2008年 07月 24日
<応>と書いて、応(こた)えると読む。心でこたえる意味とある。 ”おう”という音の響きに惹かれるものがある。対等に親しい感じがするからだ。 この”おう”を心になくして、人を迎える展覧会を見ると、いやあな気持ちがする。 今陶芸界の異能の人、古田織部賞受賞者鯉江良二が札幌に来ている。 この織部賞の過去の受賞者は、舞踏の巨人大野一雄、生け花の巨人中川幸夫 等である。大変な賞と思う。その鯉江さんを迎える札幌の応(おう)が、私には見 えない。札幌という場のやすやすと、人を迎える薄さ、軽さに腹が立つ。 鯉江良二に対し、私はいつも私のさっぽろを提示して招き、迎えてきた。それは、 ’70年代からであり、数々の企画のなかで彼の異才を磨くように、時に対峙し、 突きつけ、その度に鯉江良二は、その要求する主題に応えてくれた。 しかし、今札幌にいる鯉江さんに対し、何も相互の<応>が感じられないのだ。 今日は泥縄式に急にCAI 2で岡部昌生との対談が組まれたようだが、あたかも 旧知の間柄を誇示することだけが、目玉であるようなふたりの紹介文を読みなが ら、虚しい気持ちになるのを抑えきれなかった。都心に企画ギヤラリーを、という 能書きで札幌市長を始めとして、賑々しくオープンしたこのビル地下2階のスペー スについては、当初から私は、批判的な立場にある。このブログにも何度かその 事は書いているが、売り物の<企画>の第一回が、「サッポロアート」というふや けたカタカナ企画である事も批判として記した。市長さんがオープニングでカラオ ケまがいに歌を唄ったのも、ご愛嬌といえばご愛嬌だが、肝心の企画が有料・無 料への歪小化と、カタカナ信仰の<サッポロアート>では、お里が知れるのである 。そして、ここへきて某外国ビエンナーレ出品の岡部昌生氏と鯉江良二を急遽対 談で組み合わせ、その有名性だけで括った<企画>には、何の必然性も場も感じ られないのだ。 <サッポロ>化したカタカナのお化けが、グローバルな構造を誇示しているだけで ある。さっぽろ不在のサッポロがあるだけである。場に対する<応>が命のフロッ タージュ作家岡部昌生も、その心を何処に置き忘れてきたのか。ヒロシマにか、 自らのさっぽろ、その郊外のベッドタウン化したノースヒロシマすら念頭になく、 コイエ、コイエと擦り寄る姿は、その対談場所にすらなりふり構わず擦り寄ってい る哀れとしか思えない。同時に開催されている「交差する視点とかたち」という4人 展もまた、個々の作家の力量は別にして、企画という点では何もインパクトを感じ ない。交差する視点とかたち、・・それって当たり前の事じゃないか。4人も寄って 展覧会をすれば、交差するのは当然だ。どう、なにが交差したか、どう交差するの か、その肝心な主題が無い。ぼんと放り出して見る者に任せる。だから、肝心な掛 ける<1>の主題が人任せである。この時<かたち>とは実体の無いお化けで形 容詞だけで成り立っている。お化けとは、場に立つ足が無いという事だ。 4人雁首揃えて交差する視点とは、正に宙に浮いた名前だけの<かたち>である 。さっぽろという場の<応>が、ここにも不在なのである。ひとりの作家の有名性だ けに群がって、グループを組めばそれだけで企画というこの貧困なサッポロに、真 の<応>はない。 *久野志乃展「物語の終わりに、」-7月22日(火)-8月3日(日)am11時ーpm 7時(月曜定休・休廊) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2008-07-24 13:08
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