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テンポラリー通信

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2008年 07月 03日

gozoCineー夏の年(sak-pa)(27)

展示前の何もない日。暑さに少しぼんやりしながら、夕方の陽射し濃い午後だっ
た。入り口で声がした。急いで下に降りると、吉増剛造さんがひとりいた。今夕は
北大遠友学舎で講演がある。その前に少し抜け出して来たと言う。
とりあえず奥に入って頂き、話し込む。今日で今回の展覧会の前半の講演は終わ
り、明日一旦東京へ帰るという。6月27日のレセプシヨンから6日間連続の鼎談
・対談・上映である。近代美術館に始まり、道立文学館・北大とすざましい日程だ
。この後来札は、8月8日から30日の間になる。合計12回の集中である。
私は最初のレセプシヨンしか出ていなかったので、今晩の北大遠友学舎の会に
は近くでもあるので出ようかなと思っていた。昨夜工藤正廣氏から電話があり、
この日は文学館で工藤氏と吉増さんの対話だったから、今にして思えば、来い
という合図の電話だったと、吉増さんの話を聞いて気付いた。
長編詩「石狩シーツ」をめぐって、工藤氏が爆弾を仕掛けたというのだ。
その解釈が、きっと従来にないもので、その事に吉増さんは驚き、大いに喜んで
いるかのようだった。工藤正廣氏が、本命の極に触れたのである。
さっぽろ・イシカリで創られたこの詩を、北海道文学館主催の吉増剛造展は、フラ
イヤーにこそ記載しているが正面から展示の主軸に設定はしていない。チラシの
呼び込み、枕詞的には使用しているが、主軸のひとつに正面から向き合ってはい
ないのだ。柳田国男・折口信夫等が主となる映像とトークがこの日予定されていて
、またもや、津軽・黒石人工藤正廣と奥多摩人吉増剛造の民俗学的話に口をあけ
て拝聴という構図を感じていたので、出席する意欲が失せていたのだ。
ところが実際は、「石狩シーツ」論で白熱したようで、私の思い込みの怠惰さを知る
結果となった。昨日のその出来事を伝えたくて、ひとり吉増さんは訪ねて来たのだ
。8月また再来札の折、I書店の樋口良澄氏も来るので、その時3人で会おうと言っ
て吉増さんは会場に向かった。
午後6時半過ぎ、私も会場に行く。40人程だろうか、狭い会場には熱気が篭もっ
ている。岩手大学の野坂幸弘さんとともに対話と映像が始まった。
映像は泉鏡花をモチーフにした手作り映像である。残像を利用した多重露光のよ
うな、吉増剛造独特の世界が広がる。
ぶっ飛んだ、凄い!現実の風景の中に手を突っ込み、護符のように鏡花の写真
を持って、炎の中を突き進んで行く。まるで真言密教の行者のような、阿修羅の
吉増剛造である。ヴィデオカメラが風景を切り裂き、声が音霊(おとたま)となって
、カメラの周囲の音も惹き寄せ、一体となり視覚となる。天才は、もうここまで来た
のか。この前4回に出席しなかった自分の不明を思った。
全力投球の熱球は最後まで続き、最後の司会者の固着した観念的挨拶を、ぶっ
飛ばす勢いで続いたのだ。全部の会に出席しているという河田雅文さんと帰り際
顔を合わせ、思わずふたりですっげえ~と呟いて別れた。
あらゆる現実の区別・差別・分断を、想像力の映像・音声世界で超えていく。
その必死の全力疾走は、処女詩集「黄金詩篇」以来少しも衰えてはいない。いや、
それ以上にパワーを増しているのだ。最新の映像機器は、見事な絵筆・ペンとも
なっている。11月に映像による初個展を目指す河田さんにとっても、どれだけ勇気
づけられ、励みになった事だろうか。美術・文学という領域を軽々と超え、今を生き
る表現としか、今いうべき言葉は、見当たらない。

*細井護展「水が風景をつくる」-7月8日(火)-13日(日)
*酒井博史てん刻ライブー7月20日(日)am11時ーpm7時
*久野志乃展ー7月22日(火)ー8月3日(日)
*及川恒平ソロライブ「resongs vol7」-8月5日(火)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*アキタヒデキ展「点と点と展」-8月9日(金)-17日(日)
*森万喜子展ー8月19日(火)-31日(日)
*gla_gla展ー9月2日(火)-13日(土)
*新明史子展ー9月16日(火)-21日(日)
*梅田正則展ー10月1日(水)-7日(火)
*阿部守展ー10月9日(木)-19日(日)
*中岡りえ展ー10月22日(水)-29日(火)
*河田雅文展ー11月1日(土)-16日(日)
*中嶋幸治×國枝絵美展ー11月18日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-07-03 12:56 | Comments(0)


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