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テンポラリー通信

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2007年 12月 07日

詩人の来訪ー視線と拠点(3)

明日ベルリンへ帰国する谷口顕一郎さんに会う為小樽の詩人高橋秀明さんが来
る。1999年7月に高橋さんが4冊目の詩集「言葉の河」を出版した頃にふたりは
会っている。それ以来”凹みのケンちゃん”と高橋さんも声をかけ気が合うようだっ
た。谷口さんことケンちゃんも高橋さんの事を尊敬しているらしく「言葉の河」は密
かに愛読しているようだった。”難しくて解らないんだあ”とその話になるととぼけて
はいたが彼が気になっている本である事は間違いない。この詩集は小樽で生まれ
小樽市に勤めていた高橋さんがある決心のもと職を辞し詩を書き続ける為の行動
を起した時に生まれた詩集である。生活と詩業を続ける事の狭間から生み出され
たこの詩集は翌年硬質で批評精神のある詩人に贈られる小野十三郎賞を受賞し
た。本の装丁は美術家の岡部昌生氏で本自体もふたりのコラボレーシヨンのよう
に凝った造本である。この詩集から5冊目となる次の詩集の原稿を持ってきて目
を通してくれと高橋さんが言う。断片的には発表された詩誌で読んだものもあった
が纏めて読むのは初めてでまだ未読のものもあり預けられた事は嬉しくもあり反
面重たくもあった。高橋さんの息子さんは就職して今ドイツ・フランクフルトにいる
という。機会あればケンちゃんとも会って欲しいという気持ちもあったようだが話は
もっぱら最近の作品の事やベルリンの今住んでいる地域の話に終始した。年齢も
生活環境も分野も違うふたりだが作品を通してその深い動機に関わる部分で何か
を共有しているようである。その何かとは生き方に関わる生活行為と作品行為の密
接な真摯性とでも言得るのかも知れない。高橋さんから預った数々の詩篇のなか
にその事を暗示するような詩行が目に止まった。

ひとの ひとである証はなんだろう
埋葬
服装
武装
飾ること
恥じらうこと
悼み 守る
闇の覆いを自分のなかに畳み込み
なかで広げ 闇として
また その闇にかざす火の目的を
ともに忘れないこと

ー「2006年の戦意」一

<闇の覆いを自分のなかに畳み込み なかで広げ 闇として また その闇にかざ
す火の目的を ともに忘れないこと>この詩行はそのままケンちゃんの傷痕ー凹み
の仕事にフイットしてくる。ここに記された<闇>は<傷痕>に転位して私には読
み取れるのだ。そしてそこに<かざす火の目的>こそが美術と詩の違いはあって
もふたりの友情の所為にあるのかも知れない。

*常設(所蔵品)展ー8日(土)まで。:佐々木徹、村上善男、一原有徳、岡部昌生
 ほか。
*福井優子キャンドル展「Cold Fire」-12月11日(火)-23日(日)
 :音と灯りのコラボレーシヨンー11日(火)午後7時~あらひろこカンテレライブ
 入場料1500円。16日(日)午後3時半~佐藤歌織ピアノ・オカリナライブ入場
 料1000円。23日(日)午後7時~酒井博史ギター・唄ライブ入場料1000円
*木村環×藤谷康晴展「乱」-12月25日(火)-30日(日)
 :25日~29日木村環作品・公開制作:30日(日)午後5時~藤谷康晴ライブド
 ローイング。木村環の作品に直接藤谷康晴がドローイングするライブです。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-12-07 15:26 | Comments(3)
Commented by sakaidoori at 2007-12-07 23:55
谷口君はとうとう札幌を去るのですね。寂しくはありますが、芸術は孤独な旅だとも思っています。機会がありましたら、よろしくお伝え下さい。

谷口凹みと、クリフトのお話。雄大な物語を堪能することができました。中森考は、かくあるべきだとつくづく思いました。次なる論考を待っています。
Commented by kakiten at 2007-12-08 14:28
sakaidooriさま>寂しいという気は致しません。それと芸術が孤独な
旅だと結びつけるのも飛躍と思います。梱包と凹みを雄大な物語とい
うのも?ですね。日常の目線を保って作品行為を試みている事の共
有性を感じただけです。マイクロポップという事でしょうか。規模の雄大
さは別次元の事です。
Commented by sakaidoori at 2007-12-08 17:37
ピンボケなコメントでしたね。失礼しました。

寒くなりました。ご自愛下さい。


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