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テンポラリー通信

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2007年 03月 26日

斎藤周展終るー春のにおい(36)

午後7時の閉廊時間まで人が途切れず帰ることなく2階の吹き抜けと下と鈴なり
の人がいた。14度近い今年一番の暖かさもあり外扉は開けっ放しで賑やかだっ
た。先生である斎藤さんの人望もあるのだろうがみんな居心地がいいのだろうか
吹き抜けの床に腰を下ろし足をぶらぶらしながら下を見下ろしている。会場全体
が鳥の巣のようだった。作品世界と現実が一体化して人間も春の一部のようで
ある。E教授からメールが届いていた。斎藤さんの仕事は今(とても難しいところ
にきていると思います。ご存知の通り彼はとてもいい人物で、そのため「作家」と
いうある意味で「悪い人」になりきれずに、苦闘しているのだと思います。・・・中森
さんのB面「コワイ人、気難しい人の面」で接してあげてください。ちなみに、最近
の中森さんのイメージとしては、「A面」の文学的で、チャーミングな人柄全開です
ね。「笑」。)私との日々の会話が大きな意味のあるものになる事を期待していま
すと結ばれていたがそれには私のB面で付き合ってくれという事なのだ。斎藤さん
をよく知るE教授ならではの暖かい助言である。そしてそのご期待に添えたかどう
かは分からない。斎藤さんの世界は現実にある距離を保って成立している。その
距離感はある意味ですごくリアルな距離でこの一点を踏み越えても閉じてもその
対象との一線を壊してしまうものなのだ。そういうリアリズムもあっていいと私は思
う。ただ本人がどこかで止むに止まれず超える時もあるかも知れない。その時を
仮に「悪い人」というのなら彼は今その境目にいるのかも知れない。問題は彼の
柔らかな感性が何処まで思想としての他者を裏打ちできるかによるのだ。今回
の個展はその限界近くまで達したと思う。作品の保つ世界が会場としてその輪郭
から最大限に沁みだし見る人も巻き込んであったからである。「3月の次から」と
は正しくその事を予感しているタイトルだったかも知れない。斎藤さん自身のB面
への予感なのかも知れない。他者の輪郭の向こうにある社会という骨格に触れる
予兆のように。

*福井優子展「春を灯すキヤンドル」-3月27日(火)-4月1日(日)am11時ー
 pm7時最終日pm5時~佐藤歌織ピアノソロライブ於テンポラリースペース
 札幌市北区北16条西5丁目1-8tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-03-26 17:03 | Comments(0)


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