ふきのとうのような柔らかい緑を基調に赤や黄、橙色が空間を飛んでいる。斎藤
周展「3月の次から」。陽光に中間色の柔らかい色調が快い。白い壁と一体とな
って春が来たようだ。吹き抜け、鴨居、梁と作品が自在に跳んでいる。藤谷さん
の凝視する都市の万華鏡とは正反対の世界だ。軽やかな色彩と薄い線描の乱
舞。優しく楽しい品のいい万華鏡。軽やかな過激。ランランランのリズム。春爛々
。降るをアイヌ語でランランというといつか萱野茂さんの家におじゃました時教え
てもらった。ハルは食べ物ランは降る。新しい家が出来た時空に食物を投げそれ
が落ちてくる時<ハルランラン>と言ってこの家が豊かであるように祈るのだと教
えてくれた。食物ではないが言葉の響きのハルがランランと降ってくるような斎藤
周さんの世界である。札幌の都市論に固まっていた私の頭にはちょうどいい柔軟
剤になる。軽やかな軟派。一足早い春のハル。こういう世界もあるよなあと文句な
しに思う。残雪と黒い土の間から柔らかい緑のフキノトウを見たときあるいは灰色
の山の狭間に白いコブシの花を見るとき都市論もないのだ、生き物として命の色
を感じる。そんな色彩が会場全体を柔らかく包んでいる。薄い線描画で描かれた
若い人たちの群像が陽炎のように揺れてここにも春がある。高校の教師をしてい
る作者の生活のある一端がここにはあるのだろう。この一端というタッチ。タッチ
の潔癖さに描き手の少なからぬ節度のリアリテイーもまた感じうるのだ。「3月の
次へ」。弾むこの時を経て如何なる次へと着地するのか。斎藤周という柔らかい
フキノトウの苦味を明日から私は味わっていくだろう。
*斎藤周展「3月の次から」-3月13日(火)-25日(日)am11時ーpm7時
月曜休廊於テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8
tel/fax011-737-5503