夕方近く東京から映像作家の石田尚志さん来る。初めて足を踏み入れるここの
空間である。眼がすでに自分の空間をなぞっている。”いい空間ですね”と言う。
吉増剛造さん、小山内裕二さん、祢津さんと既に情報としてはそれぞれから聞い
ているのだがやはり実際に見た感じは別であると言う。佐々木さん最終日で人が
次々と訪れて2階吹き抜けのベンチに座ったり回廊を歩いたりと上も下も人が鈴
なりである。午後7時の閉廊後撤去に入るのでそれまで食事をしてこようという事
で例によって何時もの焼き鳥やに向かう。手伝いに来てくれた道教育大の学生ふ
たりも一緒に誘う。ひとりはなんと昨年の村岸宏昭展で岩見沢から来てゆっくりと
見てくれた人だった。お忘れでしょうけれどと切り出されて思い出したのだ。故人の
話から始まり石田さんのカナダの話と話題が飛び交い時間が過ぎた。頃合いをみ
て会場に戻ると作品撤収も最後の段階になっていて5,6人の友人が残り手伝っ
ていた。最後まで佐々木恒雄さんはいい友人に囲まれている。一週間全力疾走で
したと心地よい疲れを顔に滲ませながら佐々木さんが言う。作品も思ったより多く
売れかつ網走から札幌に来た時間のすべてが刻まれた200点近い作品を全部
展示できた事の満足感がそこには漂っている。会期中ずーっと流れていた友人と
の会話録音。この音こそが彼の耕したさっぽろの土、時間そのものであったのだろ
う。その耕された時間の耕土のなかから作品という実りがあったのだ。彼もまた耕
作者のひとりである。既成の場に甘んずる事なく場そのものから空間を造っていく
。村岸さんをはじめ若い彼らの真摯な場と空間に向き合う姿勢に深く共通するコン
テンポラリーな意思に私は心強い友情を感じていたのだ。礼儀正しく時間延長のお
礼の気持ちですと挨拶され何もそんなと照れながらも姿勢を正して受け止めてい
る自分がいた。今日は昼から石田さんの会場造りが始まる。映像の作家だけに光
の遮断と展示のバランスに神経を使う。1日はかかりそうだ。下手すると翌日まで
続きそうと言う。ここでも1から場を造っていく耕作者の時間がまず始まるのだ。
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)am11時ーpm7時:オープニング
=石田尚志トークとパフォーマンスと新作上映。28日午後7時スタート。
略歴ー1972年東京生まれ。現代美術(映像)作家。抽象的な線を描きそれら
をコマ撮りしてつなげるドローイング・アニメーシヨンで知られる。代表作に「部
屋/形態」(’99)「フーガの技法」(’01)「vol2 絵馬・絵巻」(’03)など。
香港国際映画祭、トロント国際映画最、ウオーカー・アート・センター(アメリカ)
などの美術館、国内では世田谷美術館(’03)横浜美術館、横須賀美術館(’
07)などがある。さっぽろではテンポラリースペースで3回目。
「実験映画の一角を既に占められていて、独自の世界を築き上げたあなたは
なお飛躍して最先端のパイオニアになって欲しい。」(草間彌生ー美術家)
詩人吉増剛造、チェンバリスト中野振一郎などとのジャンルを越えたライブ
セッシヨンにも積極的に関り領域を自在に横断しながらの表現活動を展開中。
平成19年度五島記念文化賞美術新人賞。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り入り口
tel/fax011-737-5503