の展示作業中にも一度来ていたので、気になったのだろう。
もっと人が多勢かと思った、と言う彼に残りの飲み物食べ物を全部
平らげてもらった。
特別初日オープニングも謳わなかったので、あまり多勢の濃い宴会と
ならず、徹夜明けの齋藤さんには無理のない初日の夜となった。
今日も朝青い顔をして来たが、無理せず夕方まで休むといって帰る。
その後これから帯広に帰るという大久保さん母子が再び見える。
今度は旦那さんも一緒で、こちらもじっくり作品を見てくれる。
碧ちゃんはすぐに梯子に取り付き、今日はもう2段目に上がる。
目の高さが上がって、周りの大人の目線に近付く。
その事が新鮮なのか、声を出して喜んでいた。
私とも大分仲良くなったなあ。

*「これから下りていこう/齋藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax-11-737-5503

by kakiten | 2011-06-12 13:14 | Comments(2)
2011年 06月 11日

縦の広がりー夏日幻想(3)

朝着くと、もうすでに人が来ていた。
ご両親だった。
あいにくの曇り空だったが、照明はいれていない。
暖色が際立つから消したという。
曇っていても自然光がいい。
正面S百号は完成し、きりっとメリハリがついた。
その周りの壁に直描きの絵は消されている。
中心軸が出て、縦軸の広がりが初夏の山麓のように豊かに開いている。
左側のF百号と対のように正面の絵がある。
どちらも正面下部に向こう向きの人がいて、その位置がふたつの絵では
微妙に違う。
正面のS百号の方は、より中央に位置している。
色彩も明るく今の季節のように明るい緑である。
もうひとつは、少し暗めの夕方のようだ。
人物の後姿も、正面の絵の方がより垂直である。
この差が画面の奥行きをも変えている。
絵画全体の縦軸の深さが、正面の明るい作品から溢れて逆に左の作品も
引き立てている。
今まで点景のようにしか表れなかった人物が、ここでは大きなポイントと
なってきた。
「これから下りていこう」という個展の表題の、<これから・・・>の位置。
それが人物の位相となって、絵画全体の起点となっている。
私の知っている齋藤周さんの描く人とは、風景の一部・点描であって
起点とはなっていなかった。
今回はこの後姿の人物の位置が、深みを保って横軸に流れない。
この人物の向こうに、山が野が高く広がり、横軸を主導している。
従来は横に気ままに拡がる緩いリズムだったと思うのだ。
<これから下りていこう>
この<下りる>は下を向く事ではなく、深さと高さを保つ垂直軸の広がり
でもある。
一本の樹が地に深く、空に梢を伸ばすように、世界を広げてゆく豊かさに
似ているのかも知れない。
絵画は作家の今を如実に反映して、その人生を語る。
一時展示を諦めかけたS百号。
その完成は今回の大きな成果だ。


*「これから下りていこう/齋藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-11 13:50 | Comments(0)
2011年 06月 10日

壁にrun awayー夏日幻想(2)

空は晴れているが、雨の予報が出ている。その所為か蒸し暑い。
4年目の命日をひとり迎えて、朝来たお坊さんと少し話す。
またお盆にと、言って帰った。
それから自転車を飛ばし、北へと向かう。
昨夜の展示作業のまま、会場は散らばったまま。
壁に直接描かれた寸画があちこち跳んでいる。
今日は徹夜で最後の仕上げという。
初夏の新緑のような淡い色彩が、天地を軸にrun away。
これから空間全体が如何に<run downー下りて>行くか。
百号の大作3点、さらに小さな作品たちと会場で直接壁に描かれた絵が
連動して、空間全体を構成してゆく。
制作し展示しながら、作家が空間の主のようになって軸が出来ていく。
未完の大作も含めて作家のこれからの制作時間が、会場の柱を創る。
この場における滞在制作ともいうべき、個人レジデンス展だ。

昼過ぎ、今夜の制作の為S百号の未完の大作が今運び込まれた。
正面に置く。
会場の他の多くの作品の集大成の感がある。
これが軸だなあ。
この周囲になにもいらないよ、とアドバイスする。
壁に直に描いた絵も周囲にはいらない。そう思った。
これを仕上げて朝、そこからビッグバーンのように他の作品が散らばっていく。
ただこいつの周りには何も無くて良い。
run downの軸心と思う。
作品を運び込んで、斎藤周さんはすぐ仕事に出かけた。
今夜が勝負。
明日の初日を楽しみにしている。

予報通り齋藤周さん帰って昼飯食ったら、ざざあっと雨が来た。
濃い雨。久し振り。

*「これから下りていこう/齋藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-10 12:50 | Comments(0)
2011年 06月 09日

斎藤周展展示作業始るー夏日幻想(1)

斎藤周さんの展示が始る。
今日明日とじっくり会場構成される。
まる3年ぶりの個展で、絵が変化している。
立ち位置の変化が如実に絵にも顕われている。
「ここから下りていこう」というタイトルは象徴的である。
<ここから>という地点が、俯瞰と深化の垂直軸を暗示させる。
横軸から縦軸への素直な過渡の展開。
DMに使われた作品は全体の一部で、S百号の大作という。
この作品はまだ未完で、展示するかどうか迷っていたが会期中に仕上げる事も
含めてやはり展示すると今日決断した。

気温は上がっているが、曇り日。
雨がパラパラっと来そう。
先日布団を干していたらにわか雨で濡れてしまった。
昨日は晴天だったので、一日布団乾し。
今度は用心して出かけず、一日ゆっくり布団を乾した。
カルシュウム不足か、野菜不足か短腹になっている。
つい物にあたると、反動は自分に戻ってくる。
苛々すると碌な事は無い。
布団を乾し、部屋を掃除する。
今月10日は女房の祥月命日。
お坊さんが朝早く来る。
5年前今の場所に移転し、その年夏秋ふたりの友人が去った。
村岸宏昭、石田善彦の両君。
そして翌年女房が死に、私も生まれて初めて入院した。
あの時きっと自分は、布団乾しのように入院したのだ。
小さな分岐点だった気がする。

人にはそれぞれ個別の小さな分岐点がある。
他人にはどうという事も無い事も、そこに個人的な理由(わけ)がある。
その小さな理由(わけ)が、時に深い意味を保つ地平もある。
林檎が落ちるのを見詰めたニュートンのように。
<これから下りていこう>というタイトルは、その磁場のポイントを
顕しているような気がする。
今日明日の展示を通して、その磁場のポイントを斎藤周さんはより深めて
会場が構成されていく。

*「これから下りていこう/斎藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-09 15:08 | Comments(0)
2011年 06月 07日

最終日の宴ー燃える春楡(29)

ぎりぎり最後に駆けつけた人、もう一度見納めに見に来る人。
そんな人たちが集まって阿部守展最後の夕が過ぎた。
取って置きの一升瓶が開けられ、美酒の時間だった。
酔いが回り過ぎない程よい頃、私は吹き抜けの上から木槌で鉄の輪環を叩き、
下でみんなに受けてもらって、直立する作品を床に倒した。
作品が横たわり、また立っている時とは違った印象を与える。
鉄を熱して差作品を叩き出している作家の姿がふっと思い浮かぶ気がした。
横たわった作品は、やはり樹木のような感じを与える。
その周りに座り込んで、宴は続く。
そこへ某所でライブを終えたばかりの酒井博史さんが、ギター片手に登場した。
それからは、酒井ヒロシライブとみんなの合唱で盛り上がる。
中嶋幸治さんが仕事帰りのタイムカードを押した後、いつもラジオで聞いていた
という曲を酒井さんが唄った時は、みんなの唱和が最高潮だった。
この場所がプレオープンした時、死んだMが大口を開けて歌っていた曲でもある。
不思議な事に青森から札幌に来たばかりの中嶋さんもこの歌が好きだったのだ。

 ♪一度だけ 一度だけ 輝きたいと思った。

「夢しかなかった」というこの曲のサビの部分を何度もみんなで熱唱した。
この日早くから一番に来てくれた山田航さん、湧き水を汲んで来てくれた
村上仁美さん、オレンジ帽子で決めた河田雅文さん、中嶋幸治・絵美さんの
おしどりコンビ、赤い帽子に長髪のアキタヒデキダンデイー、そして後半の
主役日章堂印房の店主にして歌手の酒井博史さん。
福岡の阿部守さん、
最終日の夜はこれらの人たちがあなたの作品を囲んで
名残を惜しんでくれました。
作品は、今それぞれの人生上の転機、その心の基点に触れ続けていたのだ
と思います。
今年の作品は、それぞれの人生上の<コア>に触れるものでした。
それは何よりも最終日に参集した友人たちの今を良く知る私には、痛いほど
感受される事だからです。
ありがとう。
ご報告致しておきます。

*斎藤周展「これから下りていこう」-6月11日(土)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-07 11:54 | Comments(0)
2011年 06月 05日

最終日ー燃える春楡(28)

北見の美術批評Y氏、留萌の美術家H氏が相次いで訪れる。
そして美術館のN氏、K氏が来た。
少人数だが、目の濃い人たちがじっくりと見てくれる。
今日が最終日で、Nくん夫妻が来て搬出を手伝ってくれる予定。
その前後は、作品の前で一杯飲もう。
囲炉裏の炉鉤のように作品が見えるかも知れない。
午後陽光が射してきて、黒い髄のように立つ阿部作品は、
翳のように深い芯のようである。
北の風、北の風景の内に有機的な髄を造形し、この後いかなる展開が
生まれるのか。
来年2月の展示を楽しみにする。

遅くなっていたベーマー会誌3号の原稿をやっと送る。
風土の<風・夢の系譜試論>である。
まだまだの力不足を実感しながら、とにかく阿部守展とともに仕上げた。
<the core of the wind>という阿部さんの言葉と、どこかで響きあって
書いていたのかも知れない。

*鉄・インスタレーシヨン 阿部守展ー6月5日まで。
 am11時ーpm7時。
*斎藤周展「これから下りていこう」-6月11日(土)-26日(日)。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-05 16:05 | Comments(0)
2011年 06月 03日

残り3日ー燃える春楡(27)

デパートに久し振りに行った所為でもないが、人数の多さの差を思う。
物品の展示即売で人が溢れるデパ地下。
人も物もその間には、多くの目に見えない矢印が飛び交っている。
売りを煽り、買いを漁る。
目から前に出てくる表示・視線の交差・矢印の氾濫である。
一方ここの九州福岡から来た阿部守作品。
ただ静謐に直立して、今日は曇天の鈍い光に立つ。
あと3日間の会期。
作品磁場と商品磁場の差異と思えば、それまでだがちょっと口惜しい。
私にもかってはこのデパート体験はある。
東急・三越・そごう・丸井・・。
それぞれ肌合いが、内に入ると違った。
東急は関東若手、三越は老舗権威、そごうは関西老練、丸井は地元親分。
共通する体質は、置かせてやるという場所代ピンハネ体質である。
これだけ人が多く入るのだぞ、という量数的多寡の上に立つ優位性である。
お客を前主といい、トイレをキザエモンという独特の売り場隠語もあった。
売り場の上司に気に入られないと、一日で場所を移転させられたりした。
愛人に貢がされる業者は、電機製品から家具まで内密に納品したと聞いた。
そんな事までして、良い場所を確保し、売上を上げる。
最近は百貨店も王様ではいられないので、そんな事はないのかも知れないが、
ある時期までは、確かに消費の王座にデパートは君臨したのである。
この大いなる物欲蠢く華やかなステージを主導するものは、人間の多さである。
人ではない。人間の数の多さ、そして運ぶお金の多さである。
だから前に出て目立ち、注目を引き、こちらへ向かってくる矢印が多くなる。
ある時期からこんな所で展示しても、人の数は多いけれど、何も見ていない
と思った。
それから一切展示会はしなくなった。
それではどこでというと、自前の場所が無い事に気付いた。
本拠地もまたショッピングビル化していたからである。
そして先祖伝来の地を出て、郊外へと移動した。
それが円山北町である。
そしてここも、今度は住居のビル化の波が押し寄せて来た。
高層マンシヨン群である。
住居の多人数化が進み、店舗のパック化は住宅のパック化にも及んできた。
ここでも人数の多寡が主となってきた。
対面販売の市場が消えて、ショップパックのビル、セルフのスーパーが主と
なり、円山からふたつの市場が消えた。
昨年今年の事である。

鉄の黒い柱のような阿部守作品を撫でて思う。
垂直に立つ事。
深く、地に縦軸を据えて。
樹のようだね。
ぼくら、森を生むことはできるのかしら。
一本、一本で在り続けながら、・・ね。


*鉄・インスタレーシヨン 阿部守展ー6月5日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*斎藤周展^これから下りていこう」ー6月11日(土)-26日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-03 14:52 | Comments(0)
2011年 06月 02日

久し振りのデパート行ー燃える春楡(26)

高臣大介さんのガラス展示を見に、閉廊後久方ぶりに百貨店に行く。
札幌駅南口にある大丸である。
ちょうど来たMさんと一緒した。
5階エスカレーター正面に相変わらず目立つ姿で、高足下駄の大介さんがいた。
腰に良いとかいう事で最近はいつも高足下駄姿である。
Mさんがなにか背が高くなったみたいで?・・と不思議に思っていたという。
作品は売りが基本で種類が多い。
その中にひとつだけ異質な感じの作品があった。
洞爺石というタイトルだったが、コロンとした先の削いだ透明な塊である。
あっ、これは今年2月のテンポラリースペースの個展の際見せた十勝石・
黒曜石が頭にあるなあと、すぐ思った。
お祝いにと思って実はこの時、黒曜石の鋭く剥れた形の物を包んできた
のだった。
早速お祝いと言って包装したまま手渡す。
なに?なに?と言いながら解いて手にした大介さんは、おお!っと言って
目を輝かした。
そして会場の棚の一隅にあった同じような形の作品の横に並べた。
黒曜石の不透明な黒っぽい透明さと、澄んだ透明なガラスが妙にハモって
決まっている。
良い土産となった。
それから地下に下りてデパ地下の食料品コーナーで弁当を買う。
閉店間際で、値引き安売りをしている。
人が多く、なにかすべてが直線矢印の感じ。
売る方買う方、みんな矢印。
こりゃ疲れるわ。
都市構造とは矢印直線。とあらためて感じた。
道路も建物も人もみんな。

帰り道Mさんと、大介語録を思い出してふたりで笑った。
ぴちぴちオジン。フツーに美人。
変なの。

*鉄・インスタレーシヨン 阿部守展ー6月5日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*斎藤周展「これから下りていこう/斎藤周」展ー6月11日(土)-26日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-06-02 16:18 | Comments(0)