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テンポラリー通信

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2007年 07月 02日

旧鶴岡学園の壁ー夏の旗(24)

日曜日午後から藤谷康晴展「IN MY BLOOD」を見に行く。at gallary new
starという名前で場所は南3条通りにあると聞いていたので大体の見当を付けて
いたが着いて驚いた。心中に目印に思っていた旧鶴岡学園の建物そのものの脇
だったのだ。旧栄養短期大学そして高校と鶴岡トシさんが経営していた学校法人
の本部があった建物である。石山軟石で出来た洋館である。薄野に近いところで
3階建てのこの洋館は貴重な建築物といえた。周囲は向かいが旧西創成小学校
で今は資生館小学校という化粧品会社みたいな名前になっている。北東角の交
番は変らなくあるが旧鶴岡学園の建物以外は高層マンシヨンが林立し小学校も
モダーンな建物で小学校という面影はあまり無い。また鶴岡学園の建物も白ペン
キで塗られ1階部分に2店舗あり横文字の看板がかけられ西部劇にでてくる店の
ようだった。その建物の東側に軟石の壁が北に向かってここだけはそっくり残って
おり細い路地に沿って長く奥まで続いている。その軟石の壁の内側に南を正面に
1・5m程の入り口があり奥が5m程の空間がギヤラリーであった。そこに藤谷さ
んが線をフロッタージュした紙を紐のように貼り付け露出した軟石の壁に這わせ
ていた。外に出て路上の亀裂や露地の軟石の壁を擦り出し会場に貼り付ける、そ
んなく繰り返しのライブドローイングが今日1日続いているのであった。江別の木
村環さんの個展会場で会った人たちも多く詰め掛け木村さんも来ていて何か昨日
の続きにいるような気がした。近くに住む酒井博史さんが来たので軟石の壁を教
えるとどんどん露地の奥まで歩いていき姿が見えなくなった。もう一人の写真を撮
るA君を誘って我々も奥まで進んだ。30m程も進むと石の壁の崩れ落ちた穴があ
りどうやらここから更に奥に入ったらしい。声をかけ我々もその穴から潜り込むと狭
い草茫々の空き地に出て酒井さんが居た。一緒にさらに奥へと進み突き当たりの
シャッターをこじ開けるとそこは狸小路7丁目の商店街ブテイックの横だった。この
石山軟石の壁はタイムトンネルのように近代と現代を繋いでいた。偶然だろうが藤
谷さんがその軟石の壁に<IN MY BLOOD>とタイトルして文字通り血脈のよう
に壁や路上の亀裂を貼り付けている。近代を支えた代表的な建築素材石山(札幌)
軟石が血脈を浮かせて頑として存在を主張しているようである。道庁の赤レンガ、
旧高等裁判所の石山軟石とさっぽろの近代建築を代表する建物の素材は煉瓦と
軟石である。いわゆる洋館という構造はこのふたつの素材と木の組み合わせによ
る。旧鶴岡学園本部の建物もそうした近代を表現する建物である。白ペンキとネオ
ンの看板で安っぽく見る影もないがこれもまたアメリカ的な戦後の近代であるだろ
う。かって花器店を営んでいた頃この学園本部には年一回は訪れていたのだった
。学長の鶴岡トシ先生は生け花をこよなく愛し自ら経営する学校の必須科目として
華道を正規授業に加えていたのだ。従って入学式の後教科書と同様花器華道具
の販売も依頼されていたのだ。多い時は毎年500人以上の入学者がいた。そんな
事で入学式の後は必ずこの本部にお伺いし報告をしていたのである。だから建物
の内部は今でも目に浮かぶ。高層マンシヨンの谷間にひっそりと露地側の軟石の
長い壁だけが往時の面影を残している。かって定山渓に近い石切山から石を切り
出しそれを運ぶ幹線道路を石山通と呼び今に至っている。その通りの東側の道路
を東屯田、西側を西屯田と呼ぶから石山通の前の名前は屯田通だったと物の本に
書いてあった。札幌軟石とも呼ばれた石の文化は近代の正統な遺産でもあるが今
はそれすら消滅の危機にある。個人の建物としてあった旧鶴岡学園の石山軟石の
壁はまさに正統な近代の血脈の瀕死の壁であるのかも知れない。

*後藤和子展「青焔sei-en」-7月3日(火)-15日(日)am11時ーpm7時
 月曜休廊:長年青色を追求する作家の青の伽藍、青の森翳。見て感じて下さい。
*石川亨信展「each pulse、each tempo」-7月17日(火)-29日(日)
 石狩で僧侶をする作家の祈りの版画。門のようにそそり立つ展示。
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 :昨年8月川で遭難死した若き天才の追悼展。昨年7月個展と同タイトルで故人
 の記録とインスタレーションの再現を試みる。併催ー遺作コンサート8月10日(
 金)於ザ・ルーテルホール(大通り西6丁目)・追悼ライブ8月6日(月)於ライブ
 ハウス「LOG」(北14西3)
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り
 tel/fax011ー737-5503

by kakiten | 2007-07-02 12:48 | Comments(0)


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