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テンポラリー通信

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2007年 04月 18日

翳は翳のままにー春のにおい(55)

翳は翳のままに、影は影のままに、ゆらりと立ち、ゆらりと震える。人の心に潜む
悪意のメルヘン。毒の無い生物などない。イカにもお芋にも牛にも鳥にも。翳のな
い水銀灯、影のない蛍光灯。深夜のコンビニ。でも隠しようも無く黒々と立ち上が
るその上、囲む無人のビル。夜は明白だ。昼は曖昧。白昼に翳は狂気のように潜
む。そこから植物のように形を顕す悪意のメルヘン。人間の毒。毒を中和しあるい
は消したふりをする仮面を前提とする均一な嘘ののっぺらぼう。光だけを増幅する
翳を消す過程。その清潔安全の嘘こそが真の毒だ。木村環の描く悪夢のようなメ
ルヘンにはそういうメッセージが篭められているようだ。隠花植物のような人間の
顔。そこから萌え出す梢、時にはみ出た眼、鳥の巣、砂丘のような頭部。これらは
みな正統な人間の翳から萌え出ているのだ。正統な悪意。薬一方の効用能書きを
嘘と見抜く正統な毒。毒には毒を持って制す。薬漬けの毒に対峙する心の、精神
の正統な毒。その萌芽を丹念に育てる事。それが唯一白昼の増幅された翳の無
い敵と闘う手段である事を彼女は直感的に見抜いているのだ。衛生安全で薬効と
化した社会の毒と闘う為には。灯りの揺らぎが照明だけを効能的に増幅させた時
揺らぎの翳は死ぬ。翳は翳のままに。毒は毒のままに。それが正統で真っ当であ
る事を証明すること。それが木村環の絵画の芯にある闘いのありようなのだと思う
。表現は美という衣を鎧のように纏いながら美に流されずその身体を闘いの筋肉
の梁で支えられている。その事実を抜きにコンテンポラリーな共感はない。
効能を増幅した食、住が反転して凶器の毒として襲い掛かる。<頭と手の間に機
械が入って分断してしまった。>ー「海からの贈り物」リンドバーグ夫人(落合恵子
訳)この40年以上前に<機械>と表現された頭と手を分断する増幅装置の存在
はそれからあらゆる場面で翳の存在を消す装置として揺らぎを消し定着しているの
だ。政治と経済の利便的合理主義から発するこの毒に文化の軸足からどう対峙し
回復していくか、そのひとつの答えが木村環の描く正統な毒の復権という視点でも
あるだろう。

*木村環展「LIFE GOES ON」-4月17日(火)-5月6日(日)am11時ー
 pm7時(月曜休廊)於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-
 8北大斜め通りtel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-04-18 12:07 | Comments(0)


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