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テンポラリー通信

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2007年 10月 26日

病床で思ったことー冬の輪舞曲

生活にライフラインがあるなら肉体にもライフラインがある。身体のライフラインを
見詰める。それが初めての入院生活で感じた事だった。新陳代謝を主とする生理
の時間。そこでは社会生活の衣は無い。老夫婦の暖かい会話。身体を気遣う手と
言葉の触れあい。4人部屋だった為カーテン一枚隔てて他の患者さんの声がいつ
も聞こえていた。看護婦さんの献身的なお世話。深夜を問わず適確に凛とした振
舞いが見事だった。手と言葉の暖かさにはやはり女性がよく似合う。看護士などと
は言いたくはない。やはり看護婦さんなのだ。娘が東京国立から駆けつけてくれ1
歳ちよっとの男の子を連れて来た。その母親ぶりを見ていると看護婦さんと共通し
て人間の生理の時間に忙殺されている。自分の時間はほとんど皆無だ。幼児と
いう身体のライフラインがすべての存在に母親の暖かい手と言葉が間断なく触れ
ている。環境こそ異なれ病院もまたそういう生活が基本にあるのだ。私以外の3人
の入院患者の夫婦の会話は娘の子供に対する接し方と基本的に共通して感じら
れたのだった。仕事とはいえ看護婦さんたちの手と会話もまた同じ性質のもので
ある。人が生理を基本とする身体のライフラインまで後退した時、言葉に触れ手に
触れその最小限の方法のようなものが最大の直接性を保って存在してくる。注射
の針や点滴の管その他器械的な無機質な医療道具を言葉と手だけが暖かく柔ら
かなものにしてくれる。人が身体のライフラインまで後退した時人は素肌で確かめ
るように手と言葉に出会う。私はきっと死のすぐ傍の領域まで後退したのかもしれ
ない。その時重症とか軽症とか病気の相対性ではなく病院生活の基軸にある身体
の生理のライフラインの線上で人と人を繋ぐ手とことばの暖かい回路を感じていた
からである。

*石田善彦追悼展ー28日(日)まで。am11時ーpm7時
*谷口顕一郎展ー11月3日(土)-18日(日)
*いずみなおこ展ー11月20日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-10-26 10:18 | Comments(2)
Commented by taku 25:00 at 2007-10-26 15:59
退院おめでとうございます。ぼくは、病院嫌いなんですが、助けられてるのは事実です。 入院中って、病院の中を徘徊しまくっておりました。
どうぞ、お体を大切にしてくださいませ。 テンプラやりましょうか?
Commented by kakiten at 2007-10-26 17:19
takuさん>ありがとう、お互いにこの時期入院とはねえ。また元気で
会いましょう!


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