2007年 08月 06日
かわるがわる人が来て展示作業が続く。入り口部分の壁ができ円錐形のコーン の接着が完成する。3000個近いパーツがみんなの手で作られ壁の天と左右に 貼り付けられる。消音装置のイメージである。その部屋をくぐって中に入る。すると 絹糸に天井から吊られた真鍮と竹製の鳴子がランダムにぶら下っていて触れると 音を発する。環境と身体との触れ合いが音を生む。消音設備の部屋はその禊(み そぎ)のようなものだろうか。音への純粋化装置とでもいえるものだ。夕暮れの外 から見るとこの白い円錐形で覆われた部屋が美しい。正面入り口半分はその部屋 への導入部になりあと半分は閉められたままでそのガラスを透してを見える絹糸 の幾重もの線が雨のようだ。外の路面から見、そして内へと入って人は身体ごと 新鮮な音の体験をするだろう。眼から入り、消音装置の白い突起物の部屋をくぐり 絹糸の鳴子の空間に入って身体は音と眼の触れる世界を体験していく。純粋な音 の世界への禊(みそ)ぎと体験の装置なのだ。吊られた絹糸の間を触れながら通 る事で自然に発生する音の波間。動く事が音を発する。作家の純粋な音への探求 心を実感させる展示である。彼は音楽の発生する環境を自ら創ろうと志していたの だろう。それはあたかも漁師が山に木を植えるように自らがその環境を基底から創 ろうと志していた事に似ている。従来の既存の音楽環境の枠を越え一からその環 境をいわば美術的表現形態をとりながら創ろうとしていたのだ。既存の枠に安住す る事の古さ、駄目さを彼は直感的に見抜いていたのである。この環境のオーバーフ エンスの意識こそが優れてコンテンポラリーな彼の志した位置である。この環境に 対する敏感な感受性は最後の個展となった白樺を抱きそこに川の水音を聞く装置 に至ってさらに環境社会に対する鋭敏な眼と耳を獲得しつつあったと思える。今改 めて志し半ばで水死した彼の目指した方向性を思う時さらにラデイカルに時代と社 会環境と対峙しながらジャンルの閉鎖性を打破し純粋な音の可能性を通していくつ もの同時代の闘いをきっと実現していただろうと思われ口惜しむのである。五体五 感全身で生き抜こうとしたその火照りのような志の火種は、しかし今も人を惹き付 けてやまないのだ。昨夜も多くの人たちが会場造りに関ってくれた。昨晩ほぼ徹夜 のようにして今朝展示が完成に近付いていた。作家不在でも人は彼の心を知り出 来るだけ、出来る範囲で再現しようと試みる。これはもう彼の遺したシナリオを再生 する関った個々の人の作品ともいえるものである。<木は水を運んでいる。>そし て今、<人は村岸宏昭を運んでいる> *「木は水を運んでいる」-村岸宏昭の記録展ー8月7日(火)-12日(日) am11時~pm7時:併催ー遺作コンサート10日(金)午後6時~於ザ・ルーテル ホール(大通り西6):追悼ライブ6日(火)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北 14西3)7日(火)午後7時~於カフエエスキス(北1西23) *及川恒平ライブ「だきあえぬうお」-8月18日(土)午後6時~予約2500円当日 3000円 *Psalmライブー8月19日(日)午後6時~入場料1000円 *佐々木恒雄展「crickers」-8月21日(火)-26日(日) *石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日) *阿部守展ー9月11日(火)-23日(日) *中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)-30日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2007-08-06 10:50
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