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テンポラリー通信

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2007年 08月 13日

撤去の日ー村岸シーツ(13)

相変わらず暑い日が続く。昨日の最終日も人の切れる事がなくみんなじっくりと
記録集のファイルを見ていく。暑い中ひたすら故人の痕跡を辿っている。閉廊時
間を過ぎてもまだ人が残り話している。また机をセットし表で涼む。お母さんが食
べ物を買って来てくれる。音楽の南聡先生ご夫妻もゆるゆると外で会場を見てい
る。福井さんのキャンドルをまた点ける。南先生が奥様に囁いている。ほら、灯り
が映っているだろう・・。ひとり、ふたりと外に出てきてぼんやりと会場を外から見
ている。夕闇が濃くなりそれに比例して内が明るさを増し左右のガラス越しの光
景が深みを増してくる。白い円錐形の部屋がモノクロームの美しい翳を落として
いる。人が絹糸に触れ、人も糸も鳴子の竹も真鍮も錘と共に明るく揺れている。
対照的な光景が板一枚の仕切りの壁の左右に展開している。キャンドルの灯り
が糸と人が揺れている下に燃えて見えている。静と動の静かなコントラストが美
しい。椅子も出してお母さんもゆっくりとして芸術の森の学芸員の今井さんと話し
ていた。明日は一周忌の法事があるにも拘わらずここでのひと時を惜しむように
今の話す時間を楽しんでいるように見える。死者の遺したさまざまな想いの痕を
みんなが辿りそれぞれのフロッタージュを浮き上がらせていた。そんな展覧会だ
った。新たな発見もそこにはあった。音、写真、美術、文・・。そして何よりもその痕
跡から伝わる生き方の眼差しを共有したと思う。それは親である人もまた同じだっ
たと思う。私はお母さんの気丈なしかし時としてきらきらと輝いた眼を思い出しなが
らそう思っていた。死者もまた時に雄弁であるのだ。生と死という絶対的に見える
壁もまた時としてベニヤ板一枚の背中合わせの宙の存在なのかも知れない。蝋
燭の灯が風に揺らいでふっと消えたかに見え、そしてまた点いた。

*及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-18日(土)午後6時~
 予約2500円当日3000円:さっぽろで知った糸田ともよ歌集「水の列車」を唄で
 読み解く及川恒平の新たな挑戦。北の透明な魂の新たな根拠を問う。
*Psalmライブー19日(日)午後6時~入場料1000円:南の美しい不知火の海
 から生まれた映画「もんしえん」のテーマ曲を携えての全国ツアー。北のニ風谷
 から始まり帯広ー夕張ー札幌と続き秋には熊本までと展開します。
*佐々木恒雄展「crickers「-21日(火)ー26日(日):網走出身の新鋭作家。骨
 太な構成力ある作品を展開。
*石田尚志展ー28日(火)-9月9日(日):東京在住の天才映像作家。さっぽろ3
  度目でこの空間では初の個展。また何かに火が点く。
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日):昨年に続く2度目の個展。今年は石狩
 河口をテーマに展開する。九州在住の鉄の造形作家。
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日)
 :青森出身の若手作家初の個展。故郷の白い土を素材にさっぽろの今を問う。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り
 tel/fax011-737ー5503

by kakiten | 2007-08-13 15:29 | Comments(0)


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