退院後初めて自転車に乗る。街路樹が紅葉し競馬場の長い壁に蔦が美しい。エ
ルムトンネル上の遊歩道沿いの森は油絵の具を塗ったようだ。地に黄葉天にも
紅葉。小春日和の穏やかな陽光を浴びて夏の果て。秋が深い。昨日夕刻ケンち
ゃんと彼女の彩さんと北大の銀杏並木を歩いた。夕暮れの黄昏に黄金色の歩廊
が続いている。黄色の濃淡だけで百メートル以上も続くこの銀杏並木は今が見
頃だ。何度も首を上に向けて梢を眺め首が痛くなる頃並木を抜けてサクシコトニ
川沿いに雑木林に入る。路なき路に入り込みクサレ球が服にびっしりとくっ付く。
私が先頭に立っていたので両腕の周りはあっという間にクサレ球で一杯となる。
ケモノ道のような細い隙間を抜けポプラ並木のある場所に出る。そこから農場の
広がる草原に入ると西の山並みが北から南へと一望できるのだ。手稲山から迷
い沢の稜線、百松沢の南峰、北峰、手前の三角山、大倉山、奥三角、そして奥に
砥石山、藻岩山等が俯瞰して広がる。さっぽろの西山連峰が平地で一望できる
のはもう此処ぐらいしかないのかも知れない。そこから北大学生食堂脇を抜け
エルムトンネル横の道を通ってギヤラリーに戻った。ケンちゃんがビールを買っ
てきて久し振りに少し飲む。程なく中川潤さんが来る。酒飲みの彼が来てビール
がやがて日本酒になり私も久し振りに酒を飲んだ。美味かった。退院後吹かした
タバコよりはるかに美味かった。入院中はタバコの代わりに飴とかガムを食べて
いたのでそんなにタバコの欲求は無かったのだ。飴はチェルシーが美味しく時に
甘露飴も常用していた。ガムはポスカムがいい。チェルシーはバタースコッチが一
番で他の味はイマイチだ。そんなことでタバコにはもう免疫ができていたがお酒は
特に日本酒がすっとこんなに美味く感じるとは思わなかった。2,3杯お気に入りの
ぐい飲みで呑んで昨夜はほろ酔いで帰る。お酒の所為か夜は熟睡していつもより
寝坊する。退院後初めてお酒も呑め回復を実感する。まあ調子こいて呑み過ぎる
事はないようにしなければならない。ケンちゃんが酒は万薬の長などと変な諺を言
い出したので皆で笑った。風邪は万病の素というのと酒は百薬の長というのを混同
していたのだ。百と万の置き違いである。ケンちゃんの後に個展を予定している泉
尚子さんがDMを持って来る。手作りの清潔な感じがする。「森の記憶」というタイ
トルとなる。
*谷口顕一郎展「ペインテイングによる」ー11月3日(土)-18日(日)am11時
ーpm7時月曜休廊
*いずみなおこ展「森の記憶」-11月20日(火)-25日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
tel/fax011-737-5503