2007年 05月 07日
久し振りに旅に出た。とはいえ早朝4時起きの千歳発7時半発だから電車と飛行 機の乗り継ぎが大半だ。これは旅ではない。移動である。飛行場は規模の違い こそあれ同じ光景である。電車もそうだ。移動の連結に過ぎない。羽田に着くと 今城さんがいた。新しくなった羽田のプラザを上まで廻る。珈琲を飲み煙草を吸 おうとするが何処も禁煙。飛行場の身体検査も念入りで3回も引っ掛った。しば らくぶりの移動、管理体制が凄い。テロ防止と煙草。健康と安全。レッテルを貼ら れて認可,許可、移動である。モノレールに乗り上野。そして常磐線に乗車。一路 水戸へと向かう。上野で石田尚志さんご夫妻と合流。同じ車両で席を囲む。この 辺から旅モードになるが体調が変だ。具合が悪い訳ではない。飛行機の安全管理 の丁重な強制移動のスピードと北へ戻る電車の移動のスピードの差異がズレを生 んでいるのだ。同じ5月でもさっぽろの皮膚感覚と東京羽田の皮膚感覚では違う。 そして景色が無い。電車は再び北へと向かい車窓に景色が戻るのだ。境目が復活 して来る。そして遠い記憶が甦る。学生時代はいつも青森ー上野の常磐線だった から時間軸が現在と過去を繋ぐのだ。車窓の風景とともに。かって妹が水戸へ嫁 ぎ一度水戸に行ったことがあった。その記憶も甦る。急速な移動と風景とともに重 なっていく旅とに心と体がぶれていた。昼過ぎ水戸に到着。タクシーに相乗りして 水戸芸術館に向かう。街中に程近い一角にそれは在った。街路の街並みの続き に面して建物があり内部に入ると水の飛沫がガラス越しに見え中庭の噴水が日 常を転換する。この切り換えは建築家の意図に拠るものだろう。札幌の近代美術 館のように広い前庭がないから街並みの延長で建物があり入って空間が水の飛 沫とともに転換するのである。学芸員の森司さんほかの出迎えを受け奥で昼食の 弁当を食べつつ打ち合わせをする。午後1時半スタートで午後4時頃までを目途に と言う。その前にまず会場を見て廻る。大木さんが最後の編集に入っている。「メイ 4」最新の作品だ。今年で4年目。5年かけて一つの作品に仕上げる。完成1年前 の一区切り。会場に入るとさっぽろから来た北大生の成田尚吾さんが居た。彼は 「朧夜の底」という美術批評のブログを立ち上げていて最近親しくしている友人であ る。2年前札幌から東京に引っ越した石田尚志さんの親友小山内裕二さんも来て いた。同じく2年前に札幌から東京に引っ越した中尾峰さんも来ている。やがて学 芸員の森さんが綜合司会をし「メイ」の上映が始まった。50分の作品だ。上映後 マネージャーの藤田敏正さんが我々の紹介と進行を担当する。私はまだ旅のぶれ が残ってそんなふたつの5月を話す。さっぽろの激しい燃える5月。ここ水戸の初夏 のような5月。その狭間の濃さのずれ。メイとはさっぽろの私にはその季節の狭間 の濃さの象徴のようにある。石田さんは初期の大木さんの作品から説き起こし今 回の作品の素晴らしさを悶絶と表現し称えた。大木作品を良く知るひとりとしてこれ 以上ないゲストだったと思う。大木作品総体の輪郭を先ず石田さんが描いてくれた のだ。私にはそうした蓄積がない。では何故ここに招かれたのか、その事を大木さ んが語る。ここに存在してくれるだけで要となるのです、それだけで意味がある、そ んな言葉だった。確かに会場に展示されている絵コンテの数々に私の名前が中心 に描かれていたり様々なキーワードのような文字はかって私が語った言葉の数々 の断片だった。メイはメイサクです、などと誰も笑わない駄洒落を飛ばしてから段々 調子が出てきてあっという間に4時になった。これから本番だったねえと石田さんも 大木さんも呟いた。大木さんが初めて多摩っ子という出生の話をしノックというキー ワードを発したのだ。私は入口という世界と自己を繋ぐイプッーイパルというアイヌ 語の入口の考察を展開しかけていた。出口という概念の稀薄さを自然界のなかで 語りたかった。その後夜の打ち上げは駅近くの居酒屋で20人近く集まり行われた 。途中今城さんがここは水戸というよりさっぽろみたいと言って笑った。そう、ここは 水戸のテンポラリースペース。初めて来て初めて大木作品を見初めて会う人のな かで成田さんが凄く感激して作品「メイ」について熱く語り涙しそうな顔が今日の凡 てを語っていたなあ。
by kakiten
| 2007-05-07 13:48
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Comments(4)
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SPI
at 2007-05-07 17:23
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中森さん、今回は水戸で中森さんの大木さんに関しての話をうかがう機会ができ、石田さんも加わり、奇跡のような瞬間でした。
体調の優れない中、こうしてお越しいただいたことに感謝しています。 また最新作を、インスタレーションではなく、きちんとした上映として一緒に鑑賞し、そしてそれについての皆様のトークを聞けたことは、大木作品をとらえる上で非常に重要なワードをたくさんいただきました。 それらの宝物のような言葉を、概念を、今度の新作撮影にも生かしていきたいと思います。 本当にありがとうございました。
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killingyousofty at 2007-05-07 23:30
中森さん、大変お世話になりました。
もっともっと色んな作品が見たくなりました。 そしてもっともっと作品に迫りたくなりました。 翌日横浜美術館行ってきました。 石田さんの作品、硬質の叙情のようなものを 感じてどうしようもなく鳥肌が立ちました。 あんな強く、詩的な作品が見れるなんて思っても いませんでした。 またお邪魔いたします。 ありがとうございました。
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kakiten at 2007-05-08 10:50
SPIさん>羽田までお迎えご一緒して頂き有り難う御座いました。
石田さんご夫妻と4人の常磐線も楽しかったです。何か行けた事に 多くの意味があったようです。トークは石田さんのご参加が大きか ったと思います。メイの5年目が面白くなりそうですね。メイ共和国 REーメイ=革命。がキーワードかな?
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kakiten at 2007-05-08 10:54
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