午前中の雪曇りが晴れ、陽射しが午後から燦々と入る。斎藤周さんは昼見た事
がないので見惚れている。一瞬雲に隠れて空気が青くなる。さっとまた陽光が射
す。陽光の位置が、時間とともに変る。周さんはビデオをセットしたり教え子が来
たりとその合間を見て描き加えていく。しかし見惚れる時間も多い。これはもう陽
射しのドローイングだ。陽光の呼吸するような光のドローイング。及川恒平の唄を
流す。この空間には人の声が似合う。三々五々人が来てゆっくりと会場にいる。
気持ちがいいのだろうか寡黙に佇んでいる。描かれた陽炎のような人。飛ぶ淡い
緑、ピンク。その中に佇んでいる。描き加えられた淡い線がさらに会場全体の輪郭
を柔らかくしてゆっくりとあふれるもの、ゆっくりと沁み入るものとして満たされてくる
。見ている人もまた作品の空間と同化して呼吸しているようだ。作品と観客という
対立する関係がない。陽光のなかで同化して関係がある。そして日が暮れてライ
トだけの時間が来た。陽光のドローイングが終わった。