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テンポラリー通信

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2007年 11月 04日

谷口顕一郎展初日ー冬の輪舞曲(9)

谷口顕一郎展が始まる。作品はまだ六分の展示で描きかけの変形百号は4点
の内3点目が未完である。南側窓を塞いだ壁に凹みの彫刻の写真が4点貼られ
ている。西側芳名帖の台の上にハンブルグの凹み採集マップが展示されている
。東と北の壁にはここで今週描かれた変形百号のペインテイングが2点ある。ク
ワガタのような黒の角をもった形象がベージュの地に大きく描かれ添えられた模
様がジャパンである。浮世絵の着物の柄のようだ。入り口正面の作品は羽を広げ
た甲虫の形態であり北面の壁の甲虫は角を振り立てている。この一見獰猛な感
じのする昆虫に壁や路上に凹みのかたちを求めてハンターとなる谷口さんの性格
が出ているのかも知れない。一見ジャパンと思える着物の柄のような模様は日本
を遠く離れた人間の持つ郷愁の所為だろうか。また描きかけの3点目の作品は2
階吹き抜けの上にあるがこちらは紅葉のような図柄である。さらに吹き抜け2階正
面にはドイツで製作中の凹みの原版が大きくフイルムの上にトレースされて展示
してある。この原版は会期中凹みのかたちに沿ってカットして原形として展示する
予定という。この一部はドイツですでに作品化され元の傷痕に嵌め込まれた写真
として展示されている。私はその内の一点で現実の壁に嵌め込まれた黄色のプラ
ステイックの作品に惹かれた。以前と比べて技術上の進歩も感じられかつ嵌め込
まれた作品が実際の傷痕から自立してより美しく見えるのだ。2年前は素材の傷痕
に出来上がった作品を<バンソウコウ>のように嵌め込んでみると作家自身が表
現していたがこの今回初めて見る作品はもうバンソウコウではなくそれ自体が凛と
して美しくその<かたち>を自立させているのだ。嵌め込まれながらもう嵌め込み
ではない。壁の傷痕採集部分以外の表情もこの嵌め込まれたかたちによってより
他の部分も輝きを増しているかに思えるからだ。壁の傷痕を一部をかたちとして採
取しその後時間が経って他の連動する傷跡が全体としてさらに見えてきたと言う。
部分が大きな全体としての<かたち>に見えてきた時何かが間違いなく開かれて
いるのだ。その経験が現実と作品を進化させ深めている。従ってそこに嵌め込ま
れた作品はバンソウコウではなくもっと伸び伸びとしたその場の全体性と関わって
より豊かに存在したのだろうと思う。今回のペインテイングの作品については会期
中の完成を見てから感想を述べたいと思う。作家自身の傷痕は今だ見えずある種
の自我の衣装性と自我の攻撃的性質の凸部に終始しているかに思えるからだ。
彼の本領は現実の何気ない壁や路上に存する<かたち>のハンターとしてこそ
発揮されているのかも知れない。<かたち>という形象の美の探究者はさらにそ
の<かたち>の保つ全体性へと視線が深化しつつあるのも事実だが自らの傷痕・
凹みへの探求は今回その逆の凸みの顕在化にあって自らの傷痕は今だ未明の
内にあると思える。

*谷口顕一郎展「ペインテイングによる」-11月3日(土)-18日(日)
 am11時ーpm7時(月曜休廊)
*いずみなおこ展「森の記憶」ー11月20日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-11-04 14:07 | Comments(2)
Commented by shiina at 2007-11-05 03:10 x
中森さん、夏はごちそうさまでした。
ケンの展示が見れなくて残念です。
よろしくお伝え下さい!
Commented by kakiten at 2007-11-05 13:05
shinaさん>ケンちゃんが”うれしいなあ~”とこのコメントを
見て言っていました。またいつかみんなで会いましょう!


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