福井優子展「Cold Fire」始まる。青を基調にしたワックスワークで今年春に続く
個展となる。青白い炎をイメージしたキャンドルと造形の作品がメインに据えられ
冬の白い陽射しに浮かんでいる。初日の夜はフインランドの古楽器カンテレ演奏
あらひろこさんのライブが予定されている。繊細なカンテレの音色が灯りの空間
にどのように響くのか楽しみである。見えない音と音のない灯りの交感がそれぞ
れの作り手を通して交響する。固体、物体を遊離し超えて時空体が生まれる。人
間だけが為し得る創造空間なのだと思う。お互いの在り様を批判し対峙する事で
論争や批評がうまれる。しかし作品が時としてもたらす時空体はその存在そのも
のが現実と向き合い対峙する。デテイールの批判は無い。存在する事自体がす
でにその事を内含しているからだ。作家が鋭く現実と向き合って存在する芸術作
品もある。また一瞬の夢のように現実を離れて想念の時空体として顕われる作品
もある。その時受け手はただひたすらにそこに佇み、その瞑想的な時間の中で批
判や批評は遅れて受け手の価値観の振幅の内に生まれる結果となる。福井さん
の作品もあらさんの演奏も直接現実と対峙するものではない。ただ灯りを灯し、遠
い時代の音を古い楽器で奏でるだけだ。現代の電気装置の光や増幅装置の整っ
た音声ではなく風や火をともない手の指先の触れる処から発する素朴な世界なの
だ。機械以前の人と道具が醸し出す世界である。空気を養分として揺らぐ灯りは
カンテレの弦が弾けて生まれる音波を受けて空気を媒介にし繋がっていく。灯りの
微かな揺らぎを通して音が見聞される。指が音に触れ、火が空気に触れ、音は灯
りに触れる。ただそれだけの当り前のことが光の機械的増幅と音の機械的増幅に
囲まれた我々の生活の根本の処を撃つ事もある。批判や批評はその結果として
立ち顕われる。しかしそれは決して尖鋭ではない。その先は受け手が自ら決定す
る事に委ねられている。受け手の内に現実が問われる。作家の内にコンテンポラ
リーな動機が強く存在する場合と今回のふたりのように受け手に多く比重の増す
場合とが芸術にはあるのだ。一見現代美術とは関係ないかに見えるふたりのコラ
ボレーシヨンは受け手の感性によって深くコンテンポラリーな存在に転換するだろ
う。
*福井優子キャンドル展「Cold Fire」-12月11日(火)-23日(日)月曜休廊
am11時ーpm7時:11日午後7時~あらひろこカンテレライブ入場料1500円
16日(日)午後3時半~佐藤歌織ピアノ・オカリナライブ入場料1000円
23日(日)午後7時~酒井博史ギター・唄ライブ入場料1000円
*木村環×藤谷康晴展「乱」-12月25日(火)-30日(日):25-29日木村環
作品・公開制作:30日午後5時~藤谷康晴ライブドローイング・木村環の作品に
直接藤谷康晴がドローイングするライブです。
*森万喜子展ー1月9日(水)ー20日(日)
*高臣大介冬のガラス展ー1月22日(火)-2月3日(日)
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