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テンポラリー通信

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2007年 06月 28日

仕事と志事ー夏の旗(21)

心のハンコ屋さん酒井さんではないが生業と志(こころざし)の仕事がどこか重な
ってあるのが人間として素晴らしいことであると思う。従って純粋芸術を志す人も
生き方としては生業と志す方角が当然重ならなければならない。そこを避けて美
味しい所ばかりを漁る器用な人間は基本的には芸術家とは呼ばない。政治経済
の基盤に集(たかっ)て寄り添い助成金や公共事業のパブリックワーク内アートに
なつたり金満家の資産に文化の名前で集(たか)る人たちが自らの汗と労働の仕
事(ワーク)を語る資格はないのだ。ヨーロッパにいるアーテイストの友人は日本
と彼の地の違いは靴屋さんは靴屋さんの目でパン屋さんはパン屋さんの目で作
品を見てくれ対等に話してくれる。そして本当に気に入った時はその範囲で購入
してくれる。その水平な視線が嬉しかったと言う。日本では芸術家への目線が上
か下にしかなく対等のワーク(労働)の視線が無かったと言う。自らの全力の仕事
を認められそして購入されそれを生業としていく事が可能な土壌を真の文化の土
壌という。その苦労と研鑚は一般のワーク(仕事)と同じ汗の労働である。ただ目
的が用というものから直接的には遠いように一見思え、人間の心というもうひとつ
のかけがいのない領域に深く高く根ざしている分狭い領域の<用>からは見えづ
らいだけである。アメリカ型の用の文明が世界を凌駕している現在、文化の領域
の畑の耕作はもっと地道な辛抱強い努力が求められる。耕作の事を英語でculti
ーvateという。そしてその動詞が名詞になってculture(カルチヤー)となる。耕作
するーカルチベイト(cultivate)抜きに文化(カルチヤー)はない。登山に例えれば
裾野ー中腹抜きに頂上はない。真っ直ぐ一直線に頂上がTV塔のように突っ立って
いるのは文化ではなくタワービルのように機械が支配している文明の便利装置物
であって歩く、登るを省略したワーク(労働)の無いノッペラ棒のカリントウみたいな
ものである。最近も誰かに言われた。悪意ではなくいわばお節介の部類だが”こ
んなに周りに才能豊かな人たちが集まっているのだからあなたも何かしたらどうで
すか”と言われた。私に歌を唄うとか楽器を演奏するとか絵を描くとか何かそういう
ものを要求したのだろうけれどそれは違うと一言ではねのけたら困った顔をしてい
た。自分は何であるか。酒井さんほど優れてはいないがやはり花器屋なのだろう。
文化という花の器屋であるだろう。あるいは人という花を受け止めている花器屋な
のだ。今はギヤラリーという函がその器である。生け花道具の専門店ではもうない
かもしれないが文化という花の為に人も含めて支えようとしているのだ。先述の英
語でいえばカルチベーター(cultivator)-耕作者という事になる。さっぽろの文化
の土壌を耕していく者として位置付けている。何を植えるか何が咲くかそれは土壌
の質から生まれ春には春の、秋には秋の、花と実がなる。そしてその収穫以前の
土の選別、耕す行為それがカルチベーターの仕事である。公園や公共空間の花
壇のように束の間の移植、テナント文化は志事にはない。農夫や漁師が作物や魚
そのものになる事は無い。今求められているのは収獲する前にその環境をRepu
ーblicする行為その環境を創る人である。文化にもそれが必要なのだ。さっぽろと
いう土壌をカルチベート(耕して)いく。仕事と志事は両輪の輪である。

*屋比久純子・藤原典子展「LALALAガラス展」-29日(金)まで。
*後藤和子展「青焔sei-en」-7月3日(火)-15日(日)
*石川亨信展「each pulse、each tempo」-7月17日(火)-29日(日)
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 -遺作コンサート8月10日(金)午後6時~於ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 -追悼ライブ8月6日(月)午後7時~於ライブハウス「LOG」(北14西3)
*佐々木恒雄展ー8月21日(火)-26日(日)網走出身の骨太な新鋭作家
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)映像の天才作家東京在住
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)九州の鉄の作家昨年に続き来札
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日ー30日(日)
 青森出身の若手作家初の個展
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-06-28 13:14 | Comments(0)


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