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2008年 07月 09日

夏の汗ー夏の年(sak-pa)(32)

村岸くんを運んで来たような千葉先生が帰った後、食事に出て帰ると、短大1年
のMさんが来ていた。窓際の椅子に腰おろし、テーブルの高さに設置された作品
を撫でている。午後の光が、表面の渦紋を水面のように、柔らかく浮き上がらせて
いた。彫刻を間にして、作家とMさんの会話が続いている。
他の人が来たのを契機に、Mさんが奥に来て話す。
今日は暑くて、自転車で来て、汗をかいていたので、気にしていたが、ここはそん
な事を気にしないで、アスレチックセンターのようだと言う。
うん?アスレチックセンター?その意味を聞いていくうち、段々に意味が明瞭にな
ってきた。汗をかいて汗臭いと、室内なら嫌がられるかも知れない。しかし、ここで
は、そんな事を何も気にしないで自然でいられる、そんな空間だったという意味だ
った。彫刻された木たちが、水面のような渦紋を浮かべ、光と戯れている。
当たり前に、光も風も人も、触れ合っている。直に作品に触れ、会話が弾む。
外の熱さを遮断する内の冷たさ、傲慢さは何もない。だから、暑くて汗をかいた自
分を蔑むものは、ここには無かったのだ。暑いから、暑いと自然な汗を拒むものが
ない、その事を多感な20歳前の感性が感受していたのだ。女の子ならではの、敏
感な感性である。まだまだ花より団子で、目の前のお菓子をバクバク食べながらも
、作品については、真っ直ぐにその在り様を見てくれている。そう思え嬉しかった。
細井さんも同じ気持ちだったらしく、夕飯を初日オープニングだよと言って、奢って
くれたのだ。一日猫が背伸びするように、Mさんがいて、初日の賑やかな時間がゆ
ったりと過ぎた。ひとり細井さんは興奮して、今日は昂ぶって知恵熱を出しそうと言
った。この人は<知恵熱>などと平気で言う、万年少年かも知れない。

*細井護展「水が風景をつくる」-13日(日)まで。am11時ーpm7時
 :12日(土)午後7時~坪井圭子朗読・星野道夫「森へ」入場無料
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)-8月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-09 11:12 | Comments(0)
2008年 07月 08日

触れる彫刻ー夏の年(sak-pa)(31)

坪井圭子さんの12日夕の朗読、星野道夫「森へ」と決まる。たくさんの不思議と
いう児童向けのシリーズの本のひとつと言う。
細井さんが、浦河に置いてあった作品を3点あらたに今朝運んで来る。
またひとつ、空間が豊饒になった気がする。
朗読会の時には床にゴロゴロ置いて、自由に触ってもらいたいと言う。
人と人とのあいだ、そこに彫刻が在る。その関係性が細井さんの理想である。

 <・・・魂の対話に寄り添い、秘められた入り口をそっと開くことができる>

触れる存在としての彫刻。触れることで何かが開く。
光も触れる、風も触れる、匂いも触れる、手も触れる、そして眼が触れる。
touch with eye、 smell with hands、taste with nose・・。
五感のすべての基底には、触れるがある。五感を部分だけの隘路から解放する
こと。部分の増幅から、全身の感覚に、身体にもう一度還元すること。その時触
れる行為が、様々な感覚を呼び覚ます。眼が味わい、手が舌にもなる。
人が人らしく一になる。一は一個の×存在となって、外在する他と感覚を通して
触れ得る新鮮なタッチとなる。境が活き活きと接する存在となるからだ。
境が活き活きとする、その身体回路装置のように彫刻がある。
眼だけに固定された作品。そういう教えを乞うように設定された空間を、彼は拒否
しているかに思える。パブリックという言葉の本来の回路を、作品は純粋に有して
いるものである。それが、芸術の本質にはある。
巷間でいうパブリックアートとは、似て非なるものである。公共事業(パブリックワ
ーク)の一環のアートではないのだ。
会期中の作品を通した人と人の出会いが、その本来の公共を証明する事だろう。

初日の今日、下で盛んに語る声がする。時に村岸君という言葉が聞えた。
降りて行くと、その人から声がかかった。村岸宏昭さんの北大の先生だと言う。
千葉恵先生だった。細井さんの作品が、村岸さんの個展を思い出させると言う。
そうか、「木は水を運んでいる」ー「水が風景をつくる」。
木の幹に耳をあて、川の水音に耳を澄ます。耳に触れる彫刻。
手に触れる水紋の彫刻、・・・この偶然を想った。
千葉先生は盛んに作品の木の肌に触れながら、語るのだ。
村岸くんに見せたかった、彼がいたら、どんな演奏をしただろうか。
ふっと気付き、遺作「銭函から星置へ」を流す。
細井さんが眼を円くする。千葉先生が言う。”これがまた遭うねえ!”
そういえば、一昨年の正に今の時期7月が、村岸宏昭最後の個展の時だったの
だ。何故初対面の千葉先生が、今日此処に来ているのか。
そうか、村岸が来ている!
そう思った。原稿催促だなあこりゃあ。遺作集を出版するかりん舎の坪井さんと細
井さんの出会いといい、、不思議である。
細井さんが言った。”ギヤラリーっていいですねえ!”
村岸くん、ありがとう!

*細井護展「水が風景をつくる」-13日(日)まで。am11時ーpm7時
 :坪井圭子朗読「森へー星野道夫」-7月12日(土)午後7時~入場無料
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)-8月3日(日)
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月9日(土)-17日(日)
*森万喜子展ー8月19日(日)-31日(日)
*gla_gal展ー9月2日(火)-7日(日)
*新明史子展ー9月16日(火)-21日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 

  

by kakiten | 2008-07-08 12:07 | Comments(2)
2008年 07月 06日

熟れる夏ー夏の年(sak-pa)(30)

気温と湿度が上昇している。盛夏である。
予定を早めて展示中の細井護展に、人が絶えない。別の用事で来た人もゆっく
りと見ていく。かりん舎の坪井圭子さんと高橋淑子さんが来る。優れて誠実な出
版を続けているふたりである。「大野一雄石狩河口公演記録集」を出版してくれた
人たちでもある。また、坪井さんは、毎月朗読会をもう、百回以上も続けている朗
読家でもある。細井さんと話していて、細井さんが星野道夫が好きだといったので
、坪井さんが、何回か前のスペースで星野さんの作品を朗読していたのを思い出
した。その話がきっかけとなって、最終日前日の土曜日12日に、坪井さんの朗読
会を展示会場でする事になる。今からわくわくと、細井さんが少年のように眼を輝
かして笑う。いい出会いと思う。
以前備前焼の作家の展覧会を手伝ってくれた陶芸の中島知之さんが、細井さん
の親友で、昼からびっちりと会場にいる。搬入と展示も手伝ってくれた彼は、前の
スペースにもふらりと来て、なんということなく話し込んだりした人である。その彼と
細井さんの縁でこうしてまた、会えるのが嬉しかった。不思議な繋がりを感じる。
個展という場は、作品が主役ではあるが、同時に人と人が出会う場でもある。作品
が媒介として介在するから、より純粋な人間関係ともなる。作品という、同じ方向を
ともに見詰め合う事になるからだ。星の王子さまの愛にも似ている。
告知通りの来週からはまた、細井さんの関係の人、ここに親しい人と、人の新たな
交錯が豊かに続くだろう。
明日は定休日、休廊で少し暑さバテに備え、休養する積り。

*細井護展「水が風景をつくる」-13日(日)まで。am11時ーpm7時(月曜休廊
 ):坪井圭子朗読の夕ー7月12日(土)午後7時~入場無料。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-06 11:38 | Comments(0)
2008年 07月 05日

光・木目・波紋ー夏の年(sak-pa)(29)

洞爺サミットの所為か、警察車両が多い。エルムトンネルの西側入り口付近にも
警官がいる。先日来たHさんが、発寒駅周辺をママチャリでうろうろしていたら、
尋問されたと言って怒っていた。大きめの鍔広い帽子を被った中年の男は、見よ
うによっては怪し気で、自転車泥棒ぽい。俺は教師だ、泥棒を捕まえたこともある
、と息巻いて話したと言う。これはサミットに関係なく、単純に怪しかったからだろ
う。
もうすぐ、陶芸界の巨人鯉江良二さんも来る。フォークソングの及川恒平さん、現
代詩の吉増剛造さんと、こちらもテンポラリーサミットである。
暑い気温が続くなか、細井護さんの展示が終る。木目に浮かぶ波紋のような彫り
が、陽光に柔らかな陰影を刻む。光は雲の影で、瞬時に変化する。
翳りは柔らかく、全体を包む。こんなに彫りのデティールが見えるとは思わなかっ
たと、細井さんが驚いている。ネパールの陽光は強烈でデティールが消えると言う
。陽射しが真上から強く落ちてきて、コントラストが明確なのだ。だから、それに負
けないように、強弱を強く保たないと作品がぼんやりしてしまうという。逆にその作
品を日本で見たとき、大雑把に見えて彫り直したとも言った。
光が違う。すると、見え方も違う。かって聞いたお月さまの事を、思い出していた。
ヨーロッパで見た月は、空気が乾燥している所為か、ギラッと刃物のように見えた
という。そこを魔女が飛ぶのは解る気がしたというのだ。日本は湿度があるので、
朧月(おぼろつき)夜になる。潤んで見える。これも、光の違いである。
人間の目に映る風景は、光が創る光景なのだ。風と光、そして風土。その固有の
光を、グローバル化という名の蛍光灯で、喪失しつつありはしないか。
木を素材に、木と語らい、固有の光に触れて、細井さんは自らの原風景を探り、触
れつつあると思う。木を素材としながらも、彼は光の景色の作家でもある。
木に触れる光が、光の波紋のように彩めくのだ。テーブルのように、椅子に座って
見るように展示された作品が、その意図を一番よく表わしている。
見る者は椅子に座り、手で触れ、眼は光が触れてできる陰影を、眼で撫でるように
感受する。流れるように彫り込まれた水紋が、光と戯れているかのようだ。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月5日(土)-13日(日)am11時ーpm7時
 月曜定休・休廊:坪井圭子朗読ー12日(土)午後7時~入場料無料
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)-am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)-8月3日(日)
*及川恒平ソロライブ「resongs vol7」ー8月5日(火)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月9日(土)-17日(日)
*森万喜子展ー8月19日(火)-31日(日)
*gla_gal展ー9月2日(火)-13日(土)
*新明史子展ー9月16日(火)-21日(日) 

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-05 13:52 | Comments(2)
2008年 07月 04日

細井護展展示始まるー夏の年(sak-pa)(28)

函館・茅部から細井護さんが、作品をどんと積んで到着する。
柔らかな木の彫刻である。波紋のように表面が、揺れている。運ぶ時手伝って
驚いた。重いのである。百キロはあると言う。外柔内剛、この人も外見は優しげ
で少年のようだが、芯はきっと剛である。吉増剛造さんもそうだが、こういう人は
、実はしなやかにして剛なのだ。今日一日展示をして、明日から早めに公開す
るという。DM・フライヤーでは来週火曜日からだが、早く見せたいと言う。
雨の予報が、晴れて日が射す。
横浜・大野慶人さんから電話来る。昨日吉増さんのこと伝えたくて電話したが留
守だったのだ。昨夜帰ってから電話したが、今度は私がいなくて今朝あらためて
電話をしたという。吉増剛造さんの益々のパワーアップの話をすると、勇気付け
られますねと、喜んでくれる。郡司正勝先生の大野慶人さんへの遺作「ドリアング
レイ最後の肖像」は、是非さっぽろで公演を実現させたいと話す。久し振りに話せ
て嬉しかった。大野一雄石狩河口来札公演ー吉増剛造「石狩シーツ」この2巨人
の波及は、今も少しも古びていない。あらためてまた、新たな光を放っている。
私と慶人さんがこうして、親しくふっと思いついて電話で話せるのもその影響下に
ある。尽きせぬ泉のように、さっぽろ・イシカリがあるのだ。
「水が風景をつくる」-細井護さんの湖をイメージするという今回の作品は、その基
底においてまた何かこの場を豊かな水辺にしてくれるだろう。そんな予感がした。
陽射しが木の彫刻を優しくタッチしている。木の表面の水の波紋が、光の波紋と交
錯する。自然光は移ろい、強制しない。あまねく注ぐ光の中で、作品展が形作られ
ていく。明日以降が楽しみだ。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月5日(土)-13日(日)am11時ーpm7時
 月曜休廊:従来の告知より早めて展示致します。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
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by kakiten | 2008-07-04 13:41 | Comments(0)
2008年 07月 03日

gozoCineー夏の年(sak-pa)(27)

展示前の何もない日。暑さに少しぼんやりしながら、夕方の陽射し濃い午後だっ
た。入り口で声がした。急いで下に降りると、吉増剛造さんがひとりいた。今夕は
北大遠友学舎で講演がある。その前に少し抜け出して来たと言う。
とりあえず奥に入って頂き、話し込む。今日で今回の展覧会の前半の講演は終わ
り、明日一旦東京へ帰るという。6月27日のレセプシヨンから6日間連続の鼎談
・対談・上映である。近代美術館に始まり、道立文学館・北大とすざましい日程だ
。この後来札は、8月8日から30日の間になる。合計12回の集中である。
私は最初のレセプシヨンしか出ていなかったので、今晩の北大遠友学舎の会に
は近くでもあるので出ようかなと思っていた。昨夜工藤正廣氏から電話があり、
この日は文学館で工藤氏と吉増さんの対話だったから、今にして思えば、来い
という合図の電話だったと、吉増さんの話を聞いて気付いた。
長編詩「石狩シーツ」をめぐって、工藤氏が爆弾を仕掛けたというのだ。
その解釈が、きっと従来にないもので、その事に吉増さんは驚き、大いに喜んで
いるかのようだった。工藤正廣氏が、本命の極に触れたのである。
さっぽろ・イシカリで創られたこの詩を、北海道文学館主催の吉増剛造展は、フラ
イヤーにこそ記載しているが正面から展示の主軸に設定はしていない。チラシの
呼び込み、枕詞的には使用しているが、主軸のひとつに正面から向き合ってはい
ないのだ。柳田国男・折口信夫等が主となる映像とトークがこの日予定されていて
、またもや、津軽・黒石人工藤正廣と奥多摩人吉増剛造の民俗学的話に口をあけ
て拝聴という構図を感じていたので、出席する意欲が失せていたのだ。
ところが実際は、「石狩シーツ」論で白熱したようで、私の思い込みの怠惰さを知る
結果となった。昨日のその出来事を伝えたくて、ひとり吉増さんは訪ねて来たのだ
。8月また再来札の折、I書店の樋口良澄氏も来るので、その時3人で会おうと言っ
て吉増さんは会場に向かった。
午後6時半過ぎ、私も会場に行く。40人程だろうか、狭い会場には熱気が篭もっ
ている。岩手大学の野坂幸弘さんとともに対話と映像が始まった。
映像は泉鏡花をモチーフにした手作り映像である。残像を利用した多重露光のよ
うな、吉増剛造独特の世界が広がる。
ぶっ飛んだ、凄い!現実の風景の中に手を突っ込み、護符のように鏡花の写真
を持って、炎の中を突き進んで行く。まるで真言密教の行者のような、阿修羅の
吉増剛造である。ヴィデオカメラが風景を切り裂き、声が音霊(おとたま)となって
、カメラの周囲の音も惹き寄せ、一体となり視覚となる。天才は、もうここまで来た
のか。この前4回に出席しなかった自分の不明を思った。
全力投球の熱球は最後まで続き、最後の司会者の固着した観念的挨拶を、ぶっ
飛ばす勢いで続いたのだ。全部の会に出席しているという河田雅文さんと帰り際
顔を合わせ、思わずふたりですっげえ~と呟いて別れた。
あらゆる現実の区別・差別・分断を、想像力の映像・音声世界で超えていく。
その必死の全力疾走は、処女詩集「黄金詩篇」以来少しも衰えてはいない。いや、
それ以上にパワーを増しているのだ。最新の映像機器は、見事な絵筆・ペンとも
なっている。11月に映像による初個展を目指す河田さんにとっても、どれだけ勇気
づけられ、励みになった事だろうか。美術・文学という領域を軽々と超え、今を生き
る表現としか、今いうべき言葉は、見当たらない。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月8日(火)-13日(日)
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)ー8月3日(日)
*及川恒平ソロライブ「resongs vol7」-8月5日(火)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月9日(金)-17日(日)
*森万喜子展ー8月19日(火)-31日(日)
*gla_gla展ー9月2日(火)-13日(土)
*新明史子展ー9月16日(火)-21日(日)
*梅田正則展ー10月1日(水)-7日(火)
*阿部守展ー10月9日(木)-19日(日)
*中岡りえ展ー10月22日(水)-29日(火)
*河田雅文展ー11月1日(土)-16日(日)
*中嶋幸治×國枝絵美展ー11月18日(火)-30日(日)

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by kakiten | 2008-07-03 12:56 | Comments(0)
2008年 07月 02日

深い夏・夏の夢ー夏の年(sak-pa)(26)

黒酢カプセルが、お便りとともに届いた。

ー古い案内のハガキに吉増剛造とMS・レスリーのメモが同時に現れました。
  こんな時からサッポロに紹介をーと、一瞬手を止めて考えていました。-

尊敬する美術評論家Kさんからの文面である。
体を心配して、時々こうして差し入れをしてくれる。私、佐佐木方斎さん、花田和
治さんの3人に、2年前の佐佐木方斎展以来、心を留めてくれるのだ。
その佐佐木さんから昨日電話が来た。「格子群」「余剰群」「自由群」の3部作を
近々持参すると言う。本人の手元にももう無くなっていたものが、揃ったという。
Kさんが教えてくれた<あいだ>の英訳、marginalこそ、余剰とも解せるので
ある。
夏7月、村岸宏昭さんの個展「木は水を運んでいる」は、始まる前だった。
その後に、初の佐佐木方斎展を開いたのだ。2年前の事である。
今日のような暑い夏だった。あの時若冠22歳の若者は、円山川源流域に行き白
樺の倒木を作品に使う事で、頭が一杯だったに違いない。一方佐佐木さんは、ベ
ットに寝たきりで、明日をも知れずと思っていたのだ。
深い夏、2年後の今、22歳の青年はもうこの世には居ない。
そしてベットの病者が、元気に作品を運んで来る。
Kさんの手元に現れた古いハガキと同じように、ふっと私の脳裏にも、2年前の記
憶が、古いハガキのように現れる。
ついに一度も会うことのなかったふたりだが、私のなかには同時代の優れた友人
として、今も同時に存在する深い夏なのだ。
深い夏、夏の夢、人との出会いは、いつも物語を孕んでいる。
別れもまた、新たな物語の始まりである。死者一般はない。
状況を醜聞化したり、聖化したりする俗に、固有の物語は訪れないだろう。
深い夏、夏の夢もまた消える。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月8日(火)-13日(日)
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)-8月3日(日)
*及川恒平ソロライブ「resongs Ⅶ」-8月5日(火)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月7日(木)-17日(日)
*森万喜子展ー8月19日(火)-31日(日)

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by kakiten | 2008-07-02 15:39 | Comments(0)
2008年 07月 01日

再びランドということー夏の年(sak-pa)(25)

北海道在住とか、出身とかいうのでなく、東京出身の詩人を北海道立文学館で、
展覧会をする事は大きな改革なのだと、某氏は胸を張るようにレセプシヨンの合
間に私に語った。以前寺山修司展も大規模に開かれたのを知っていたので、彼
の思うほどそうは思わなかったのが事実だ。そんなところに寺山修司も吉増剛造
もいやしない。かって北海道文学というと、戦争時疎開して一時来たとか、旅した
とかそのちょっとした事も、有名作家であれば北海道の範疇に入れて編集した文
学全集もある。固定した不動産のように北海道がある。その上で和人の歴史の
薄さを劣等感の裏返しとして滲ませていた。そんな時代はもう終っている。だから
、もっとコンテンポラリーな位相で北海道を時代に位置付けるのは、当然なのだ。
その旧北海道と今の中間に宙ぶらりんの位置付けしかなされていないから、妙な
自慢話にもなるのだ。ラデイカル(基底的な)な北海道を奪取しなければならない。
その前に先ず、自らの生きている場を確実に凝視し開く行為が必要なのだ。
さっぽろとは何か、イシカリとは何か。そこを消去して北海道もない。
小さな館内の問題ではない。中島公園とは何か、中の島とどう関わるか。
何故、神社が3っも集中しているのか。天皇系の道が二つも何故その界隈にある
のか。その前の自然とどう向き合うのか。北海道立文学館の立地状況だけでも、
さっぽろは深まり、広がる。

<僕は、60年間、大基地のフラットな、あのフラットな大基地に呪縛されてきた>

故郷に横たわる横田基地への吉増さんの視線は、そのまま明治の札幌という都市
、国内開拓基地としての札幌にも当て嵌まる視線である。
ーフラットな、あのフラットなー直線の方形の街。
ーその下に何かがある、何かを想像することさえ出来なかった。-
札幌という大都市の下に何ががあることさえ想像すらしないで、どうして石狩を、さ
っぽろから吉増剛造を語れるのか。吉増さんだけの問題ではない。
サッポロから文化の発信などと楽天的に語るすべての位相の問題である。
ブランドテナントを呼んで埋め立てる経済消費構造と同様の文化構造に、真の北
海道も、さっぽろもない。偏狭ナシヨナリズムか、迎合ナシヨナリズム、そのどちら
にも主軸はない。

<近代、あるいは近世という北海道のヴェールを取ってしまえば、北海道は根の
 国じゃねえか?>

フラットな造られた開拓基地としての札幌の呪縛を透視する、同時代の眼線を共有
しないでなんの寺山修司、吉増剛造かと思うのだ。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月8日(火)-13日(日)am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-01 13:43 | Comments(0)