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テンポラリー通信

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2007年 11月 29日

冬の自転車ー冬の輪舞曲(29)

暫く振りに自転車に乗る。朝から晴天で路面が乾いている。葉が茂って見えなか
った林の向こうが見渡せた。寒気の透明な薄い煙りのような光が木々の向こうに
漂っている。冬の光だ。そして午前の斜光である。南向きの道路に出る。陽光が
暖かい。硬く閉じていた体が緩む。ほ~っと息をはきペタルをこぐ。N君が凍った
路面に滑って転んだ事を思い出す。初めての札幌の冬。真っ赤なヤッケが擦り
傷で汚れていた。今日は大丈夫。でも街中は風が寒い。ビルの陰を抜けると光と
風が違うのだ。地下電車の箱の中で目指す駅まで仏頂面している時間に比べれ
ば多少寒くともこの道程は豊かである。人に囲繞された空間と風と光に触れる空
間とふたつの環境を人は生きる。風土というのは後者の事を指す。社会というの
は前者だろう。このふたつの空間を行きつ戻りつ相渉って人が在る。片一方に偏
る事は不自然なのだ。両方の交感、軋轢、その回路を保たなければならない。こ
の風土と社会の回路を遮断して<箱>化したショーウィンドーのようなサッポロな
ど本来存在しないはずだ。一握りの体育の専門家の祭典ーオリンピック以来東京
も札幌もその風土を根こそぎ改変する事に明け暮れた。現在の中国・北京でも同
じような事が進んでいる。地域に根ざした下町界隈を汚いもの、恥ずかしいものの
ように大通り、ビル群へと小綺麗な清潔感に切り換える。衛生・安全という抗し難い
観念の下小路、川、古民家は取り壊され、埋め立てられる。衛生・安全という蓋で
箱化した都市に風土という溢れるものは稀薄になり、スムースな物流の排水路の
ような道路の街になる。川に澱みがなければ動植物の憩いも棲み家もない。ただ
流されるだけ。海は排水の最終出口となり川も都市の暗渠の見えない出口となる
。ゴミの見えない衛生。流水の見えない安全。何でも蓋をして箱化する。住いも店
も鶏も牛も野菜も。パックして小綺麗な物に毒は潜行する。表示がブランド化する
。スムースである事に慣れきった安直が横行する。交通もパック化され旅は移動
になる。スムースでないと怒る。すべて外に責任がある。自分に反映される観念が
なくなる。外部と相渉る交感がない。被害者の怒りと加害者の悪だけがまかり通る
。そこでは他者も消える。スムースなお仲間とそれを阻害する悪だけが世界を創る
。この都市の偏向にきちっと対峙するのが文化の力である。その一点を曖昧にして
文化を箱ものにするエセ文化とは闘わなければならない。今朝の風と光がそう告
げている。

by kakiten | 2007-11-29 12:47 | Comments(0)


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