台湾にいるS・Hさんからメールが届く。香港にいる人と先日会って村岸宏昭さん
の話が出たと言う。その人は四国の鏡川近くの出身で村岸さんの事をこのブロ
グで知り気になっていたと言う。一昨年の8月鏡川で水死した村岸さんの事が今
も台湾や香港で話題になっている。その事が些細な事のようでとても大切な事と
してS・Hさんは台湾からメールが送られてきたのだ。今台湾に滞在している彼女
の時と場所を超えた素直な驚きと喜びが伝わるような文だった。近々帰国して必
ず寄りますとメールの終わりには書かれていた。ひたむきに生きる姿勢が、死者
となった現在もなお生者の心を捉えている。生前一度も会った事のない青年の意
思が香港で生きている人間の心を台湾で打つ。たかだかひとりパソコンに向かい
コツコツと打刻しているこの時間が時空を超え共有される。人間、やはり捨てたも
んではないなあと思う。ひたむきに生き、ひたむきに人を思う。もう1年半以上前
に停止した命の軌跡が、こうして電波の文字で心の電波となって伝わってくる事
に私は確かな温もりを感じていた。昨日寺山修司の天井桟敷にいた友人が森万
喜子さんの個展会場に来るなり暫し入口から動かず声を発した。”暖かいなあ”。
冬の今にピッタリだと言う。今冬一番の寒さから中に入り彼は森さんの絵にやは
り太陽のような暖かさを感じたのだ。絵画自体が暖房機のように熱を発している訳
では勿論ない。色彩が奏でる色感がそう感受させる。皮膚で感じる暖気ではない。
眼を通して感じる暖かさである。”touch with eye”である。人は五感をもちその
五感を部分ではなくファインな第六の領域で感じる事が出来る。機械的増幅は部
分の力の増大だがこの第六の領域は相互に発して境を越えクロスオーバーする。
想像力がイマージンとなって現在する。死者が易々と時空を超え、油絵の具の色
が皮膚に触るように熱を意識させる。さっぽろの北の場末が南の台湾や大陸の香
港と繋がる。電気の力で機械的増幅する電波は手段として存在してもその事に本
質がある訳ではない。選び取り伝播するまた別に存在しているものがある。電気
的増幅は多くの条件のひとつを提供しているに過ぎない。村岸というMで繋がる要
素、因子の伝播力があるからだ。タッチ、ウイズ、アイ。眼を通して入った情報が人
の心に四国を、札幌を、台湾を、香港を駈け巡らせてくれる。目を通して入った油彩
の色彩が陽光の暖かさをもつ。そうした五感のオーバーフエンスは人間が保つ心
の豊かさというほかないのだ。その事を私は、旗に吹く風のように感じている。ゼロ
から出発する旅の空に吹く、光の風。
*森万喜子展ー1月9日(水)-20日(日)am11時ーpm7時
*高臣大介冬のガラス展「雪と花光とgla_gala」-1月22日(火)-2月3日(日)
:22日午後7時~太田ヒロパーカッシヨンライブ
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
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