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テンポラリー通信

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2007年 06月 22日

ナウシカと腐海ー夏の旗(15)

昨夜小樽の詩人の高橋秀明さんとTさん石狩の大島龍さんが弔問に訪れる。久
し振りに会う。弔問後桜ムーンに行く。ここも久し振り。かって円山の裏参道にあ
った頃はトマトムーンという名前のお店だったと聞く。裏参道がまだマンション街
になる前は夕陽が大きく見えトマトのようだったのでそう命名したという。夕陽が
視界から消えてその街を去り今の所に引越し古い洋館の庭の桜の木からさくら
ムーンと名付けてたと聞いた。かって円山北一条ゾーンにはこうした洋館が沢山
あった。鬼窪邸、小熊邸、・・。ほとんどが消えた。正統な近代を伝える洋館は明
治大正の和の技術と西洋の技術ががっぷり四っに組んで出来た日本独特の建
築物である。純粋な西洋建築でもない。伝統的な日本建築でもない。いわばふた
つの文化がトランスして新たに創ったものである。そこには透明な(transparent
)日本の正当な近代がある。さっぽろの優れて伝えるべきものはその正当な近代
の継承にこそあるのに現代という化け物はその唯一の文化さえ踏みにじっている
。黒澤明の「白痴」に残る映像のさっぽろはもう殆んど消滅しているのだから。自
然だけではない。微かな文化的遺産さえ滅ぼそうとしている。故村岸宏昭さんの
集まりが今夜ある。8月の追悼展に向け最終調整に入る。その村岸さんの愛読
した「風の谷のナウシカ」全巻を初めて読み終え映画とはまた違った後半の盛り
上がりに感動した。特にラストの光の神と対決するナウシカの言葉がいい。絶対
清浄を理念とする神に対しナウシカは言う。<清浄と汚濁こそが生命だ・・・苦しみ
や悲劇やおろかさは清浄な世界でもなくなりはしない、それは人間の一部だから
・・・>。神は言う<お前にはみだらな闇のにおいがする・・。お前は再生への努力
を放棄して人類を亡びるにまかせるというのか?>ナウシカは答える。<その問
はこっけいだ 私達は腐海と共に生きて来たのだ 亡びは 私達のくらしのすでに
一部になっている>。腐海と共に生き、絶対理念の清浄理念と対峙する生き方に
私は私達の時代をどうしても重ねてしまうのである。<亡びは 私達のくらしの
すでに一部になっている>。

*屋比久純子・藤原典子展「LALALAガラス展」-29日(金)まで。月曜休廊
*後藤和子展「青焔seiーen」-7月3日(火)-15日(日)
*石川亨信展「each pulse、each tempo」-7月17日(火)-29日(日)
*村岸宏昭の記録展「木は水を運んでいる」-8月7日(火)-12日(日)
 -遺作コンサートー8月10日(金)午後6時~ザ・ルーテルホール(大通り西6)
 -追悼ライブー8月6日(月)午後7時~ライブハウス「LOG」(北14西3)
*佐々木恒雄展「2」-8月21日(火)-26日(日)
*石田尚志展ー8月28日(火)-9月9日(日)
*阿部守展ー9月11日(火)-23日(日)
*中嶋幸治展「Dam of wind for the return」-9月25日(火)‐30(日)
*毛利長史・河合利昭展「SAND WHICH」-10月1日(火)ー14日(日)
*石田善彦追悼展ー10月23日(火)-28日(日)
*谷口顕一郎展ー11月3日(土)-18日(日)
 於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-06-22 11:08 | Comments(0)


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