2007年 05月 14日
静かな気負いのないしかし溢れる流れのライブだった。場が保つ時間の層のよう なものが使う人見る人によって空間に蓄積され空間の質を高めていく。そんな事 をあらためて知らしめてくれたような暖かい配慮に満ちた歌声だった。ゆっくりと トークを交えながら2時間ほど最初はノンストップで予定されたようだが途中休憩 を入れ静かに深く水底に触れるように唄声が満ちていく。福井優子さんの水と緑 をイメージしたキャンドルが微かに揺らいで水のように凪いでいた。酒井博史さん の時と比べると灯りの揺らぎは一層穏やかで今回の及川さんの唄の姿勢が見え ていた。その違いは良し悪しではなくふたりの唄への姿勢の違いがそのまま目に 見えたのである。終演後沼田康弘さんが座布団か枕をもって黙って聞いていた かったなあと語っていたがそのリズムが今回の及川さんのリズムだった。<しか も、もとのみずに>という今回のタイトルの通りある定点のような原点のような< 水>その確認が基底にあったように思われる。しかしその水面は波立たなくとも 水底は深く濃い水が満ちている。この場への及川さんの想いとはそういうものだと 私は感受していたのだった。終演後その深い水のあおりを敏感に感じたかひさん はふらふらといつの間にか表へと出て大通りまでひとり放浪し漂流し連れのともよ もんさんを放ったらかして消えたため何処へ行ったかと探す羽目になったのだ。キ ヤンドルの灯りを撮影している内に多分灯りの揺らぎと及川さんのその日の声の 保つ水の深さのようなものが多重露光のように心に重なったに違いない。特に後半 唄われた糸田ともよの短歌をアレンジした新作の数々は傑作でこの唄の正式な録 音が待望されるのである。前のテンポラリースペースで醸成され今また更なる熟成 を経てこのふたりの作品はある輝きを間違いなく獲得しつつある。葉脈コンビのか ひさんはその事を一番真っ直ぐに受け止めたひとりである。彼女は打ち伏せるよう にその凄さに打たれ漂流したのだ。そこに至る約2年近い時間の深さが今回のコ ンサートの水面の下には函のように澱んでいる。そしてそこから溢れた静かな流れ が彼女を浚って行ったのだ。溢れるままに。沼田さんと及川さんと私の3人のささ やかな二次会では東京の役者時代の話でふたりは盛り上がっていた。歌い手で はないもうひとりの及川さんがそこには居た。初めてソロの及川ライブを聞いた 沼田さんはまだ言葉にならない多くのインプレッシヨンが心の底に埋まっているよ うだった。このふたりの異能はいつかどこかでまた巡り会い火打石のように光るだ ろう、そんな気がした。
by kakiten
| 2007-05-14 18:19
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Comments(6)
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かひ
at 2007-05-14 21:48
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中森さんのところで歌う恒平さんのライブには、いつも魂を揺さぶられます。
今回も覚悟をしていたのですが・・持ちこたえらず流され漂流してしまいました。 ご心配おかけしました。次回は、どうなるのかなぁぁ・・・・
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kakiten
at 2007-05-15 11:46
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かひさん>ほんと、心配しましたよ。お連れのともよもんさんが泣きそう
(?)な顔して何処へ何処へ行ったの!と探していました。灯りは激しく 揺れなかったけれどかひさんの心が激しく揺れたのですね。お陰で 文章書けました。ありがとう!
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killingyousofty at 2007-05-17 20:50
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kakiten
at 2007-05-18 11:41
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killingyousoftyさん>モエレ沼ガラスのピラミッド館から興奮して電話
きてましたからいずれそこで上映という目論見のようです。段々気が 集まってきますねえ。こちらも準備に受け皿作り進めましょう!
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killingyousofty at 2007-05-19 10:59
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kakiten at 2007-05-19 13:53
killingyousoftyさん>そうだよね、面白くなってきたよね。
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