人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2008年 05月 17日

小林麻美展最終日ー5月の共和国(15)

小林麻美展最終日午後、佐佐木方斎さんが来る。こんな風にひよっこり、ひとり
で来たのは初めてだ。そして、小林さんの最終日の片付けまで手伝ってくれた。
ふたりの共通点を、何日か前のブログに書いた事もあり、出会いを感じる。
人の波が収まった後、方斎さんが小林さんに話す。
自作の「格子群」から「余剰群」、「自由群」、そして今回の「meta絵画」までの展
開を話していた。
自作を語る方斎さんも珍しく、小林さんも聴き入っているようだった。
格子とは、見方によっては直線の金網のようにある。そこから、余剰へと進んで
いく表現の経過は、境・界(さかい)の意識をマージナルに捉えるものだ。
小林さんは、今の問題意識の先輩ともいえるのかも知れない人に、最後に会え
たのだと思う。
来場者数のまばらだった展覧会と、多くの人が作家に会いに訪れた展覧会とが
連続して続いたが、この展覧会の表現の根においては、共通する主題が孕んで
いたと私は感じている。格子と網の表層の相違はあっても、内側の世界と他者の
世界との境・界(さかい)を間として意識し、表現として闘って在るものは共通して
いると思う。間(あいだ)を、余剰として溢れるmarginalなものとして表象するか、
間(あいだ)を、区別・差別の境として分断の表象とするか。その小林さんの危う
さを最も濃く強烈に生きた表現者として、佐佐木方斎さんがいると、私は思うのだ。
年齢、性別、環境すべてにおいて違うふたりだが、現在・只今という表現の一点に
おいて、同時代の困難を共有していると感じる。深い他者の世界との断絶・分断の
内側から、如何に人は他者と関わり得るかという現在の在り様に於いてである。
量数としての入場者の多寡は問題ではない。表現の個の位相に於いてふたりは
同じ方向を見ている。菱形や方形の格子を30層に白く塗りこめた佐佐木さんの、
メタ絵画は、小林さんの溶解する金網の格子とともに、ふたりの濃い内部世界の
存在を強く感じさせるものだ。運動体として北海道現代作家展や3000人相手の
コンピユーター上のチャットを、’80年代’90年代に展開してきた佐佐木さんの現
在の2000年代の孤独と、今多くの友人達に囲まれて人気の若い小林さんとが、
その内面の内閉する重力の強度と外界とのバランス、危うさにおいて何故か私は
、同時代の境・界(さかい)の皮膜の質として類似するものを感じていたのだ。
そしてそのふたりが、最後にここで会い、作品撤収の行為を同じくした事が、とても
嬉しく思えた。それは、場がただの”ハコ”として在るのではなく、溜まり溢れる開か
れた”函”として在る事の、私のささやかな自負としてでもある。


*岡和田直人展「好日」-5月21日(水)-30日(金)am11時ーpm7時月曜休廊
*斎藤周展ー「おおらかなリズム」-6月7日(土)-22日(日)月曜休廊
*秋田英貴展(予定)ー6月24日(火)-7月6日(日)
*細井守展ー7月8日(火)-13日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2008-05-17 11:34 | Comments(0)


<< 村岸さん宅訪問ー5月の共和国(16)      青い函ー5月の共和国(14) >>