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テンポラリー通信

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2008年 03月 09日

活字の復権ー界(さかい)の再生(22)

なんと昨夕の北海道新聞夕刊一面トップに、酒井博史さんの写真が活字印刷の
現状を問う記事に掲載されていた。新聞の一面トップに載ることは、そうそうざら
にあることではない。活字鋳造の廃止の危機と、それを使い続ける町の店、その
事が記事の主たる内容である。コンピユーター印刷に占拠され旧来の活字印刷
は、廃れて今や風前の灯火となりつつある。しかし最近東京を中心にその良さを
見直し、守る小さな運動が起きつつある。北海道ではその動きはなく、鋳造の活
字のサイズも本州とは違うようで、活字鋳造の供給が止れば印刷ももう不可能と
なる。思えば、一昨年7月、個展のDM印刷に最初に酒井さんの所で活字印刷を
依頼したのは、村岸宏昭さんだった。フラットで凸凹のないコンピユーターの刷り
物の平板さに、敏感に村岸さんは気付いていた。活字の文字通りプレスする、圧
の残る紙と活字の境(さかい)の美しさに、彼は気付いていたのだろう。それからテ
ンポラリースペースで個展をする人たちに、酒井さんの所で印刷する人たちが増
えてきたのだ。昨年毎月個展を各場所で展開した藤谷康晴さんがそのいい例だ
った。コンピユーターによって速く手軽になった印刷物は、基本的に活字の持つ
刷る、印字するという、紙と字の間の摩擦が消え、活字という鉛の道具の存在感
が限りなくフラットな構造に変わったという事でもある。現代の社会構造と同じ構
造にあるのだ。いちいち人が版を組み、校正をし、構図を考える。そういう手間が
すべて画面操作で省かれる。指先の打点と目だけの操作とは、我々が日々経験
している目と指の時間である。デジタル化には、原因と結果が即繋がり、間の時
間が短縮され消えていく。活字印刷には、その間、境の時間があり、その痕跡が
印刷に顕われる。間(あいだ)、境・界(さかい)の美しさがある。古いお祖父さんか
らのハンコ屋さんを営む酒井さんの店には、その活字が今も現役の道具としてあ
る。時に時代遅れとそしられても、父と祖父の技術を愛しむ心がどこかあったのだ
ろう。それはまた、父と子の間にある仕事を通した美しい界(さかい)である。コンピ
ユーター全盛の時代が、あのイージス艦のように父と子の職場を分断する。等身
大の生活を脅かし破壊するものとの闘いが、その基本にはあるだろう。その現場
を第一線に保たない人間は、時にネット裏の解説のように誉めたり貶したりするだ
ろうが、今回のように派手に新聞に取り上げられると一斉にグレーゾーンの安全
地帯の輩は掌を返すだろう。問題は、活字印刷の是非が問われているだけでは
ない。境・境の闘いを生き方として、生の現場に見ているかどうかが問われてい
るのだ。

♪ファイト!
 闘う君の唄を
 闘わない奴等が笑うだろう
 ファイト!
 冷たい水の中を
 ふるえながら のぼってゆけ

酒井ヒロシの絶唱を思い出していた。

*大野一雄展「石狩・みちゆき・大野一雄」-3月6日(木)-16日(日)
 am11時ーpm7時(月曜休廊)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2008-03-09 12:40 | Comments(0)


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