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テンポラリー通信

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2007年 09月 04日

白い廃墟ー秋の序奏(3)

昨日休廊日。門馬ギヤラリーに神内康年展を見に行く。’92年の個展以来なの
で16年ぶりに会う。出身は江別、京都の大学を出て海外イタリア、フランス、カナ
ダに留学し現在は京都在住。1993年に五島記念文化賞美術新人賞で今年同じ
賞を受賞した石田尚志さんと年齢がその分違う。先にANNEXの会場を見て本館
に入る。2会場使うのは初めてと思う。入って故門馬よ宇子さんの娘さんの大井恵
子さんが出迎えてくれる。彼女は陶芸をしている。その通信講座の先生が神内さ
んという縁である。入って奥のソファに神内さんが居た。最初、私と分からずにいる
。変ったなあと言う。しばし見て何が変ったかと自問している。痩せたからでしょうと
言うと違うと言う。色々近況を話していると、そうか、何かが抜けてきたんだと言う。
まあ、いっぱい喪ってきた10何年だからそれはそうだと思う。単純に老けたなあと
いうのでなくて良かった。それからどんどんいろんな話をした。作品は磁器系の白
っぽい肌色の色彩で壷と破片のインスタレーシヨンである。以前は鉄製のメッシュ
に黒い陶土を貼り付けた都市の皮膚のような鋭い作品だったが今回久し振りに見
る作品は先ず色彩が違いより俯瞰する白い廃墟のようである。床に散らばるように
置かれた破片と球の中に壁と屋根だけのステンレスのメッシュの家が建っている。
この眼線は変ってはいない。しかし今は都市の廃墟というより縄文遺跡の発掘現
場のようである。話しをしていて生まれた江別の話にそれが出て来た。幼少時遊
んでいて土の中から土器の破片を取り出した記憶である。江別には豊かな石狩
川を交流地点とする遺跡が今も保存されているのだ。神内さんの原風景がちらり
と見えてくる。明日は先祖のお墓参りで江別へ行くという。発電所や牧場、製紙工
場ゴミ処理場で占拠され、さらに強制移住させられたアイヌの墓地の上に立つ和
人の墓地と濃い歴史の地である。夕張川、千歳川の石狩川との合流地点でもあり
同時に夕張鉄道の旧国鉄線との合流点でもある。近代と現代と縄文と入り混じっ
たままの川辺の港町、その入口なのだ。今回の個展を契機に神内さんの江別が
彼のアイデンテイーに深く関わるだろう事を予感する。京都での孤独を彼はその
まま作品のなかで正直に伝えている。初期の頃からその孤独は変らないと思う。
正直な人なのだ。だからこそ今江別を見据えるべき時なのかも知れない。私はそ
う思う。高校時代の背広姿の友人たちが押しかけてきたのを機に会場を辞した。
外には黒塗りの高級車が運転手付きで待機していた。
今日九州阿部守さんより電話。7日来廊。8,9日石狩。10日展示との予定を聞く
。一昨日は若い3人がじっくりと石田さんの旧作も見ていく。ひとりのソラマメのよ
うな女性が会場の予約を申し込みそうだ。正直な澄んだ人である。詩人でロシア
文学者の工藤正廣さんが来る。自宅全焼の災害に遇い奥さんの知子さんは喉火
傷の重症にありながらも8月未知谷出版から「詩の住む街ーイタリア現代詩逍遥
」を出版した。その本をわざわざ届けてくれる。新聞で笠井嗣夫の書評は読んでい
たので欲しかった本である。自宅の総てを焼失した後だけにふたりの屈せざる気力
に尊敬の念を覚える。裸一貫シンプルに生きていく。人生捨てたもんじゃない。


*石田尚志展ー9月9日(日)まで。am11時ーpm7時
 :上映作品「海の映画」(’07制作)。版画、ドローイングを展示。他に奥スペース
  で「絵馬・絵巻」「フーガの技法」「部屋/形態」「椅子とスクーリーン」「スリー・
  レッド・ストライブスwith足立智美」他を上映。 
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind、for the return」-9月25日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-09-04 12:13 | Comments(2)
Commented by kawazukiyoshi at 2007-09-05 11:31
人生捨てたもんじゃない。
本当にそう思います。
今日もスマイル
Commented by kakiten at 2007-09-05 13:52
kawazukiyoshiさま>有難う御座います。ちょっと落ち込み気味でした
ので<スマイル>のコメント嬉しいです。感謝します。


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