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2010年 08月 06日

開放と解放ー森の記憶(26)

同じ場所に立ち、空と地に垂直に生きる樹の事を思っていた。
その時カイホウという文字のふたつの意味、相違を何となく感じた。
開放と解放である。
開き放つものと解き放つものである。
樹は胞子を飛ばしたり、綿毛を飛ばしたりして、子孫を残す。
この行為は、解き放つー解放の行為であるような気がする。
開き放つ、いわゆる開放的な行為とは違うような気がする。
何でも受け入れて開放的な側に寄り、内側から解き放つ・解放の行為を
この街は忘れていないか。
先日偶然話した人は、芦別の人だった。
芦別の印象を聞かれて、なんか大きな仏像の立っている所と答えたら。
笑ってあれねえと言った。一度見たらもう二度と行きたくなるものではない。
地元の人がそう答えた。
あと、カナデイアンワールドというテーマパークがあると言った。
これもねえと笑った。
そういえば芦別は大きな滝がある処でしょう、川と滝の方が
余程固有の魅力だけれど、と話した。
どこやらの有名なモノを移し変えて、なんとかのなになにという言い方を
観光的フレーズでよく見る事がある。
札幌の原宿とか、銀座とかもその類である。
私の好きな雨竜沼高層湿原も、北の尾瀬とかいう言い方がある。
もっと俗にカナダやドイツの建物をコピー移植して、ナントカワールドとか
称するのもその類である。
これらの発想は、開放的だが解放的ではない。
内側から真に溢れて開かれている訳ではないからである。
門戸を開いて良いものを取り入れることも勿論大事だが、それを受け止める
主体が貧弱では所詮ただの物真似になってしまうのだ。

樹木の世界との関わり方は、解放であって開放ではない。
文化の質とはこの解放性にあって、いたずらに国際都市サッポロなどと
開放的に開く事にはない。
明治の洋化政策鹿鳴館方式は、今も近代化、マチ興し、文化現象として
構造的に存在している。
特にアートという名の文化菌が蔓延して、日常にアートをとかふやけた
アートメイクが横行している。
エコとアートは最近とみに顕著な臭い消し言葉である。
この臭い消し菌をスプレーすると、時代も伝統も国の違いもなんでも
シュ、シューと”ファーブリーズ”される。
ジャンルを超えてコラボ―レーシヨンとか称して、生死の挾間の日常から
生まれたある分野の伝統をアート化するショーにする。
これも歴史の時間差を移植した一種のテーマパークである。
内側から熟成し、解き放つ・解放の世界観はないのだ。
芦別のように本来その土地が保っている美しい河川、森の魅力から
解き放つのではなく、カナダとか大仏像とかをスプレーして外に開くのは
解放ではない。ある意味新たな閉塞でもある。
この意識構造が近代鹿鳴館意識構造にはある。
無機質な大規模地下通路に、アート菌をばら撒きメークアートする意識構造
も本質的に同じ構造である。
最近聞いたのは、EZOなんとかという、あいも変わらぬ自らの生きている
場所を本州中央目線で構成する、アートショーである。
EZOとは何のこっちゃ!明治以前へのワープかいな。
この固有の言葉の保つ意味を希薄化する横文字化とカタカナ化は、
アート菌培養の腐葉土に近い存在だ。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)ー8月15日(日)
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-06 12:35 | Comments(0)
2010年 08月 05日

樹の声ー森の記憶(25)

予定より早くお坊さんが見え、早めのお盆のお経が終る。
お坊さんもこの時期は多忙そうである。
遅くなると思っていたが、早めに終ったのでテンポラリーへ。
今朝は遅くなると唐牛さんに昨夜伝えていたが、通常通りの出勤となる。
昨日の「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の署名呼びかけ文に、
早速反応がある。
東京在住のふたりである。
離れている人の方が反応が早い。
きっと小樽運河保存運動の時もそうだったのだろう。
身近な人には卑近な利害がどうしても絡む。
小樽運河全面保存運動の先頭に立ったA氏は、その後さまざまな圧力を
受け、泣く泣く事務局長の席を降りたと聞く。
その後半身不随となり、右手に絵筆を縛り付け真っ赤な運河の絵を描いた
と、奥様が後年回想している。
<真っ赤な運河>!その執念を思った。
地元にもこうした先人がいた事は、ずっと後から分ることである。
最初は旅人の眼が運河の美しさを称えて、喧伝されたのである。
地元は当時の政財界から、こんな臭い運河はさっさと埋め立てた方が
地元の利益になると「地産地消」が推進されたのだ。
その中で孤立無援のA氏は明治30年創業の老舗の生粋小樽ッ子として
この小樽の象徴である運河の保存に命を賭けたのである。
昨年奥様の自叙伝の中で、こうした人の存在を知り、ある感動と衝撃を
受けた事は忘れられない。
翻って札幌はどうなのか。その思いが正直駆け巡ったのも事実である。
人口増加や都市の規模においてのみ、都市のありようがある訳ではない。
如何に自分の生きている場所を真摯に見つめ生きているか。
そうした人の存在こそが重要である。
自分はなにもそうした人に自分を準(なぞら)えている訳ではない。
ただそうした人がいた小樽の真の底力を尊敬し、他山の石と感じているのだ。
表面だけ繁栄しているかの如き支店経済、金融植民地都市の側面だけでは、
この街は自立できないと思うからだ。
多分一本の樹の存在がその事を誰よりも雄弁に語ってくれている気がする。
私のハルニレ、エルムからのメッセージは、そう語っている。
勿論エルムだけではないのだ。西方の山並みの麓に立つ桂の木、
かっていた円山北町の銀杏の木、前の建物と共に育った白樺の木。
人の声が違うように、それぞれの木の声を受け止めてきたのである。、
緑の頭をした人類の一番古い友人たちは、その都度いつも声無き声を
送ってくれる。
地を生きる真っ直ぐなこの旧友たちは、東京や大阪、九州にあっさりと
飛んでいったりは決してしない。
そうだ、小樽という港町にも支店を出す訳でもない。
石狩の、札幌の大地に、愚直にもただただ立って生きているのである。
物流とは正反対の、この動かざる垂直な樹木の生き方を私は尊敬し学ぶ。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」ー7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-05 11:50 | Comments(0)
2010年 08月 04日

緑の運河ー森の記憶(24)

宇田川洋さんが署名簿を持って来る。
いよいよ「札幌緑の運河エルムゾーンを守る会」の活動開始である。
早速先ず第一番に唐牛さんに署名をお願いする。
その後久しぶりに見えたフォーク歌手の及川恒平さん、歌人で短歌批評の
田中綾さんにも署名を頂いた。
及川さんは1年ぶりの来廊である。
新作CD「地下書店」を完成し、新たな展開が予想される時期。
11月頃ここでのライブを打診される。
立体切り絵のSさんも見えて、早速切り紙をその場でみんなにプレゼント。
一同感嘆しきりである。
その後閉廊後居酒屋ゆかりへ向かう。
宇田川さんに及川さんを紹介する。
さらにOギヤラリーのOさんが署名をそちらでも集めるというので、
もう一部署名簿を作って貰う。
まず声をあげる事、その声の波紋がどこまで広がるか。
声の胞子が今空へと放たれたのだ。

    札幌の緑の運河=エルムゾーンを守りたい!

かって札幌は、エルムの都と呼ばれておりました。札幌は豊平川水系の扇状地
に明治以降出来上がった街で、泉端からは泉が湧き出て小川を形成し、多くの
エルム(春楡)が自生しておりました。かって街中に残っていた大木が時にチャ
チャニレ(年老いたニレ)とも愛称され、北一条通の名物であったこともありまし
た。エルムは高水位の地形を好んで自生し、春楡がアイヌ語では、チ・キサ
・ニ(我ら・こする・木)といわれ、本州の檜(火の木)に対応する生活文化を支え
た大切な樹であったといいます。
現在そのエルムの森は次第にその姿を消し、僅かに公共的な敷地にしかその
姿を見る事が出来なくなりました。その森の面影を今に残す一帯が、植物園の
森であります。ここは原生林の姿をそのまま囲いめぐらして植物園とした、
先人の英知が活かされた場所であります。さらにここは、北方の北5条通りを
挟み、伊藤義郎邸のある広大な往時の面影を残す庭へと続き、JRの高架線
を越え、札幌市指定文化財の清華亭庭のエルムの大木へと繋がります。
清華亭はさらに北海道大学の広大な構内の森へと続き、この緑の運河とも
いうべき森と泉のゾーンは、札幌の原風景としてかけがえのない
<風景の文化遺産>を形成しております。
そしてこのゾーン一帯には、宮部金吾記念館、清華亭、北大構内各所に
点在する近代建築物等と相まって、札幌の優れた近代遺産の宝庫とも
なっております。

しかし今年5月16日付けの「北海道新聞」が伝える記事によれば、
このかっての「エルムの森」を支えたサクシコトニ川の源泉のあった伊藤邸
のある敷地が高層ビル化するとの報道がありました。
ここは現在北大構内を流れるサクシコトニ川の水源ともなった湧泉の
あった場所でもあり、かつ今も旧偕楽園跡に祀られている井頭龍神の
小祠がこの伊藤邸の庭にも祀られているといいます。
私どもは、この道庁前庭ー植物園ー伊藤邸ー清華亭ー北大構内と続く
かってのエルムの森の記憶、<緑の運河=エルムゾーン>を高層ビル等
の建設によってこれ以上森と水脈の断絶を進めてはならないと考えます。
出来得る事なら、「伊藤緑地」として1万平方mを超える伊藤邸前庭を市民に
開放し、これを世界に類例の少ない貴重な風景文化遺産として保存、活用
すべきと考えます。
都心札幌駅に程近く、これほどの自然文化遺産を有する都市は、少なくとも
日本においては札幌を置いて他には考えられないと思われます。
過去に、港町小樽の象徴として小樽運河全面保存運動がありました。
内陸の都札幌においては、かっての森の象徴<緑の運河=エルムゾーン>
を市民一丸となって守り、育て、未来へと引き継いでいこうではありませんか。
また、20世紀の開発一辺倒が終焉を迎えつつある現在、かすかに残された
原風景を大切にしていくことこそが、21世紀の地域活性化の重要な資産に
もなっていくものと確信しております。
私どもは、この事を伊藤組、札幌市等関係各所に訴えかけていきたいと
思っております。多くの方々の心からのご賛同をお願い申し上げます。
そしてここにこの趣旨にご賛同され、ご署名をお願い申し上げる次第です。

      札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会

以上が今回の呼びかけ文の全文である。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)ー9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-04 13:07 | Comments(5)
2010年 08月 03日

じっと立つー森の記憶(23)

唐牛幸史展第一週日曜日は、様々に人が交錯して流れていった。
渦だなあ。
その渦ひとつひとつには入りきれなかったが、私は清華亭の想い出を
保つMさんとじっくりと話していた。
ふと素直に自分の来歴を飾らずに話せた貴重な時間だった。
少しぼやきぽくなった前日のブログに、ドイツの谷口顕一郎さんが、
即座に反応してくれる。
黄色のプラステイックを作品素材とする谷口さんは、現在の床の色が
作品をきりっと引き立たせるので、是非そのままにして欲しいと
メールをくれる。
胸のつかえが少し消える。
これもそれぞれの想いの渦である。
渦巻く中を王道で行く。
定休日の昨日は、立体切り絵のSさんの案内で、彼の作品が展示され
ている六花亭、六花亭文庫外に行く。
切り絵、針金造型の新たな作品を見て廻る。
鏡面をマットとする唐牛さんの展示方法に、Sさんは多くの示唆を感じた
ようである。
確かに彼の立体切り絵が、そのように設置されれば新たな
表現形態が生まれる。
さらに針金造型の宙から吊る展示方法は、谷口さんの展示とも重なり、
それらさらなる出会いの予感にSさんの期待は、膨らむばかりである。
その事を私に伝えたくて、昨日一日彼の新しい作品を見せてくれたのだろう。
普段は透析技師として働くSさんの、もうひとつの作家の顔である。

少し疲れが溜まっている。
こういう時は原点回帰である。
自分を見詰め、自分の生き様を確認する。
所詮自分は自分でしかない。
心の根を張り、志の梢は空に向かう。
そして気の胞子は、遠くへ飛ばそう。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12B(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)
*昆テンポラリー展ー10月12日(火)-24日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2010-08-03 11:32 | Comments(0)
2010年 08月 01日

雨の日曜日ー森の記憶(22)

朝から雨。
昨日とはうって変わって曇天・雨模様。
立体切り絵のSさんが来たり、帯広のKさん達が来たり、
写真家藤倉翼さんも来る。
昨夕はここを改造した時の棟梁、副棟梁役のNさん、Mさんが来た。
床材を黒く塗った事には、ここで賛否が分かれる。
今回の展示には良いが、最初の会場コンセプトとは違う。
モダーンになりすぎる。
難しいところである。
塗料を会期終了後剥し元に戻す事もあり得る。
私としてはしばらくこのままで、自然に床が戻ればいいと思う。
これもこれでこの場のもつ過程である。
ただ昆テンポラリー展の会場イメージが、ずれてきた事は事実。
ドイツから谷口顕一郎さんが帰国したら、よくよく相談したいと思う。
副棟梁で会場床デザインを考えたMさんが、昆テンポラリー展の
会場構成を担当する予定だから、彼のイメージが違えば昆テンポラリ
ー展の構成が支障を来たすのだ。
札幌の昆虫を素材とした、虫から考えるさっぽろの地。
これも大事な展覧会である。
ひとつ変われば、種々な意見が出る。
本質はこの地を如何に真剣に真摯に生きるかである。
その上で、意見の相違が生まれる。
その基本を間違えない事だ。
唐牛さんの床に敷き詰めた薄い土。
その土が土壌となって今、青い芽が生えている。
この土壌を抜きに芽も葉も花も立ち上がる事は無い。
この空間も僅か4年だが、土に芽吹く芽と同じように、床材ひとつにも
時の積み重なった時間がある。
その木に刻まれた時間を塗りつぶされたようで、怒る気持ちも分るのである。
床材を塗った方も、まったくその事を無視している訳ではない。
自分の展示を最良の方法で見せたいと思っての事である。
この場でしかできない最良の方法と思ってのことである。
会場を悪くしようとなどは、露ほども思ってはいないのである。
ここを履き違えると、とんでもない方向に議論が行く。
来週以降の課題である。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)ー8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-01 15:40 | Comments(0)