2008年 10月 26日
場とは何か。いつもそう問い続け生きてきた。 小さくは自分の身体の置き場でもあり、日々生きるゾーンの事である。 それはかって、私的には駅前通りであり、円山北町であり、今、この斜め通りの北 界隈でもある。さらに少し広げれば、私の生まれた札幌であり、そしてさらにいえば 札幌の位置する石狩という地域である。 大きな日本という邦(くに)の前に石狩という国(くに)を思う。 その自然としての石狩圏と、サッポロという都市の地域圏には落差がある。 550万余の北海道の総人口と200万弱の人口のサッポロは、人間の政治経済 の圏内と自然の圏内においてズレがある。このズレは、石狩とサッポロのズレだ けに留まらず多くの場所におけるズレと思う。 昨日触れた広島とヒロシマのズレもそのひとつである。 このズレを界(さかい)として、我々は真摯に生きなければならない宿命(さだめ) を保っていると、私は感じている。 都市の傲慢に組しながらも、その傲慢の支配下に屈してはなるまい。 自然の風土に属しながらも、その寛容に逃亡する感傷に溺れてはなるまい。 人間は社会的存在であり、同時に自然的存在である。 いつもその二重の、時にその背離を生きるのだから。 札幌人であることは、同時に石狩人であるという当然の在り様を、この北海道島 の人口の約半数を保つ都市サッポロの傲慢の中で、その二つの在り様を見失っ てしまう現実を直視するのだ。 昨日触れたサッポロドームの所在地は、かってチキサニとアイヌ語で表わされた 楡の木のある場処である。火を擦(こす)る木の意で、アイヌの人たちの里山でも あっただろう丘陵地帯である。チキサニが月寒となる。そこに都市の繁栄の象徴と いえるドームが建つ。そしてアートグローブ(芸術の木立ち)と名付けられた美術作 品が並ぶ。その野外アート群をプロデュースした北川フラム氏は、自らの故郷新潟 で里山賛歌を旗印に越後妻有に大規模な野外美術展を企てた。さっぽろを軸に考 えれば、ここにはふたつの里山がある。火を擦る木を意味する楡の里山と、農村文 化を軸とする里山のふたつである。場処の相違が、同じ人間の為の里山を破壊と 賛美に分けるのだ。ラデイカルにいえば、両処は同じ性質のものである。 真のアートとは社会的位置と関わりなく、社会と自然の界(さかい)を真摯に生きる 事から生まれるものではないのか。都市の傲慢に加担し、<美術の木立ち>とい う美名でカモフラージュする行為は、真にその界(さかい)を痛みを保って生きてい るとは思えない行為である。 一方で<ドーム>もまた、廃墟(原爆)と繁栄(サッポロ)の二重の本質を保つ。 その背離を直視せず、その背離を生きず、一方に荷担し振り分けて、毒消しをす るかの如き<美術の木立ち>と名付けても、それは<目眩まし>でしかない。 タワービルに集約されるビル構造は、都市の発展と同時にその場処の固有の風景 、場を破壊する両面の存在である。私達の日常は否応なくそのふたつの背離を生 きている。加担しつつ被害者である現在を生きている。 あらゆる局面でその現実を引き受けなければならないのだ。 界(さかい)を生きるとはその謂である。 *中岡りえ展「DNA DIARY 1902-2008」-10月23日(木)-29日(水) am11時ーpm7時(月曜定休・休廊) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2008-10-26 13:40
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Comments(2)
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