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2008年 01月 30日
朝、ギヤラリーの前に運送会社の車が止っていた。運転席から近代美術館のK さんが顔を出し、お待ちしていましたと言う。先週まで展示していた「born in h ーokkaido」展の野上裕之さんの出品作を返しに来たのだった。厳重な梱包で さすがに美術館である。学芸員のKさんはこれから富良野へ行くと言う。預かっ た作品を作家や提供者の所へひとつひとつ立ち会いながら、戻しにいくのだ。裏 方のご苦労を、普段知らないところで見た気がした。展覧会への批判は批判とし てひとつひとつの作品に対して、丁寧に向き合い扱う手の仕事を、貴重に思う。 今回の高臣大介展には、花光さんの関係もあってか、将来花屋さんやケーキ屋 さんを夢見る若い人が多い。この人たちはしっかりと自分たちの手で作る小さいけ れど自分の背丈に合った空間を考えている。そこに透明な高臣さんのガラスを色 んな形で使う事を考えているのだ。またある人は、幼馴染で遠く神奈川で頑張って いる親友に北の冷涼な空気を想い起させる高臣さんのガラスを送って勇気付ける 為に、化粧品を買う事を止めたお金で贈る事を決意していた。買うという行為ひとつ にも、個々の凝縮した想いが感じられるのだ。その凝縮は内に閉じ篭るものではな く他者の為に、自分の未来の為にと、開かれ濃くなっていく凝縮である。ブラックホ ールの閉じた凝縮ではない。ふ~っという外へと発する呼気・息吹きがあるのだ。 手を通した仕事が、手を通して他者へ、自分の未来へと伝わっていく。作品という 形に凝縮される物と心の伝達がある。つくる、かう、おくるの人間的行為が手を通し て夢を内包して連鎖している。物の流通が、魂の交流を包含している。売るという 行為が清々しく、渓流のように爽やかであった。購入する動機が個人の凝縮した 想いに支えられてある事が、会場をよりキラキラした内実に満ちた空間にしていた。 心の手仕事の夢が、その本流には溢れているからなのだ。作品をプリズムにして、 物が心を手渡している。贖う、他者に贈る、手元に置く。そんな単純な行為の中にも 、人の濃い人生の想いがあるようだった。昼過ぎに山内慶さんが来る。石田善彦さ んの最後の翻訳本を持って来てくれる。あとがきにこの本の出版社の山本光伸さん が石田さんの追悼を記している。札幌で出版社と翻訳家養成校を1995年に立ち 上げた山本さんは当時を回想してー誰もが無謀なことは止めなさいと忠告してくれ たが、北海道に住みたい一心の私は耳を貸さなかった。しかし私の心の中では絶 対にうまくいくだろうという確信があった。その確信の核にあったのが、石田さんの 存在である-と書いている。当時すでに石田さんは東京を引き払って札幌にいた のである。そして石田さんの快諾を得て山本さんの夢は実現していく事となる。ここ にも心の手仕事の夢が息吹きとなってあったのだ。自らの手で、心に凝縮した夢を 放つ。山本光伸さんは、その夢の核に石田善彦さんがいた事を語っている。そして 石田さん自身も山本さんとともにその手仕事の夢を実現させていくのである。彼の 最後の翻訳作品は、こうして山本さんの手によって明日発売となる。デイヴィッド・ リンジー「暗殺者の顔」-石田善彦訳・柏櫓舎刊(2000円+税)。 *高臣大介冬のガラス展「雪と花光とgla_gla」-2月3日(日)まで。am11時 ーpm7時。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2008-01-30 14:57
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