ドイツ・ハンブルグで個展の堀田真作さんから電話と奥さんからのメールが来る。
<オープニングが終了しましたが、驚くほどの好評で、嬉しい限りです。始まって
以来の反響とのことで、堀田はすっかり舞い上がっております。・・・中森さんの
テキスト、非常に効果が高く、ドイツ人は文脈好きなのか、みなさん熱心に目を通
してくれていました。有り難うございました。>と奥さんからの初日の反響の報告
だった。私の拙文が役に立ったようで嬉しい。堀田真作さんの作品はヨーロッパ
で評価されるだろうということは予感としてあった。ただどう提示していくかそのキ
ユーレートの仕方が大事だった。今回ハンブルグ在住のSさんという優れて情熱
的なキューレーターを得てこの仕事は道筋が着いたのだった。私は堀田さんの
故郷トカプチ=十勝の風土と彼の作品が保つある激しい気品を日本の稀有な革
命時代安土桃山時代に重ねて素描を試みた。日本であり、十勝であることを外国
で個展をする事で敢えて意識して書いたのである。翻訳が大変であったかと思う。
Sさん自身も帯広の出身であったから私が書く北の空気感と異国に住む事で感
受している日本という意識の両方に訴えるものがあったのかも知れない。そんな
条件が重なって堀田真作展は幸運な個展となったと思う。私的にはもう1歩書き
込んでいない面があるのだが大枠としては翻訳者のご努力で多分辻褄が合った
のだろうという気がする。Sさんの熱意に応えたかった気持ちと肝心の堀田さん
の絶対に書いてという気持ちに少しの落差があってその分最後の詰めが不足し
ているのだ。微妙なものである。作家も作品だけがあればいいというものではな
い。周囲の心も巻き込む熱気が自ずからシーンを創っていくのだ。Sさんの熱い
依頼の賜物なのだ。そしてその根底には今生きている自分の場へのアイデンテ
イーの獲得への真摯な追求がある。きっとこれからもドイツの十勝人とさっぽろ
の石狩人は文化の北をともに国際的に創っていく仕事をするだろうという予感が
する。堀田真作展のハンブルグの春の知らせはそう告げてくれているようだ。
*福井優子展「春を灯すキヤンドル」-4月1日(日)まで。am11時ーpm7時
最終日PM5時~佐藤歌織ピアノソロライブ。於テンポラリースペース札幌市
北区北16条西5丁目1-8北大斜め通りtel/fax011-737-5503