陽だまりのなか今日も木村環さんが描いている。机を用意したけれど床に座り2
種類のペンシルを片手にひたすら描いている。陽だまりの暖かさと明るさが描く
のに快適なのだと言う。細かい線で埋めていくのに陽光の明るさがいいと言う。
それとこのところの寒さの戻りに陽だまりが暖かい。午後の陽の移動とともに場
を移動する。猫みたいと言って笑った。作品が出来る度に結び目を解くみたいに
閉じていたものが毎日ひとつひとつ解けていくと言う。陽だまりのなかで凝結して
いたなにかが解(ほど)けていく。それが作品になっている。描かれた頭部から
幾つもの顔が胞子のように広がって飛んでいる。もうそこにあの悪意の翳はない
。ほとけのメルヘン。灯りのマンダラ。。ふんわりと立ち昇り、ふわりと揺れている。
公開制作という今回の方法は木村環の世界がゆるやかに変化しつつ解けていく
過程を見せている。灯りは灯りのままに。ひなたはひなたのままに。かって彼女
の描く頭部の周りを閉じて浮遊していたシニカルな胞子のようなものは開き、ほ
どけて、ひだまりに跳んでいる。あと10日あまり、作品はさらに展開していく。
そして年末の藤谷康晴さんとのジョイント、ふたりのライブドローイング展まで彼
女の陽だまりは繋がっていくのだろう。
先日夜、自転車での帰路エルムトンネルの上で無灯火の自転車と正面衝突した
。あっという間の出来事で相手は図体の大きな詰襟の学生だった。応援団か体育
会系の人に見えた。自転車もハンドルが横一直線で大きく私の方が飛ばされた。
倒れたが怪我は無く何度も大丈夫ですかと聞かれた。大丈夫と言って立ち上がり
再び自転車に乗ったが空回り。チェーンが外れている。仕方なく暗いので押して
帰った。翌日自転車修理工場でバイトした事のある中川潤さんに電話で相談。簡
単だよと一言。あっさりと言われて逆に不安になる。それでやはり詳しそうな山内
慶さんにもメールする。すると今日ふたりとも来てくれて私が昼食中にもう直って
いた。木村さんの作品とは全く関係ないが夜はやはり灯りを点けて自転車に乗ろ
う。そしてふたりの友情という灯りに感謝。まあ無器用な私には過ぎた友だと思う
のだが。