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テンポラリー通信

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2008年 11月 27日

一点を穿つーNovember steps(21)

凍てついた路面を嫌い、作夜自転車は置いて帰る。
朝歩く。裏参道旧メルパルク前の広場が消え、今商業ビルが建設中。
敷地を目一杯使って巨大な建物が建つ。
もうどこからも、わが奥三角が見えない。
友人の樹の正面にもコンクリートの電柱が立ち、目を遮る。
内部に人を取り込む為の巨大な装置が、風景を消す。
商品のカラフルな坩堝が出来る。
人を吸収して街が成り立つ。

  そこに立って四方を眺め渡すと地相の趣意が一気に析出し、
  風景として結晶する。ー中村良夫「風景学実践篇」

またひとつ、円山の<風景の結晶>が喪われる。
道を外れ、ある一点に立つ。その角度にだけ奥三角山が、姿を見せる。
マイラブ・・。
その山裾に、大正生れの父の夢、母の解放があったのだ。
明治の祖父の街が壊れ、そこが住いとなった昭和の後半。
東京から帰省後の私の出発地もそこにあった。
宮の森1015番地。旧住所には琴似町字宮の森と記されていた。
この表示に、一本の川が町の境を造っていた時代の匂いがする。
いつの間にか恐ろしい勢いで、町が変わる。
風景がきらびやかな物の集積庫に吸収されていく。吸込まれる風景。
その柔らかな坩堝の日常の強力のなかで、一点を穿つ。
ひとつの路、ひとつの山、ひとつの庭、ひとつの木、ひとつの歌、ひとりの人。
及川さん、中嶋さん、河田さんたちの仕事を、そう思う。
奥三角、マイラブ。私には、さっぽろ、いしかりへの原点としてこの山がある。
<地相の趣意が一気に析出し><風景として結晶する>
奥三角・結晶。風景の一点を穿つ。
そこから、地下へと下り無表情な人の群に身をおき、北18条まで地下電車の速さ
に顔を伏せて立ち尽くす。停車毎に間断なく音声が案内し注意する。
早く目的地点に到る為過程は無視し、消去する時間。
析出するものは何もなく、結晶も無論ない。
<一気に>吐き出され、出口へ出る。
新鮮な入口はなく、地上に出て肩をすぼめて滑る足下。
手稲の長い山稜が白く霞んで見えるのに気付き、
ほっと白い息を吐いたのだ。
ここは、手稲山下。
一点を穿つ。さっぽろ北界隈の風景がある。

*ALGILLN’NE展「モーラ」-11月30日(日)まで。am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-11-27 12:17 | Comments(0)


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