人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2008年 08月 04日

ジャンヌダルクな夜ー夏の年(sak-pa)(56)

17歳になったばかりの詩人文月悠光(フヅキ ユミ)さんが、出来たての個人誌
を持って来た。久野志乃さんの最終日の午後。20歳になったばかりの丸山悠さ
んが先ず買うといい、その後4冊があっという間に売れる。定価180円の手造り
詩集。お昼も食べないで、ここへ来る直前まで製本していたと言う。最初の6冊
あっという間にもう1冊だけしか残っていない。
ご褒美という訳でもないが、初の個人誌のお祝いに、’89アートイヴェント界川
游行の吉増剛造編と、同じ場所で展示された鬼窪邸戸谷成雄展のヴィデオを見
せる。田上義也の昭和初期の名建築鬼窪邸の昼の内部と、夜の前庭が舞台と
なっている。先にその洋館の佇まい、応接間、そして廊下に展示された作品の前
で作家戸谷成雄自身が自作を語っているのだ。さらに別の日の夜、歩廊の会の
詩人たちが、吉増さんのリードでそれぞれの詩を朗読し重奏していく。やがて、キ
ャンドル片手に参会者が、かっての川沿いの道を歩き、途中吉増さんがハンマー
を手に銅版に文字を打ち込む。キャンドルの隊列は次に、かって重兵衛沼と呼ば
れた沼の跡の公園に集り、公園の真中の小高い丘の上で、演奏と唄が自然と湧
き起こるのだ。空には満月の月が煌々と輝き、小藤博之さんが気持ち良さそうに
自作の歌を唄う。♪チップ トラシ ペツ-小舟がそれに沿って上る川ー。
界川のかってのアイヌ語名ではないかといわれる言葉が、歌詞だ。
お月さまが好きな文月さんには、応えられない場面と思う。吉増さんの朗読、そし
て月夜である。彼女がまだ生まれる前の’89年10月の映像である。
久し振りの見た私はといえば、もうこの世にいない忠海光朔さん、青木崇さんの
姿が懐かしいのだった。他に、今は岐阜にいる白鳥真、石狩の大島龍、滝川の林
美詠子さん、東京にいる田中健太郎と、今札幌にいる人はいない。
キャンドルを手に持った参会者の中には、当時北大生だった藤原笛果さんの姿も
映っていた。’80年代のある熱気が、当時スキャット(現在Jコム)の自主番組とし
て制作されたこの全2時間の映像記録の底流に、流れている。
現在展示中の道立文学館「吉増剛造展ー詩の黄金の庭」で、深く心を動かされた
文月さんに、この時代の詩人たちのシーンはどう写ったのだろう。
15歳で詩学最優秀新人賞、16歳で現代詩手帖賞と立て続けに受賞した現在高校
2年生の文月さんは、その若さゆえ多くの困難がこれからあるかと思うが、吉増さん
のような本物から多くの滋養を吸収して欲しいと思うのだ。そして、彼女の通う学校
傍の界川の流域から、こうした熱い交流があった事を忘れないで欲しい。
お互いに年齢は違うけれども、このさっぽろで頑張りましょうというエールも篭めて、
このヴィデオを見てもらいたかったのである。
久野志乃展最終日は、この文月悠光さんを筆頭に、彼女に会わせたかったTさん、
北海道の大地のようなおおらかなナイーブさを保つ丸山さんと、優れたジャンヌダ
ルクたちが集い、赤く発熱する最終日となったのだ。

*及川恒平ソロライブ「resongs vol・8」-8月5日(火)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月9日(土)-17日(日)
*森万喜子展ー8月22日(金)-31日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-08-04 17:06 | Comments(1)
Commented at 2008-08-05 15:58
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


<< モモとナウシカー夏の年(sak...      久野志乃展最終日ー夏の年(sa... >>