2008年 12月 09日
Sくんと彼の車で石狩高岡へ行く。以前から気になっていた地域だ。 昭和33年の地質図に石狩油田の記号が沢山ある。 厚田油田はウエン浜ですでに歩いているから、この奥の春別油田地域を一度見 ておきたかった。 Sくんはすでにそこを見聞していたので、彼の案内で廻る。 途中八幡墓地に寄る。江別・対雁に強制移住された樺太アイヌの終焉地。 和人のお墓の下に眠っていたアイヌの人達の埋葬場所である。 何年か前に発掘され慰霊碑が建てられた。その頃偶然賀村順治夫妻たちとそ こを歩いていた。発掘の最中であった。墓地に寄る前、旧八幡神社に立ち寄る。 以前英国の美術家ロジャー・アックリングが望来で滞在制作をした時、ここに寄 って深く心を動かされていた場所である。明治のある時期魂抜きをされ、対岸の 石狩役場のある方に移転した後、残された場所である。八幡稲荷神社と名を変 え雪に赤い鳥居が続いている。そこから墓地へ入り慰霊碑を探す。私が見た時 はまだ木標が立っていただけだったが、今は立派な石碑となって墓地の奥にあ った。以前来た時は夏だったので風景が違う。この日は吹きさらしのスカスカの 薄い台地の隅という感じだ。Sくんはここが初めてで熱心に碑文を読んでいる。 その後大曲から石狩高岡へ向かう。風景は一転して里の趣きが漂う。途中高岡 神社の前に立つ。向かいに牛馬観音の石碑がある。馬頭観音は多いが、牛と一 緒のものは数少ない。知津狩の中川潤さんの家近くの一基しか他に知らない。 素朴な石の佇まいがいい。そこからさらに奥へ向かい、五の沢に入る。ますます 里の趣きが濃い。小学校の廃校がある。きっとこの辺もかっては人が多くいたの だろう。Sくんが近隣の人に聞いた話だと石油の送油官がここにきて多勢の人が 石油発掘の仕事をしていたと言う。傍ら農業・牧畜も盛んだったのではないだろう か。五の沢の手前は丘陵地帯でそんな感じが漂っている。牛が馬と同じく祭られ るのはその所為と思える。多くの油田のあった地帯へは途中鎖が張られ雪も多く 入るのを諦める。その後正利冠を抜け望来に到る。この内陸のルートで望来に来 たのは初めてである。いつもは海岸の道からだったので、新鮮である。 望洋荘で遅い昼食をとる。ホッケ定食が美味かった。 帰路対岸の旧石狩役場前に寄る。雪で道は不鮮明だったがここは曲線の路にな っていてシャワー通りと名付けられているらしい。パルコの裏通と同じだ。 自然の曲線が豊富なこの場所で何をテーマパークみたいな事をするのだろう。 立派な建物が並び、書き割りの舞台のようである。石狩高岡や五の沢の里の趣 きの方が余程雄弁である。風景に厚味がある。整理整頓された風景には時間の 保水力がない。整形された嘘が風景を薄くする。大体シャワー通りとは何か。 保水力の不足を補うシャワーかよ。ここには地・ランドがない。標本化されたパサ パサの感性が都会の化粧を塗っているだけだ。 本来の大地は対岸に存する。海沿いの道、内陸への道。そこに時間が蓄積され 初冬の灰色の天地に息づいている。夏はゴルフ場がひしめく所と聞くが、冬の風 景は雪が本来の地形を梱包し、変容した大地を彷彿と甦らせてくれるのだ。 海から陸へと伸びる石狩の国への視座を感受した日だった。 *斎藤沙貴展ー12月16日(火)-21日(日) *2009年へのプレビュー展ー12月18日(火)-28日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2008-12-09 13:35
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