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テンポラリー通信

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2007年 04月 05日

冬の廃墟ー春のにおい(45)

福寿草やクロッカスやフキノトウが古い家屋の庭先にちらりと見える。土が生きて
いる所に春は具体的だ。土の無い路上は冬の残骸、冬の廃墟のようだ。展覧会
の消えた白い箱。寒気が身に沁みる。そんな午後ドイツから帰国した堀田真作さ
んが顔を出す。奥さんはまだハンブルグに滞在中との事だが本人は一足先に帰
国し意気軒昂だった。会場構成や反響を事細かに語ってくれる。普通一般にドイ
ツ人の反応は時間がかかるのだそうだが今回は即異例の速さで反応があり周り
も吃驚していたと言う。私の文章が効いたとお世辞だろうけれどそう話してくれた。
作品だけでなくその展示の物語性も大事だったと言う。実際の展示の様子を写真
ででも見たかったが話に夢中でその事を双方とも忘れていた。変形の決して広い
空間ではないらしいが石をエントランスに敷いたり日本的な庭のイメージも工夫し
たようだった。主に建築家の人たちにも好評だったようで堀田さんの銀一色の巨
大な屏風のような作品は非常に新鮮だったのだろうと思われた。ここでの冬はい
つも空がどんよりとして十勝のように真っ白で真っ青ということがないのよとギヤ
ラリーを経営しているSさんが言っていたがそんな風土には堀田さんの作品はあ
る種のインパクトをもって見られたのかも知れない。またゾーリンゲンやヘンケル
等の刃物文化を伝統としてもつドイツの職人気質の風土に日本刀の刀身のような
堀田さんの作品の質感は異質であると同時にある共感の下地をも併せてあった
のかも知れないとも思う。肉や骨を叩き切る質の刃物と植物や魚を捌く刃物の質
は明瞭に相違するのである。日本の刃物の方がより繊細な切れ味なのだ。お刺身
を切る時ぶった切るように切っては素材が死ぬ。花を切る時も切り口は繊細でスパ
ッと切らねば美しさが削がれる。堀田さんの作品にもその日本的な繊細さが作品
の表面の仕上げに反映している。従って銀一色の表面の斑は繊細で一様ではな
い。しなやかな強さと剛の強さは似て非なるものでその違いが美術として新鮮に
感じられたのかもしれないとも思う。全くの異質ではなくある共通性があっての異
質なのだ。そんな事を堀田さんと話していて想っているうちにプラハプロジェクトの
大橋拓さんが来た。大橋さんの予備校時代の先生が堀田さんだったという事で
また別の話でふたりは盛り上がっていた。新しい場所を得たプラハの新たな展開
を報告方々来た大橋さんは堀田さんと思いがけない再会をして嬉しそうだった。彼
が持参したビールはあっという間に無くなった。何もない白い空間にも生きた土の
ように人の土壌があってフキノトウのように話の花が咲いていた。ここに冬の廃墟
はない。

by kakiten | 2007-04-05 13:08 | Comments(0)


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