人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2007年 09月 15日

雨降る街角ー秋の序奏(14)

車のタイヤの水を跳ねる音がシャ~ンシャーと近くから遠くへと響く。バッハの「
平均律グラビア集」をかける。お気に入りのジョンルイスの演奏である。このCD
をもう何年も前に若い彫刻家の岡部亮さんに聞かせた事があった。全部で4枚
出ているのだが私は最初の2枚しか持っていなかった。後日残りの2枚を彼が
贈呈してくれた。この時初めて亮さんがこの曲を気に入っているのが分った。そ
の後ある所に彼の描いた豆本があると言って河田雅文さんがニコニコして持参
して見せてくれた。その豆本は5冊組みセットになっていて1冊目はジョンルイス
のCDとの出会いから始まっている物語だった。その主人公はそれから仲間を
集めバンドを作り路上で演奏をしレコーデイングをし最後にある場所でライブを
する。5冊目はそのライブの場所とそこのオーナーと思しき人物の描写で完結し
ている。場所は中森花器店という看板がありその中でタバコを吹かして演奏を
聞きながらカウンターに立ち上がり踊り出したり泣きじゃくっていたりするのは私
と思しき人物だった。そこに描かれた気難しそうな顔をした私は逆立ちしたり跳
び上がったり演奏に合せてはちゃめちゃなアクシヨンをする。カウンターに灰皿
のタバコの吸殻が山のようにあり落ち込んだり泣いたり両手を上げて踊り出した
りする。そしてその最終ページは夜も深けた街角の灯りの洩れる建物の描写で
終っている。ジョンルイスのこのバッハのCDがきっかけとなって昨年1月までい
たあの建物の時間が活き活きと岡部亮さんの絵によって今も甦るのだ。秋の始
めのような雨の降る街角でふっとかっての”燃える街角・器の浪漫”と呼んだ時
を思い出す。ひたむきに憧れに満ちてバッハを弾く晩年のジョンルイスのピアノ
の音色は雨の日によく似合う。今日は昨年10月孤独死した石田善彦さんの一
周忌追悼展の打ち合わせがある。ローリングストーン誌の創刊、新譜ジャーナ
ルの同人と若くして音楽への情熱に生きた石田善彦さんは晩年翻訳家として大
成しながらもその音楽への熱い情熱を甦らせていたのだ。昨年の阿部守展での
花田和治さんと阿部さんと3人が写った写真が残っている。あの場所とこの場所。
ふたつのさっぽろをつないで生と死がある。雨降る街角、燃える街角。今も泣いて
踊って逆立ちする私は変らずに居る。

*阿部守展ー23日(日)まで。17日(月)休廊。am11時ーpm7時
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-26日(火)-30日(日)
*毛利史長・河合利昭展「産土不一致sand which」-10月2日(火)-12日
 (金)
*柏倉一統展ー10月16日(火)-21日(日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)
*谷口顕一郎展ー11月3日(金)-18日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-09-15 12:40 | Comments(0)


<< 海抜ゼロの彫刻ー秋の序奏(15)      貧すれば鈍する-秋の序奏(13) >>