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テンポラリー通信

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2007年 11月 15日

雪降るー冬の輪舞曲ー(17)

寒気が来た。冬の年が始まった。目に見える冬である。登別に行ったS君はすご
い雪虫の群れにあったと言う。笹薮と雪虫のなかを歩いてアフンルパルを探索し
に行ったと言う。大きな円錐形のスリ鉢状の穴。吉増剛造さんの故里福生にある
まいまいず井戸が同じ形をしていた。福生と漢字で表記して発音はフッサ。アイヌ
語で風を意味する。それも災厄や病を追い払う女性の聖なる息。その息を風と言
う。子供の頃怪我をしてその傷口に母親が唾をつけ息を吹きかけ”イタイ、イタイ
の飛んでいけ~”と言ってくれた息の風を想い出す。その遠い地にアイヌの聖地
あの世への入り口”アフンルパル”と同じ地形がある。遠隔の地との不思議な共
通性。そして比較すればより近い登別とさっぽろの気候の相違。もうとっくに雪虫
の消えたさっぽろ。まだ雪虫の大群のいる登別。遠くの場所が近かったり近くの
場所が遠かったり人間関係も同じで場所も人も遠近法の外に存在する。だから
人生も、世界も面白い。三上勝生さんがブログのなかで知里真志保さんと吉増
剛造さんがいる夢を見たと書いている。現実には在り得ない事が夢のなかには
ある。夢にも遠近法がない。でもそれは夢だからではない。現実にも時として遠
近法の外の風景が顕われるのだ。人間の意識や歴史は時として今を渦巻きの
中心にしてあらゆるものを同時存在させる。その夢のような虹の意識を形として
ある存在に変える力を芸術力、文化力と言うのではないだろうか。時に夏の海辺
。その一瞬の夏の記憶が絵画となり音楽となり詩となる。消えていくはずのもの
が立ち止まり佇んでいる。初冬の鋼鉄の旗竿にあたるロープの音。風が夕暮れ
の路上に音を刻んでいた。か~んか~んと響いてその音に軽く驚きふたりで見
上げた。新鮮な初めて経験した共通の眼差し。時間を超えてふっと甦る時が人
にはある。そんな個人的経験もふくめて場所にも歴史にもそうした時間があるの
ではないだろうか。Sさんの雪虫の話と三上さんの夢の話を読みながらそんな事
を考えていた。場所の時間の記憶ー壁や路上の痕跡をプラステイックの板に転
写する仕事を谷口さんが最終日まで仕上げるべく一心に励んでいる。<かたち>
の純粋求道者ともいえる谷口顕一郎展もあと三日となった。ベルリンで採取した
4メートルにも及ぶこの凹みがここで再生され12月には再びベルリンへ運ばれ
来年1月に岡本太郎美術館で展示される。ここにも場所を超える仕事がある。時
間と場所に拘束される現実とそれを超える現実。ふたつの現実を人は生きそれを
人は今と言うのだ。

*谷口顕一郎展「ペインテイングによる」-18日(日)まで。am11時ーpm7時。
 :酒井博史ライブ「刻歌生唱」-17日(土)午後7時~入場料1000円
*いずみなおこ展「森の記憶」-11月20日(火)-25日(日)
*福井優子キヤンドル展ー12月11日(火)-23日(日)
*木村環×藤谷康晴展ー12月25日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-11-15 13:05 | Comments(0)


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