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テンポラリー通信

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2008年 01月 13日

風の位相ー視線と拠点(30)

風を表すアイヌ語は幾つかあるけれど私が好きな風は、<maw-まウ>という
言葉だ。意味は呼気・風・はまなすの果実ー(知里真志保「地名アイヌ語小辞典」
)ほかに最近良く使われる<レラ>や女性の聖なる災厄を追い払う風<ふッさ>
などがある。その個々の意味の違いは、自然とともに生きたアイヌ人の知恵が深
く込められている。自然の様々な現象を、人間と同じように捉えるアイヌの人たち
の視点は、分野の分断に犯された近代人には時としてはっとするようなオーバー
フエンスを経験させてくれる。<maw-まゥ>という言葉もさりげなく3ッの意味が
並列しているが、呼気は身体の現象であり、風は気象の現象であり、はまなすの
果実は植物の現象である。分野でいえば3っは別々のものだ。それを一っの言葉
に収斂してしまうところが、凄いのである。この3っの分野を専門化の陥穽から救い
出す為には、実際に歩きその中で感じとる以外ない。石狩の砂丘を歩き廻り、はま
なすの実の美しさに感動しながら実際に感じた事は、はまなすの実が<風の実>
と感じた事だ。砂丘の砂は風によって動く。その砂に深く根を張って生きている真っ
赤なはまなすの実は風の実とも思えた。呼気が、人間が発する風でありその吹くも
のが自然の風と重なり、砂丘の風の実となる。体を使って、スースーハーハーしな
がら歩き廻ると何か自然とそう感じるのである。rep-れプという言葉を経験した時
もそうだった。沖:岸から遠い海面・川岸から見て川の中央・炉ぶちから見て炉の中
心。この3っの意味も海・川・炉と3っの異なった現象を結んでいる。共通するのは
中央と縁の関係性である。川の流れの一番激しい処。炉の火の一番激しい処。沖
が難題だったが、これも歩いていて解った。海に近付くと海の力の影響が陸にも及
ぶ。陸の力も真けずに海へと向かう。そのふたつがぶつかる処、それが沖である。
岸から遠い海面では、川の流れも風も海と陸が激しくぶつかっている。炉縁から地
球規模の海と陸へと広がるところがすごいなあと思う。そう思う私の感受性の方が
実は専門分野の部分増幅で肥大分断されているのである。少なからず現代人はみ
なオタク症候群なのだ。観念肥満である事を免れない。風に戻れば、最初の意味・
呼気が気になっていた。吸気が他の言葉を捜してもあまり見当たらないのだ。呼気
吸気と対の言葉として捉えているのに吸気が見当たらない。ふっと、もうひとつの言
葉入口・出口を思い出していた。この言葉も入口を意味する言葉は豊富だが出口
が見当たらない。まして出入り口などはない。これも歩いて解った事である。自然は
入口に満ちているからだ。出口という来し方を否定するような世界は基本的に薄い
のだ。同じように気功を体験した時、吸気は従で呼気が主である事を思い出した。
息を吐く事、呼気があって吸気はその後に伴なってくる。その事に気付いてから人
間だけを中心とする文化・文明が吸気を中心に据えたブラックホールのような利己
の世界に到っているように思える。マイナスの、出口を求めるだけの文化・文明と思
えるのだ。吸込む風は、災厄の竜巻のようなものだから。吸込むだけの政治・経済・
文化の横行と対峙し、闘わなければ真の風も吹かないだろう。

*森万喜子展ー20日(日)まで。am11時ーpm7時。
*高臣大介冬のガラス展「雪と花光とgla_gla」-1月22日(火)-2月3日(日)
 :22日午後7時~太田ヒロパーカッシヨンライブ

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-73-5503

by kakiten | 2008-01-13 12:50 | Comments(0)


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