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テンポラリー通信

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2007年 10月 28日

雪虫の駅ー冬の輪舞曲(3)

雪虫の群れが舞っているとある人がブログに書いている。もう季節は晩秋に近い
。石田善彦追悼展も今日で終わる。昨日東京に住む石田さんの奥さまが訪ねて
来てくれる。じっくりと会場を見てくれ喜んでくれた。特に「新譜ジャーナル」や「ヤ
ングギター」「ローリングストーンジャパン」誌の展示には驚いていた。学生結婚を
したふたりにとって奥さまには懐かしい石田さんがそこにいたのだろう。石田さん
の晩年には別居生活をしていたにもかかわらずこうして会場で改まって故人を振
り返る時そこには懐かしい思い出だけが流れているように思われた。そんな奥さ
まの佇まいにあらためて晩年の未知の故人の交友関係や故人が人生の最後に
近く何を思い何を求めようとしていたかを今深々と感受しているかに見えるのだっ
た。肉体はすでに消滅していてもそこにはやはり暖かい手とことばの時間があっ
た。想い出に触れている無言のことばと遺品に触れている柔らかな優しい手があ
った。思わず私は一緒にいた山内慶さんと目を合わせこれで展覧会の大きな目
的のひとつが達成した事を感じていた。いかなる事情であれ人が人を思う心があ
る事情を超え今こうして懐かしい人の心に触れている。石田さんの回帰しようとし
た”青春”という名の現在を我々は少しだけだけれども提示する事ができたかと思
うのだ。それは私たち自身の現在に繋がる故人との友情の証左でもある。生業と
しての翻訳家の仕事とともに故人の裸の気弱な善意に満ちた純粋な生き方の根
の処がこの追悼展の基底にはあるのだ。雪虫の舞う晩秋、石田さんの魂もまた人
生の晩秋において雪虫のように舞っていたのである。それは大成した翻訳家石田
善彦とはまた違う”今はまだ人生を語らず”と呟くひたむきな石田善彦の青春から
発するものである。その裸の石田善彦に暖かな手とことばの回路が繋がって長い
旅は今青春の終着駅に着いていたかに思える。

*石田善彦追悼展ー28日(日)まで。am11時ーpm7時
*谷口顕一郎展ー11月3日(土)-18日(日)
*いずみなおこ展ー11月20日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-10-28 10:53 | Comments(0)


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