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テンポラリー通信

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2011年 04月 03日

白い朝ー風の土(3)

朝カーテンを開けると、風景が白かった。
雪の朝。
昨夕昂揚した表情でK氏が来る。
午後3時からの市役所一階ロビーライブ、無事終ったようだ。
ジャズ演奏の5人と山田航さん長歌朗唱、文月悠光さんの詩朗読
最初はひやひやしたらしいが、その後は落ち着いて良かったとK氏が
ほっとした表情で言う。
Mの曲「撓む指は羽根」の演奏は、とても良かったという。
初めての5人。前日初顔合わせに関わらず、この曲に関しては
心が繋がったらしい。
Mよ、君の遺した名曲が初めて土曜、日曜を解放区にした市役所のロビーに
響き渡ったよ。
今日のライブは2回目でリラックスして、さらにいいものにきっとなるだろう。
聞きに行きたいが、展示を閉めて行くわけにもいかない。
すべての現場に立ち会う事はいつだって不可能なのだ。
この時、風が吹く。風が伝えてくれる。
昨日もK氏が来て、その後同じように聞きに行った宇田川洋さんの店で
その感想を聞いたのだ。
生ではなくとも伝わるものがある。

Gさんのブログにやっと緑の便りが載ってくる。
フキノトウ、木の芽。
先日はK氏が持参してくれた時計台の福寿草の写真。
植物たちは今自分の土壌で一生懸命命の花の営みを見せている。
その便りが間接的にせよ届いた時、心は風と共に体感するのだ。
その事を大事にしたい。
風土とは、目に見える土だけのことを言うのではない。
見えない風もまた、風土である。
見えない風によって人は繋がっている。
大きな困難に立つ時も、その立ち向かう姿に心打つ風が吹く。
傍にいなくとも、心が添う場合がある。
それは風のなせる心の風土である。
そうして人は長い時間文化を受け継いできたのだ。
その風の保つ風土を、産業経済社会の増幅装置のように操作し
喧伝するような文化運動がある。
文化は増幅して行なうものだろうか。
一本の福寿草のように、創り手の側に立つ事。
花壇は綺麗だが、その下の土壌は移植なのだ。
咲いた綺麗な花々を移植した花壇は、花のパック化でしかない。
パック構造で美を増殖しても、そこに本当の風土はない。
パルコパック、美術館パックに風土は存在しない。
今必要なのは、一輪の花が生まれる風と土である。
フキノトウが芽生え、福寿草が咲くような、真の土とそれを伝播する風である。
インフラの増幅拡大装置と同様の、文化インフラ増幅パック構造からは、
土も風も顕われようがないのだ。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー4月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-03 16:12 | Comments(0)
2011年 04月 02日

故郷喪失ー風の土(2)

被災者の避難生活の映像を毎日見ていると、故郷喪失を思う。
特に原発の地域の方々には、いつ帰れるか、帰れる日があるのかと、
避難先での不安な日々がある。
そんな毎日のTV報道を見ていると、昨日のエイプリルフールの冗談は
嘘・冗談と思う心の余裕もなくて、本当と思い信じていた。
後で冗談と告げられ怒る気も笑う気も失せている自分に気づいた。
それ程今はバーチアルな事が現実で、現実の方がバーチアルに思える。
個人的な思いでいえば、かって何もかも喪って札幌漂流していた時の
自分と重なる思いが、被災後の避難者を見ていてあるのだ。
そしてその時寄せられた友人・知人の暖かな支援も思い出すのである。
現在展示中の作品たちを含めすべての資料を自宅に保管してくれたG氏、
食事や衣類等をさり気なく送ってくれたKさん、その他にも多くの人の心を
今あらためて思い出すのである。
あの時は自分ひとりの事だったが、今伝えられる被災者の内にも
同じ個々ひとりひとりの生活があり闘いがある。
今の集団状況も最終的には個々の現場でこれからの毎日の闘いが、
続いていくのである。
そしてそれぞれの生きる場所を取り戻さなければならない。
例えそれが前と同じ場所であっても、もう以前と同じものではない。
そこは新たに創り直さなければならない。
まして原発に近い地域であれば、その事情はもっと根本的に問われてくる。

昔の人は「国敗れて山河あり」と言った。
今は故郷(国)がなくなるだけではなく、自然(山河)もなくなるほど環境を
変え都市化を進めてきたのである。
山を削り川を埋め立て都市を造成してきたのだ。
その結果本来の山河が叛乱して、舗装路に液状化現象、渚現象を起す。
そうした山河破壊の上に暮らす我々も、この大自然・地球の叛乱の前では
被災地とほんの紙一重の都市カプセルの内外にいるだけである。
衛生・安全・便利のカプセルを保障する筈の巨きな力は、地球・大自然の逆襲
にあってひとかたまりもなく崩れ、さらにこの安全神話の象徴人工太陽原子力
が逆に牙を剥いて土・水・空気を汚染して襲いかかってくるのだ。
増幅する巨大な力を求め身の丈を忘れて人は、今再び身の丈のものと
向き合っている。
被災した人たちが助け合い身を寄せ合う姿には、まさにその等身大の事実
がある。
故郷(国)を喪失して、故郷(国)を今思う。
自然(山河)を喪失して、自然(山河)を思う。
人間を亡くして、人間を思う。
この事がいかに苦い逆説であれ、今とりあえず紙一重のカプセル内にいる
私たちが真摯に受け止めるべき被災地からの風とは、この逆説の真実では
ないかと思うのである。
必死に生きる被災地の困難の個々の現場の根は、我々と同じ現場の土壌の
中にある。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー3月22日(火)-4月10日(日)
 am11時ーpm7時;月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-02 14:48 | Comments(0)
2011年 04月 01日

福寿草が咲くー風の土(1)

灰色の残雪と顔を出した土の間に輝く黄色。
小さなjoyのように福寿草の花が咲いた。
K氏が時計台の敷地に咲いた福寿草の写真を見せてくれる。
昨夜の居酒屋での事。
明日明後日市役所ロビーでの山田航長歌朗読・文月悠光詩朗読の
バックバンド演奏をする瀬戸くんと大塚くんが夕方来る。
瀬戸くんは3・11ニューヨークから帰国し、大塚くんは東京から帰省し
この日初めて演奏曲の打ち合わせをしていた。
瀬戸くんのギターと大塚くんのテナーサックスが、テンポラりーに
響いている。
ふたりの外に有山睦さんのドラム、ベース、トロンボーンが加わり
5人編成となるという。
初の演奏デビュー、最初文月トリオといっていたものが発展してこうなった。
ニューヨーク一人旅を終えた瀬戸くんは、多くの旅の収獲を秘めていそうだ。
釧路から教育大に入学したこの一年、また体だけでなく精神的にも一回り
大きくなった気がする。
大塚くんも東京の大学へ進学して一年。いい出会いを重ねている。
大塚軟膏くんから大塚ボンカレーに仇名を変更しようと瀬戸くんが言う。
瀬戸くんの仇名は私が勝手に瀬戸の花嫁とか言ってからかっていたが、
瀬戸ギワーくんの方がいいかも知れない。
そんなふたりと後から来た山田航さんとその後居酒屋へ向かった。
宇田川洋さん、千鶴さんと初めて会う大塚くんは、噂の千鶴さんの
ダシ巻き卵を楽しみしている。
ダシ巻きお千鶴の腕の見せ所である。
その席に仕事を終えたK氏が来て、福寿草の写真を見せてくれたのだ。
琴似屯田兵屋改修工事竣工記念展示の担当者でもあるK氏は、今回
のライブイヴェントの企画者でもある。
ファイン役人のファインな部分で、職務を遂行しながらもこうした人たちと
知人となりファインを共有出来得る事に喜びを感じている。
小さいけれど、福寿草のように確かなコミユニテイーが生まれつつある。
それぞれの生活基盤を土とするなら、心のファインな部分は花である。
その花はまた風で運ばれる。
風もまた土となる。
風の大きな大地を創ること。
それが本当の文化の仕事と思う。
それは時空を超えて、人と人の間を創る。
多くの困難と立ち向う被災地の多くの無名の人たちの姿が心を打つように、
それぞれの現場を真摯に生きる事が心の風を起す。
風が立つ。
放射能だけが風に運ばれるものでは、決してない。
心もまた運ばれて、風土を創る。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー4月10日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-01 12:49 | Comments(0)