悪天候のなか、7時間以上かけて帯広から堀田真作さんの車が、ドイツ・ハンブ
ルグの佐藤幹子さんを乗せて夕方遅く着いた。何度かその都度電話を頂いて道
路状況の連絡受けていたが、事故もあり、夕張辺りが凄い状況だったようだ。先
に来て待っていた帰国中の谷口顕一郎さんと、ふたりを迎えた。谷口さんことケ
ンちゃんは、川崎の岡本太郎美術館に現在出展中でこの間札幌に滞在し、明後
日ドイツに帰国する予定だ。帯広は佐藤さんの故郷で、東京の仕事を終えて一時
里帰りし、明日ドイツへ帰国するという。堀田さんの帯広のアトリエを訪ねふたりで
こっちへ向かったのだ。昨年堀田さんの個展が、ドイツで初めて佐藤さんのギヤ
ラリーで開かれ好評を博していた。また、ケンちゃんの個展もこの秋彼女の所で、
予定されている。佐藤幹子さんは、今秋従来のギヤラリーを閉じ、完全に独立し
て佐藤幹子ギヤラリーとしてオープンする。その第一回の展覧会が、谷口顕一
郎展である。昨年の堀田さん、今年のケンちゃんと佐藤さんのギヤラリーを支え
る北海道勢二人が揃い、話は盛り上がった。場所を近くの蕎麦屋に移してからも、
蕎麦と酒を肴に話は尽きなかった。ケンちゃんの個展には、私も行かなければな
らないかも知れない。話はただ行くのではなく、何らかの形をとる為にはどうするか
というような事であった。佐藤さんは行動的な女性で、どんどん日本の現代美術を
紹介し、新しい企画を共に立て、実行しようと言う。外国にいると日本という内面が
意識され外界と対峙してくる。その内と外を相渉るチャンネル、心の運河を水平に
もつ。その界(さかい)の充実こそが、今必要である。外国という外部に比重が強け
れば、内なる日本は浸透圧に負けて肩下がりに吸い込まれてしまうだろう。逆に内
部の浸透圧が勝れば国粋的なナシヨナリズムに閉じていくだろう。内なるものと外
なるものとが水平に界(さかい)をつながなければない。そうでなければ感性の船
は難破し、走らないのだ。ここにも界(さかい)のチャンネルの重要な存在がある。
佐藤さんが、日本の現代美術を中心にドイツで仕事をするという事は、彼女自身の
日本という内なる故郷帯広・十勝が原点として晒され、試されるという事でもある。
マクロの日本ではなく、ミクロのインターローカルな視点こそが、彼女自身の日本
の現在なのだ。冬の故郷・十勝の真っ白で真っ青な天地をかの国にない身体感覚
として確認した今回の帰郷は、きっとまた新たな仕事のエネルギーを彼女に補填し
ただろうと思う。短くも濃い時間があっという間に過ぎて3人と肩を叩きあい、白い
闇の中で別れた。そこには多分凝縮したさっぽろという白い闇を通底して、それぞ
れの日本と世界が熱く詰まっていた気がする。
*小林由佳展「スベテハココカラハジマル。」-17日(日)まで。
am11時ーpm7時。
*吉増剛造展ー2月19日(火)-3月2日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
tel/fax011-737-5503