人気ブログランキング |

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ

<   2010年 08月 ( 25 )   > この月の画像一覧


2010年 08月 19日

石狩行ーハルニレの羽(6)

月曜日は一日搬出と会場清掃・整備で暮れた。
火曜日は完全休養日。
水曜日昨日は前から約束の石狩行き。
大野一雄の石狩河口公演場所を訪ね、望来海岸まで歩く。
八幡町で車を置き、そこから歩き出す。
天気は快晴、さほど暑からず快適だった。
今まで真夏に歩く事はなく、春か秋に歩いていた。
夏草が猛烈に繁っていて、途中来札の河岸に下りるポイントを間違える。
流木と漂着物の混む岸をかなり強引に歩く。
途中間違いに気付き、岸を這い上がるが背丈を越える葦に足を取られ難行。
這い上がったら大分手前の地点から、河岸に入っていた。
さらに石狩河口に出ようとこれも進入路を繁る草で間違え、枝川の反対を行き
途切れた土堤を草を掻き分け踏み下ったら、水面だった。
片足を川に突っ込み葦に手を懸け、這い上がったがその際人差し指と
中指の股が殺がれて鮮血が出る。
バンドエイドで応急手当。止血する。
夏草に誤魔化され道を間違えていたのだ。
同行の文月さん、大塚軟膏くん、藤倉翼さん、山田航さん、村上仁美さんも
呆れた事だろう。
その後北石狩衛生センター脇を抜け、ハマナス原生丘に入ろうと思ったが、
二度の無謀に懲りたのでおとなしく普通道を歩く。
しばらく退屈な車道を歩き、途中から中村浜に入る。
漁師さんの浜なので海水浴客も入らず、綺麗な海浜である。
しばらく渚を歩き知津狩部落に抜ける。
そこから無煙浜に再び降りて望来の断崖下の岸辺を抜けた。
満潮なのか普段より海が迫っている。
瑪瑙は少し大きめのを一個だけ見つけ、村上さんに渡す。
悪い水=ウエン=無煙と名付けられたこの浜は、時に瑪瑙海岸でもある。
浜を抜け望来に到着。これが一番古い海道である。
民宿の経営する食堂で、少し遅い昼食をみんなでとる。
タコ刺身、キングサーモン刺身、宗八カレイ等々それぞれに定食を頼む。
食堂のバス時刻表では午後4時半ころバスが来るのでゆっくりする。
海岸でカイトを上げたいと藤倉さんがいうので、海岸近くの芝生に行く。
私は念の為時刻表をバス停まで見に行く。
すると午後6時までバスがない。食堂の時刻表は古いものだった。
カイトを飛ばしたり、以前設置した陶芸家鯉江良二のアルミのモニュメントを
見に行ったり、芝生で仮眠したりして時間を過ごし、段々丸盆のようになる
大きな夕陽を見ながらバスで車の置いてある八幡町まで戻った。

大野一雄石狩河口公演のヴィデオを見た人たちを現地に案内する一日は
こうして、珍道中のように終る。
久し振りという事もあり、季節の違いもあり、とんだ右往左往の案内で
結構ワイルドな道行きとなった。
自然はやはりこの程度の歩行にも油断禁物である。
これが山中なら、軽い遭難モノである。
先頭で闇雲に突っ込んでいく私の性格に、若い同行者は呆れ果てた事だろう。
まあ普段行けない道程に免じて許されよ。
鼻が日焼けして赤い今日である。

*西田卓司展「ワーィングフロー」-8月24日(火)ー9月12日(日)
 am11時ーpm7時。
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-19 13:16 | Comments(0)
2010年 08月 16日

唐牛展終るーハルニレの翼(5)

先日ベーマー会の上野昌美さんが来た。
初めてお会いしたのだが、もう何年も前から知り合っていたかのように、
話し合う。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の趣旨に、ベーマー会の立場から
深く賛同してくれる。
ただ本職の仕事の関係上、伊藤邸そのものには距離を置いて総論として
協力したいという考えのようだ。
民間会社と個人の資産の事である。
それは当然配慮されて然るべき点である。
そして同時に同じ札幌人として、私的部分を超えて見る視座もまた必要な
事である。
この辺のせめぎあいが今後も重なって闘われてゆく課題だろう。

唐牛幸史展最終日、参加作者全員も集り、和やかに過ぎる。
テンポラリーのアイドル、竹本英樹さんの愛娘結音ちゃんも見えて、
相変わらず人気を独り占めする。
早速芳名帖に感想を書き込み、さらに絵を2枚描き上げる。
なかなかの傑作である。
記録として芳名録に添付しておこう。
翌日遅くなった墓参を終え、テンポラリーに顔を出す。
撤去・掃除・壁補修と後始末が続く。
明日は完全休憩、そして翌日は大野一雄の舞台を案内し石狩へ散策。
週末から次回展示西田卓司展会場設営である。


*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-16 15:51 | Comments(0)
2010年 08月 15日

風立つーハルニレの羽(4)

曇り日、風立つ。
唐牛幸史展も今日が最終日。
暑い日々が続く会期だった。
そして人も会場構成も熱い時間だった。
旧山下邸を主題に、4人それぞれが持ち主の命日7月27日を
起点に昨年から1年かけて、今や売却処分の対象となった
この和洋折衷の近代家屋とそこで生きた持ち主の記憶を記録し、
再生の願いを形象化した展覧会である。
綜合構成唐牛幸史、写真藤倉翼、竹本秀樹、映像横谷惠ニ。
それぞれの作家が会期中新たな出会い、経験を積み重ねある転換期も
経験しつつあったようにも思う。
会場空間もまた、新たな要素を加え賛否両論も併せつつ変化した。
これもここの時間空間の歴史と思える。
次週は、西田卓司展会場準備とお盆休みに入る。
少し休息し英気を養う積り。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-15 13:46 | Comments(0)
2010年 08月 14日

それぞれの帰去来ーハルニレの羽(3)

少しバテ気味で、奥の部屋でごろりとしていたら、お久し振りと声がかかり、
大塚軟膏くんが顔を出した。
大塚くんは今年東京の大学に入学したばかりで、自称文月悠光さんの
アッシーくんである。
東京の暑さで4,5キロ痩せたという。
そういえば、軟膏もチューブが草臥れて細目になったようだ。
最初に会った頃は色白でぷっくらしていたので、仇名をオロナイン軟膏から
大塚軟膏くんと私が付けたのだ。
昨日洞爺へ向かったOくんこと岡部健司くんが洞爺から帰ってくる。
岡部くんは、自分より若い世代の人にも興味があるという。
テンポラリーに集う人たちすべてに会いたいのだろう。
唐牛展最終日にも近付き、多くの人たちが出入りする中、帰省組も訪れ出す。
そこにひょっこりと京都で働いている橘内光則さんが顔を見せる。
今帰って来たという。
ドイツの谷口顕一郎さんと教育大同期の橘内さんは、京都のプラステイ
ック造型の会社に勤務しながら絵画もコツコツと継続している。
7年前ドイツへ旅立つ谷口さんと京都へ旅立つ橘内さんをふたり送る
夕べを旧テンポラリーで催した事があった。
それ以来帰省の時は必ず手土産持参で第一番に寄ってくれるのだ。
律儀な男である。
文月さんも見えて、それぞれを紹介する。
岡部くんは東京に帰る飛行機の時間が迫り、慌しく夕方千歳へと向かう。
3泊4日の初めての札幌・洞爺はH製作所入社2年目の彼に
如何なる経験をもたらしたのか。
渦巻く見聞をコアにするには、少し時間が必要と思う。

文月悠光さんが、現代詩手帖大野一雄追悼特集号に寄稿する
詩をゲラ刷りのままで見せてくれた。
短い詩ながら、秀作である。
たった一度「石狩の鼻曲がり」の映像を見ただけである。
それも彼女がこの世に生まれた年の舞台である。
しかしそうした時空を超えて、大野先生の舞踏は詩の言葉に甦る。

 あなたがかかとで
 地と口づけを交わすとき
 その背へ
 うちよせていくものがある
 生きやかな鱗を握りしめると
 雲が流れて、風が終った。

 ( しんだって
   おどるんでしょう)
   またあえますね
   /ここにいる。

まだ未発表の詩の一部をこうして引用するのには抵抗もあるけれど、
敢えて、この最終節の魂のリレーは書き留めておきたい。
来週私は帰省組の彼らを案内して、大野一雄の踊った石狩を
歩かねばならないから。
若い帰省組、訪問者がそれぞれに束の間に出会い別れた後、
旧山下邸の山下さんと唐牛さん、橘内さんの4人で閉廊後
山形の板蕎麦を食べに行く。
少し人疲れと寝不足気味の頭が、ビールとお蕎麦で緩んでいた。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-14 13:06 | Comments(0)
2010年 08月 13日

それぞれの羽・翼ーハルニレの羽(2)

逗留2日目、台風の影響で電車も止まり、Oくんは夕張行きを諦め、
前日見落とした北大第二農場モデルバーン見学とスープカレーを
食べに出かける。
昼頃から天気も回復し、晴れ間が広がる。
大阪での展示を終えたガラス作家高臣大介さんが、洞爺に帰る途中
こちらに寄ると言っていたのを思い出し、電話すると今こちらに向かっ
ているという答えがきた。
そうだ、高臣さんも千葉出身、Oくんも同じ千葉出身である。
紹介し洞爺へ行くといいなあと思う。
程なく高臣さんが到着、Oくんも帰って来て案の上ふたりは一瞬にして
同郷の話で盛り上がる。同じ千葉市内という事だ。
写真家の藤倉翼さんが、珍しく背広・ネクタイ姿で現れる。
聞くと今日これから彼女の両親に会う予定と言う。
緊張をを解すかのように床にごろりと寝て背筋を伸ばしている。
間もなく彼女さんも迎えに来て、そわそわと出かけた。
その後姿をみんなで冷やかしながら見送り、朗報を待つ事にした。
それから高足下駄の高臣大介とOくんも連れ立って、洞爺へ向かう。
今夜は2日ぶりに独り身に戻り、気が抜けそうだ。
夕刻友人のK氏が来て、閉廊後居酒屋ゆかりへ向かう。
店主の宇田川洋さんに、18日の集り、ベーマー会の事を報告、相談
しようと思っていたからだ。
居酒屋に着くと先客がいて、そのひとりは先日「緑の運河エルムゾーン」
説明の時議長役でいらしたS氏だった。
なかなか突っ込みの鋭い人で、大分丁丁発止と気持ち的に構えた相手
である。
この日は穏やかな感じで、昆布焼酎を奢ってくれた。
親分の盃ですねと、おどけてありがたく戴く。
宇田川さんの所に集る猛者連中とも、これで大分馴れてきた気がした。
いいお酒を飲んで、夜半まえ帰宅。
Oくんの荷物を整理し今日帰京の彼に渡す準備をした。
唐牛展もあと二日。
2階のえん麦と牧草も大分伸びて、下を向き寝そべっている。
今日からお盆。そしてムラギシの命日だな。
今回の展示のタイトル「REPUBLIC」のように、ここを訪れた人もまた
新たな人生の展開・再生の途上にある。
死者もまた、物言わずに生者の心の内にそのようにある。
それぞれの心の羽・翼は、何処へと飛んでゆくのか。
この空間が心の森のように繁れば、それで良いさ。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)
*昆テンポラリー展ー10月12日(火)-24日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-13 11:56 | Comments(0)
2010年 08月 12日

ベーマー会ーハルニレの羽(1)

エルム(ハルニレ)の果には、円盤状の羽がある。
この羽で種子が飛ぶ。
樹木図鑑でこの羽を確かめながら、そのように生きる事を思った。
札幌・緑の運河エルムゾーンを守ろう、と呼びかけて
K氏から連絡が来る。
ベーマー会の会長さんから、熱いエールが届いていると。
ベーマー会とは、明治9年に札幌に入ったルイス・ベーマーを
称える会の事である。
津軽海峡を挟んで、植生の違いを指摘した事で有名なブラキストンラインの
ブラキストンは、ベーマーについて次のように評価している。
「庭園、ホップ園、ブドウ園で実証されたように、札幌でベーマー氏の監督下で
行われた諸事業がかくも完璧に達成されたことは、同氏の園芸家としての
評価を確立するに充分である。」(「蝦夷地の中の日本」明治15年・1883年
刊)。
リンゴの苗木の輸入、ホップやブトウの培養増殖、さらには豊平館、清華亭、
赤レンガの道庁敷地等の庭設計は、このベーマーによるものといわれ
ている。開拓使時代の麦酒生産の村橋久成や中川清兵衛の功績も
このベーマーの存在を抜きに今では考えられないとされている。
この多方面にわたるベーマーの功績を発掘し、再評価をすすめている
のが、ベーマー会なのだ。
今回「札幌・緑の運河エルムゾーンを守ろう」の呼びかけに対し、
清華亭の庭を設計したベーマー会の立場から賛同の意志表示を示して
くれたと思える。
そしてこのエールは、ベーマー設計の清華亭庭に立つ一本のエルムの
巨樹の果の羽のように、私たちの志の種子が羽を得て飛んでいった
結果なのかもしれない。
エルムゾーン・緑の運河運動は、さらなる新たな歴史の発掘と広がりを
得つつ展開していく。


*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-12 12:59 | Comments(0)
2010年 08月 11日

三度目の出会いー森の記憶(30)

昨年2月沖縄で知りあったOくんが、一日早く到着。
昨年12月目黒美術館で再会以来3度目である。
初めての札幌昨夜は私の家に泊まり、今朝大通り公園のイサムノグチ
ブラックマントラから、植物園ー伊藤邸ー清華亭ー北大構内を歩き回る予定。
今日は小雨模様で、昨日に比べ涼しく歩くには最適である。
昨夜は彼の近況を聞く。
H製作所での仕事内容や、人間関係、K大学時代の話等である。
沖縄の美術家豊平ヨシオさんの鮮烈な作品力を抜きに、この若い友人との
出会いもなかった。
まだたったの3度目なのに、もう多分彼の人生の半分以上を理解している。
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守ろう」署名簿に早速署名を貰う。
さらに資料と話だけでなく、実際に今日は歩いてもらう。
地図を渡し、一人で歩きまわってもらう事にした。
これも小さな旅である。
歴史と自然を今の時間から、垂直に触れる。
今週以降は帰省組や訪問組が次々ここを訪れ忙しくなりそうだ。

宇田川洋さんから山水会会合の知らせが来る。
「札幌緑の運河エルムゾーンを守る会」その後の展開打ち合わせ。
しかしこの日は石狩歩行の日。
夜出席できるかどうか、微妙である。
いっそ歩行のメンバー全員と参加しようか。
私にとっては、水戸黄門のような宇田川洋さんの存在である。
市井の居酒屋店主、その実は東大名誉教授。
札幌生れの頼もしい存在である。

明日Oくんは夕張へ行きたいというので、夕張美術館の友人に連絡。
ところがストレスで手術入院したという。
もうひとりの退職したUさんに連絡。
彼も今生活が大変らしい。
電話で話すと快く引き受けてくれた。
ブログは愛読しているといわれ、恐縮する。
どこで誰が読んでいるのか、駄文を恥じつつ緊張する。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-11 10:58 | Comments(0)
2010年 08月 10日

3週目にー森の記憶(29)

唐牛幸史展も3週目に入る。
2週目最後の日曜日、藤倉翼さん、久野志乃さん、泉さんほかが集り、
会場でお酒を飲む。
その前に東京在住で北大出身のAくん夫妻が、2度目の来廊で
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の署名簿をコピーし
東京でも署名を集めると意気込んでくれる。
奥さまは京都の出身で、3歳の女の子を抱きながら、当然よと
旦那ともども頼もしい。
夕刻から外の縁台に涼みながらたむろし、暗くなってからは
会場の床に寝そべり話し込む。
灯りを落とし、床から立ち上がる廃材の柱の周りに集り、見上げる。
唐牛さんと藤倉さんは女性論に熱が入る。
唐牛さんは、別れた奥さんとの記憶が甦ったのか熱い口調である。
会場の作品群が、こんなどうしようもない話を柔らかく包んで、
普段話せないことを引き出して、心の膿を吸い取ってくれるようだ。
女性たちは思い当たる事を頷きながら、相槌と同意の声を出す。
私は途中から奥で少し眠る。
男たちの恨み言に付き合ってもいられない。

日常にアートを、とかいうイヴェントもよくある話だが、
日常にアートというのは正確ではない。
アートが日常を創り出すのだ。
さらにいえば、ファインアートのファインな部分が、
非日常を日常化するのだ。
一見ぐたぐたと恨み事を思い出し語っているようだが、
普段は多分心の奥深く仕舞い込まれたトラウマの話である。
その用心深く閉ざされたトラウマの扉が開いているのだ。
お酒だけの所為ではない。
作品空間がそうさせてもいる。
そうでなければ、この日初めて出会った異性ふたりの前で
こんな話は出来ないのが普通である。
普段秘められた心が開いて膿を出している。
これが非日常の日常化というものである。
大酒を飲んだわけでもない。気持ちが緩やかに流れていた時間である。
午後10時にはお開きとなって、藤倉さんは迎えに来た彼女の車で
帰った。
唐牛さんはさらにここでひと眠りして車で帰ると残る。
私は自転車で夜道を走った。

作品に囲まれた空間でゆるりと横になり酒を飲み、話し込むのは
至福の時間である。
その時間は日常ではなく、非日常に属するファインな時間である。
これは決して日常にアートをなどという洒落た時間ではないのだ。
作品が創り得るファインな非日常である。
第二週目の最後の日、いい時間が流れた。
私も含めてもてず、冴えない男たちの愚痴に付き合ってくれた
久野さん、泉さんありがとう。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)ー10月3日(日)
*昆テンポラリー展ー10月12日(火)-24日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-10 11:23 | Comments(2)
2010年 08月 08日

熱帯夜ー森の記憶(28)

熱帯夜などという言葉は遠くの事と思っていたが、現実になる。
昨日は前夜の眠りが妨げられ、バテた。
夏バテなど余りないのだが、このところの湿度と寝苦しさには疲労。
道外の事を思えばだらしない話だが、体には馴れというものがある。
その他いろいろな事も重なれば、疲れも溜まる。
身体を動かしてかく汗でなく、じんわり、むっつりと汗ばむのは嫌だな。
夕方雷とともに、一気に大粒の雨が降る。
空気が流れ、攪拌され、涼やかな気が漂う。
夏バテ親爺も少し元気になった。
東京のO君から電話が入る。
11日札幌へ電車で行く。13日まで滞在との事。
O君とは昨年2月沖縄で知り合い、昨年末目黒美術館で再会。
今度で3度目の出会いとなる。
沖縄・豊平ヨシオさんの作品を媒介として深く交流した若い友人だ。
昨年春K大学を卒業しH製作所入社の彼と、年齢も違い環境も違う
我々が友情を深めるのには、豊平さんの作品力が大きい。
初めての札幌で、若く感受性の濃い彼は如何なる感想を抱くだろうか。
札幌緑の運河・エルムゾーンを、先ずは近況報告を兼ね案内しなければ
と思っている。
京都のIさん、東京の文月さん、軟膏くんと帰省組が来週以降キラキラと
訪ねて来るだろう。
そうそう夏バテなぞしてもいられないのだ。

唐牛展2週目も今日で終わり。
2階のえん麦の草も長くしな垂れて、暑さに耐えているかのようだ。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)ー9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-08 11:57 | Comments(0)
2010年 08月 07日

草伸びるー森の記憶(27)

2階南側回廊に植えたえん麦と牧草の種子が芽を吹き、
もう大分草丈を伸ばしてきている。
黒土に緑の草が西側の光の窓口に向かって伸びている様子は、
健気である。
その草土と共に置かれた土の赤子の塑像と下から立ち上がる柱の上に
置かれた赤子像は、最も唐牛幸史の世界が顕われている空間である。
一方1階は、正面1・8m×1・5mの大きな鏡面マットの藤倉翼写真作品
2点が空間に大きな比重を占めており、迫力がある。
モニター画面の横谷惠ニさんの全方向映像とともに、1階は
旧山下邸の記録が前面に出ている。
昨日は夕方までここの会場記録を、横谷さん、藤倉さんが撮影していた。
藤倉さんは毎回この会場に来るのが、嬉しそうである。
唐牛さんの構成力と自分の出来得る最大限の写真の合体。
このふたつが重なって、毎回新たな発見があるからである。
自分の写真であって、もう自分の写真ではない。
サッカーボールに例えれば、ボールはすでにキックされ放たれている。
そのボールが来る度に新たな方向から自らにパスされてくる。
そんな感じを抱いている。
作家によっては愛しい自分の作品を抱きしめ続け、チェックに余念のない
タイプもいるようだが、これはExhibitionというより、Inhibitionに近い。
ExがInに変わるだけだが、意味は正反対である。
封印・封鎖・タブーのInとなる。
作品がボールのように解き放たれる事はない。
旧山下邸の持ち主を悼み、死者の祥月命日からお盆まで続くこの展覧会
をある意味象徴するのは、この2階に設定された黒土と草のインスタレーシ
ヨンである。
種子を蒔くことから始まり、日々種子から草へと変化してゆく過程が
命への祈りと再生を意味していると思うからだ。
3人の作家による旧山下邸映像記録を再構成し、会場全体として
ひとつの空間を構築した唐牛幸史の力業は、凡百のグループ展とは違い、
きちっとした主題性を保っている。
つまりは、<×1>が明白なのである。
旧山下邸という現実に在った和洋折衷の民家とその持ち主を通して、
札幌という都市が保っていた近代の正統な民の系譜を、きちっとそこで
自らの生き方、来し方も含めて見て取る視軸が基底としてあるからである。
一点一点の作品にもたれかかる甘えがそこにはない。
藤倉翼の作品が、自由に空間にはばたき、作家自身が寛げるのは多分に
そうした共有する原則の存在があるからと思う。
こうしてこの空間は、それぞれのtemporaryが、主題というconを創出しつつ
ささやかだけれども、確かな<Conーtemporary>を表出しつつある。
あと一週間の猛暑の夏日。
来週からは帰省組、訪問組が東京、沖縄等からきらきらと訪れるだろう。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-07 12:20 | Comments(0)